『ポリス・ストーリー/レジェンド』―次なる映画市場"中国" 宿輪純一のシネマ経済学(44)

本作は、今年還暦の60歳(!)を迎えたジャッキー・チェン(成龍)の最新作である。

本作は、今年還暦の60歳(!)を迎えたジャッキー・チェン(成龍)の最新作である。筆者の中学生ぐらいからの本格的な映画人生の中で、彼は同じ時代を目の前で歩んでいた映画人の一人。もともと、彼は7歳から京劇や中国武術を習ったあと、いろいろあったが、ブルース・リーのスタントやエキストラをしていて、映画に出演していた。ブルース・リー亡き後、香港映画界を支え、アジアのトップスターになっていく。

彼とは何回か会ったことがあるが、意外と大きくなく(174センチ)、筆者より少し大きい感じ。映画の中では大柄に見えるのは、彼のアクションが素晴らしいからであろう。今回の作品でも、この歳で相変わらずのアクションをこなしているのは、極めて立派である。最近、『エクスペンダブルス』もそうであるが、年配の俳優が元気である。良いことである。

さて、この『ポリス・ストーリー』シリーズであるが、ジャッキー・チェンの体表作の一つである。最初の『ポリス・ストーリー/香港国際警察(警察故事・Police Story)』(1985年)、『ポリス・ストーリー2/九龍の眼(警察故事 續集・Police Story 2)』(1988年)、『ポリス・ストーリー3(警察故事3/超級警察・Police Story 3)』(1992年)、『ファイナル・プロジェクト(警察故事4之簡單任務・First Strike)』(1996年)、『香港国際警察/New Police Story(新警察故事・New Police Story)』(2004年)、そして本作となる。ジャッキー・チェンは今年で60歳、6作目ということで、日本では6月6日公開と揃えたような。

さて、ストーリーであるが、ベテラン刑事ジョン(ジャッキー・チェン)は、(お約束であるが)確執がある一人娘ミャオ(ジン・ティエン)に半年ぶりに会うため、クリスマスの北京を訪問する。彼は指定された怪しげな雰囲気のナイトクラブに到着し、父娘は半年ぶりに対面した。ミャオはそのクラブ経営者で彼女よりかなり年長のウーを恋人とジョンに紹介。なんと、そこで偶然にも客同士のトラブルが発生。ジョンは仲裁に入るが、バタバタしているうちに、武道の達人であるはずが、殴り倒され拘束される。気がつくとクラブの出入口は封鎖。建物内に設置された無数の爆弾とともに、ジョン親子を含む十数人の客が幽閉。事態は警察も手が出せない籠城事件へと展開していくが、それは実は、ウーが長期にわたって計画していたジョンに対する復讐計画であった・・・・・。決死の肉弾戦は今回も健在。予告編にも流れている『ポリス・ストーリー』の主題歌『英雄故事』は懐かしく心地よい。

『ポリス・ストーリー』自体が、世界中でロケをしているが、今回は中国の首都北京である。映画界は中国を次なる市場として見ているようなきらいがある。短い期間であったが、筆者は、過去北京の清華大学大学院で講義したことがある。そのころは、映画は庶民の楽しみにするには価格が高く見に行けなかったそうであるが、収入が増えてきて最近では急速に映画人口が増加している。様々な映画でも中国を良くないように描くケースが少なくなった気がする。しかも、最近、中国ロケの映画がとても増えている。『ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝』(2008年)、『ベスト・キッド』 (2010年)、『X-MEN: フューチャー&パスト』(2014年)、『トランスフォーマー/ロストエイジ』(2014年)などなど増加している。中国が大きな人口と購買力の増加で、映画の巨大市場になりつつあるという証左であろう。また、政治の問題はさておきということであろうか。

ジャッキー・チェンはコミカルな演技とあの笑顔で日本での人気も非常に高い。ウィル・スミスもそうだが、いい意味でサービス精神が旺盛でファンを大事にしているのがひしひしと分かる。とくにあの笑顔が素晴らしい。筆者も真似をして"笑顔だけは一番"の映画評論家兼経済学者になろうと努力しているが。

「宿輪ゼミ」

経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かり易い講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月2日の第155回のゼミで"9年目"に突入しました。

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