"ダンス規制法"がネット選挙の争点に!?

若い世代は年長者に比べ、社会経験や知識で劣る場合が多い。そのためTPPや憲法改正、安全保障といった大型の政策テーマは実感を持って考えづらいかもしれません。そこで若い皆さんが関心を持つような「身近な」問題を俎上にあげてはどうでしょうか。

先日、Facebook(FB)の個人ページとFBページに、ある記事と写真を投稿したところ、その反響の大きさに驚いたことがありました。

記事で取り上げたのは、「ダンス規制法(風営法)の見直しに関する請願書」。ナイトクラブやダンスホールなど、「客にダンスをさせる」業態への法規制について、15万人の署名で国会に見直しを求めています。私は見直しの超党派の議員連盟の役員をやらせていただいており、文部科学副大臣時代に中学校でダンスを必修化しました。学生時代にはミュージカル劇団の音楽監督として、ダンスの素晴らしさを実感し続けておりますので、趣旨に同意し、署名したことを写真付きで報告しました。すると、個人ページの投稿は「いいね!」の数が瞬く間に100人を突破。結局、180人ほどの方に反応いただき、多数のコメントも寄せられました。通常、平日のお昼に投稿した記事は30~50人程度。若い方の反応が目立ったのが印象的で、話題によって反応が劇的に変わると痛感しました。

ところで我が国では、若い有権者の選挙離れが続いています。参院選の20代投票率は、平成に入って5割を割り続け、95年は25%にまで急落。その後の5回は30%台で推移しています。衆院選でも、93年に5割を切り、2003年に35%まで低迷。05年の「郵政解散」後の選挙で46%、民主党が政権交代を果たした09年は49%と回復傾向にありましたが、昨年12月の衆院選では37%と再び落ち込みました。

私が慶応大助教授時代の10数年前から、ネット選挙導入を提唱し続けた理由の一つが、若者の政治参画を促すことにあります。"デジタルネイティブ世代"が、ネットのツールを駆使して政策課題を討議したり、投票を呼び掛けたりすれば、自ずと投票率上昇につながるはずです。しかし、若い世代は年長者に比べ、社会経験や知識で劣る場合が多い。そのためTPPや憲法改正、安全保障といった大型の政策テーマは実感を持って考えづらいかもしれません。

そこで若い皆さんが関心を持つような「身近な」問題を俎上にあげてはどうでしょうか。六本木のクラブを主に利用しているのは20代。自分たちがよく利用する施設が警察の捜索を受けると、「実害もないのに何故ダンスを踊って取り締まられなければいけないのか」と背景や制度を考える契機になります。やがて風営法の成り立ちや意義も知る。風紀の乱れを懸念する地元住民の意見とどう折り合いを付けるのか、矛盾や葛藤とも向き合うでしょう。消費増税やTPPと比べてスケールこそ小さいですが、皆で考え抜いて議論するプロセスに「政治」のリアリティーが同じくらい凝縮しています。

ネット選挙は解禁されても、まだ枠組みが出来ただけです。次は何を争点にするのか、政治家だけでなく有権者同士の皆様の議論も重要になります。その意味では、ダンス規制法を取り巻く問題は、若い有権者の政治参画の契機となる"キラーコンテンツ"に相応しいでしょう。あす25日、私も参加するネット選挙を考えるシンポジウム「新しい選挙のカタチ。」では、ダンス規制の問題に取り組んできた市民団体の代表も参加されますので、世間の関心が高まる機会になればと思います。

なお、私は以前から「ダンス規制法」には疑問を持っていました。もちろん風紀や治安への目配りは必要ですが、その対策とは切り離して考えるべきです。ダンス自体に実害はありませんし、「ダンスが駄目で日本舞踊はOK」というのは表現の自由の観点から懸念があります。価値判断の部分に国家は踏み込むような過剰規制はすべきでないと考えています。また、ある公益を達成するときに、より制限的でない規則主体をとるべきとのLRAの原則がありますが、これにも反していますし、超党派のcの幹事長として、文化推進の観点からも問題に思えます。しっかり熟議して規則見直しに向けがんばります。

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