BLOG

『バンクーバーの朝日』― 人口問題・移民問題 /宿輪純一のシネマ経済学(67)

2014年12月16日 18時15分 JST | 更新 2015年02月14日 19時12分 JST

(2014)<12月20日公開>

 『バンクーバーの朝日』といっても、自然の中に上ってくる神々しい朝日の話ではなく、朝日新聞の話でもない。野球チームの名前が「Asahi(朝日)」だったのである。ちなみに、筆者も下手であるが、小さいころには野球が好きで実際にやっていた。この映画でびっくりするのは、特に「グローブ」で、とてもボールを取れる代物ではない。よくボールを取れたものだ。(逆にいえば最近のグローブの進歩は著しく、ボールを取りやすく、落としにくい)

(年寄的ないい方であるが)今の若い人には信じられないかもしれないが、日本も昔は貧しい国で、海外で一旗揚げようとする方々や、国内で暮らすのが苦しい方々は海外に移民していた。この映画はその移民の方々が異国の地で苦労しながらも、野球チームを作る。

第2次世界大戦前、太平洋沿岸のカナダ・バンクーバーに日系人が移民していた。想像を絶する激しい肉体労働や貧しさに加え、差別されるという過酷な環境にあえぎながらも野球チームを結成し、選手ならずも、日系人全体へ希望を与え始める。

残念ながら、日本人は体力的に白人に劣っており、打力も弱い。バントや足を生かした戦術や、ひたむきさや紳士的な態度が、やがて、さらに白人にも認められていく。しかし、第2次世界大戦はすべてを日系人から奪う。

製材所で働く野球チームのキャプテンを妻夫木聡、チームのメンバーに漁業で働く亀梨和也、主人公の父親に佐藤浩市など豪華キャスト。

 移民問題は日本でも検討されている。中長期の経済成長をラフに因数分解すると、人口×資金×イノベーション(知識・技術)となる。(「×」は"掛ける")経済政策における成長戦略とは、この3つの要素のどれを伸ばすかということになる。

 そのうちの一つの要素が人口である。日本では、先進国のなかでも成熟し、少子高齢化が進み、いよいよ人口も減り始めている。経済と人口の議論をもっと進めると、人口を増やすのは2つの方策がある。出生率を上げることと、移民を受け入れることである。この2つの方策には経済的に明確な違いがある。それは、出生率が上がり新生児が増えても、もちろんそこで購買が増加しよう、しかし、経済のエンジンとなる労働人口になるまでには20年ぐらいかかるということである。その点、移民はすぐに労働人口になる。しかし、日本には移民に対する拒否反応がやや強いようである。この拒否反応と経済成長のどちらを取るかのトレードオフ(同時にみたすことのできない関係)になってくる。本当に経済成長(景気)を求めるならは本気で検討しなければならないテーマである。先進国のほとんどは移民を受け入れているが、その中でも韓国は日本以上に少子高齢化が進んでいることもあり、多数の移民を受け入れている。

 しかし、移民にせよ、出稼ぎにせよ、最近、逆に、日本を選ばなくなってきている可能性が高い。賃金を初めとした経済そして環境の問題である。つまり、日本が豊かな国ではなくなってきた可能性があるということである。そろそろ、いろいろ経済の前提が大きく変わってきており、国民全体もいろいろな考え方も変えなければならなくなってきているのではないか。

 筆者が小さいころは、移民というか外国の方で日本人として暮らしている方が多数いた。野球選手や芸能人の方々にも多かった気がする。事件もあったが、その許容性はもう無理なのだろうか。

 

「宿輪ゼミ」

経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生達がもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かり易い講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月で9年目に突入し、来年4月にいよいよ10年目に。開催は"170回"を超えております。

Facebook経由の活動が中心となっており、以下からご参加下さい。会員は6600人を超えております。https://www.facebook.com/groups/shukuwaseminar/

次回は第172回の宿輪ゼミは12月17日(水)開催です。