「野蛮な紛争と決めつけないで」ヨーロッパが創り出したアフリカの民族対立

毎年4月7日は、「1994年のルワンダにおけるジェノサイドを考える国際デー」とされており、犠牲者の追悼とジェノサイド防止が呼びかけられる。

毎年4月7日は、「1994年のルワンダにおけるジェノサイド(集団抹殺)を考える国際デー」とされており、犠牲者の追悼とジェノサイド防止が呼びかけられる。ルワンダでは、この週から追悼期間が始まっている。

虐殺の跡地周辺で撮影(photo by Kanta Hara)

ルワンダ虐殺は映画を通じて知っている人も多いだろう。また、現在では治安も良いことから旅行でルワンダを訪れる人も多く、"世界の不条理"としては、関心を持たれやすいトピックの一つだ。「夫が妻を殺し、妻が夫を殺した。隣人が隣人を殺し、また別の隣人が隣人を殺した」。こんなことを聞けば、誰だって「知りたい」と思うはずだ(関連記事:「世界は何も学んでいない」80万人の死から22年、ルワンダを訪れた(前編)「世界は何も学んでいない」80万人の死から22年、ルワンダを訪れた(後編))。

高校の世界史でも多くの人が習ったであろう、ルワンダ虐殺。フツ人、ツチ人*といった言葉に聞き覚えがあるかと思う。

※しばしば「フツ族」「ツチ族」といった表記がされることが多いですが、「部族」を意味する「tribe」というのは、白人たちがアフリカへとやって来た後、現地の人たちを見て「野蛮な人たち」と差別的な見方をして使われ始めたという歴史背景があるため、ここでは「族」は使わず、「人」を使います。

ルワンダ虐殺では、1994年4月~7月の100日間に、多数派のフツ人(国民の約85%)が少数派ツチ人(国民の約15%)と穏健派フツ人約80万人を殺害。多くの人が「よく聞くアフリカの民族争いだ」「どうして違う民族で仲良くできないんだろう?」と感じるかもしれない。もしかしたら、「アフリカの人たちは争ってばかりで、なんて野蛮なのだろう」とすら感じる人もいるかもしれない。しかし、そう思う前にまずは、ルワンダの歴史、特に植民地時代という歴史の負の遺産に目を向けなければならない。

1万人~2万人もの人々が虐殺された教会の跡地。民兵が侵入するために破壊した門が当時の形のまま残っている。(photo by Kanta Hara)

1918年の第一次世界大戦終結まではドイツ領東アフリカに置かれていたルワンダ。その後、ドイツが戦争に負けたと同時に、ルワンダはベルギーの統治下へと移る。

上述したように、ルワンダ虐殺では、多数派のフツ人が少数派のツチ人(&穏健派フツ人)を虐殺したが、本来この両者の区別は、あってないようなものだった。少数派のツチ人がかつてルワンダ王国を支配していた時、フツは農耕、ツチは牧畜を営むといった生活の違い、また身長や皮膚の色に多少の違いは見られたものの、両者がお互いの違いを明確に認識していたわけではなかったと言われている。

しかしながら、ベルギーがルワンダの植民地化を行う過程で、「ツチ人の方がヨーロッパ人に近くて優れている」という人種的差別観を持ち込み、両者が対立する原因が生まれた。例えば、ほぼ全ての首長をツチ人に独占させた上に、税や教育などの面においてツチ人を優遇。1930年代にはフツ人・ツチ人の身分を区別するためにIDカードを導入するまでに。

これによって、宗主国ベルギーは少数派ツチ人を中間支配者層に、そして大多数のフツ人を更なる支配下に置く、「分断統治」を導入したのだ。これによって、大多数を占める被支配者(フツ人)の不満は中間支配者(ツチ人)に向かうため、ベルギーは植民地経営を円滑に行えるようになった。

虐殺された犠牲者の衣服。こんなにも小さな子どもが無慈悲にも殺された。(photo by Kanta Hara)

ヨーロッパ諸国がアフリカの植民地経営を行う時、このような分断統治がしばしば導入された。例えば、隣国のウガンダ。宗主国であったイギリスは植民地経営時代、ウガンダ南部の人々には教育の機会など多くの特権を与える一方、北部のアチョリ人をしばしば迫害してきた。

そのため、北部が抱える不満は宗主国のイギリスのみならず、南部の人々にも向けられ、結果としてイギリスからの独立後、「神の抵抗軍」と呼ばれる反政府組織が北部アチョリの中から登場することになる。

アフリカで紛争が無くならない原因は決してアフリカの中だけにあるのではなく、歴史的背景や先進国の利害と深い関わりがある。正しい情報を知れば知るほどに、アフリカの紛争をどこか遠くの世界の出来事として無視することはできなくなるだろう。私はそう思う。(関連記事:世界を無視しない3つの方法 無関心を許さぬアフリカ・コンゴ紛争/紛争鉱物

(2017年3月31日 原貫太ブログ「世界まるごと解体新書」より転載、一部修正・加筆)

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誰だって、一度は思ったことがあるだろう。今この瞬間にも、世界には紛争や貧困で苦しんでいる人がいるのはなぜなのだろうと。その人たちのために、自分にできることはなんだろうと。

僕は、世界を無視しない大人になりたい。 --本文より抜粋

ある日突然誘拐されて兵士になり、戦場に立たされてきたウガンダの元子ども兵たち。終わりの見えない紛争によって故郷を追われ、命からがら逃れてきた南スーダンの難民たち。

様々な葛藤を抱えながらも、"世界の不条理"に挑戦する22歳の大学生がアフリカで見た、「本当の」国際支援とは。アフリカで紛争が続く背景も分かりやすく解説。今を強く生きる勇気が湧いてくる、渾身のノンフィクション。

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記事執筆者:原貫太

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