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世界で最も残忍な反政府組織"神の抵抗軍"―「ぼくはお母さんの腕を切り落とした」

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ある日突然誘拐され、兵士として戦場に駆り出される。初めての任務として、実の家族を殺すことが強要される。少女兵の場合、性的な奴隷としても搾取される。

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(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

その理不尽すぎる実態から、子ども兵問題は多くの人々の心を揺さぶる。そして、考えさせる。

先日寄稿した記事、「"初めての任務として母親の腕を切り落とす"子ども兵の問題は、大学生の私にとって目の前の解決したい問題になった。」も多くの反響を頂いた。この子ども兵問題について、特にウガンダ北部を題材にしてもう少し掘り下げてみたいと思う。

今回取り上げるのは、現在でもウガンダ北部やコンゴ民主共和国東部、また南スーダンの一部で活動する世界で最も残忍な組織「神の抵抗軍」と、神の抵抗軍に誘拐されて子ども兵として戦ったチャールズ君(当時16歳)の体験談だ。

非人道すぎる神の抵抗軍


1962年にイギリスからの独立を果たした後のウガンダでは、軍事クーデターによってしばしば政権が変わった。1985年には北部のアチョリ族出身の軍人オケロが政権を奪取するが、その数か月後には、南部出身であり現ウガンダ大統領のヨウェリ・ムセベニが率いるNRA(国民抵抗軍)によって政権が奪われる(関連記事:ウガンダ大統領選挙、注目すべき点は何か)。

アチョリ出身の人々は北部へと逃げるが、それ以降ウガンダ政府は北部の人々を度々虐げてきた。そのような背景の下、霊的啓示を受けたと名乗り出たアチョリ族出身の女性預言者アリスによって、ムセベニ政権打倒を掲げたカルト宗教的要素を持った反政府武装組織が結成された。

その後、その組織に参加したジョセフ・コニーによって誕生したのが、神の抵抗軍(Lord's Resistance Army/LRA)だ(1987年)。

神の抵抗軍は、暴力や恐怖によって人々を服従させようとする組織であり、その非人道すぎる実態から、世界で最も残忍な反政府武装組織と呼べるかもしれない。人々の間に恐怖を植え付けるために、一般住民の耳や唇、鼻を切り落とすといった事例も報告されている

特筆すべきは、神の抵抗軍による子供への犯罪だろう。彼らは戦力を補給するために子どもを誘拐して強制的に兵士へと仕立てたり、また少女兵の場合は性的奴隷として服従させたりなど、国際社会から強い非難を受けている。

子どもは従順で洗脳されやすく、そして強制的に徴兵することが可能なため、すぐに戦力を補充することができる。神の抵抗軍は、子供たちを「消耗品」として扱ってきたのだ。

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コンゴ紛争を戦った8歳の子ども兵(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

しかしながら、この神の抵抗軍の誕生を考えるにあたっては、イギリスによる植民地支配時代まで遡る必要がある。

イギリスは宗主国時代、ウガンダ南部の人々には教育の機会など数多くの特権を提供する一方で、北部のアチョリ族の人々をしばしば迫害してきた。そのため、北部の人々が抱える不満は宗主国のイギリスのみならず、南部の人々にも向けられた。

ヨーロッパの国々はアフリカを植民地支配にするにあたって、このような「分断統治」をしばしば導入してきたのだ(関連記事:なぜ「世界」は80万人の死を防ぐことが出来なかったのか? ルワンダ虐殺から22年(前半))。

結果として、独立後に南部の人々を中心に作られた政府に対して、北部の一部は長年の不満を爆発させ、反政府組織を結成したのだ。

誘拐され、襲撃を強要された。そしてぼくは、お母さんの腕を切り落とした...


世界最悪の組織の一つであろう神の抵抗軍。その神の抵抗軍に12歳で誘拐され、3年間子ども兵としての生活を強いられたチャールズ君(当時16歳)(仮名)の話を紹介したい。

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チャールズ君(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

僕には家族がいて、普通に暮らしていました。ある日、お母さんが隣村まで用事で出かけました。僕はお母さんの帰りが待ち切れず、隣村に迎えに行きました。その途中で、銃を持った兵士たちに囲まれ、反政府軍の部隊に連れて行かれたのです。

数日してからでした。大人の兵士たちは、僕を村まで連れてくると、お母さんを前にしてこう命令しました。

『この女を殺せ』

僕のお母さんを銃の先でこづきました。怖くて怖くて仕方がありませんでした。もちろん、『そんなことできない』といいました。そうすると、今度は"なた"を持たされ、『それなら、片腕を切り落とせ!そうしなければお前も、この女も殺す』

僕はお母さんが大好きでした。恐ろしくて腕がふるえ、頭の中が真っ白になりました。とにかく、お母さんも僕も命だけは助けてほしいと思いました。

僕は手渡された"なた"をお母さんの腕に何度も振り降ろしました。手首から下が落ちました。そのあと棒を渡され、兵士は「お母さんを殴れ」と命令しました。僕はお母さんを棒で殴りました。お母さんは気を失いましたが、命は助かりました。

僕はそのまま兵士に部隊へ連れていかれ、3年間兵士として戦っていました。

(認定NPO法人テラ・ルネッサンスHP「子ども兵(少年兵)」より)

今なお続くウガンダ北部と南部の深刻な格差


2000年代後半以降、ウガンダ軍の掃討作戦などによって神の抵抗軍はその活動規模を縮小させてはいるが、依然としてウガンダ北部やコンゴ民主共和国東部、また南スーダンの一部などで活動していると言われており、住民の殺害や襲撃、略奪を繰り返している。

2009年12月にはコンゴ民主共和国北東部のマコンボを襲撃し、少なくとも321人を殺害、子ども80名を含む250人を誘拐している。

これまで神の抵抗軍によって誘拐された子どもの数は66,000人以上にのぼると報告されており、また一時期では軍隊の90%以上が子ども時代に誘拐された兵士によって構成されていたとの証言も存在する。

20年以上続いた紛争の結果として、ウガンダ北部では200万人以上(北部ウガンダの約9割)が避難民となった

また、北部では5人に1人の子供が5歳の誕生日を迎えられない(2008年時点)など、首都カンパラを始めとした南部が著しい経済成長を見せる一方で、現在のウガンダでは北部と南部の深刻な格差が問題となっている

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ウガンダ北部グル市の様子(photo by Kanta Hara)
 
 
記事執筆者:原貫太
1994年、神奈川県生まれ。早稲田大学文学部社会学コース4年。認定NPO法人テラ・ルネッサンスインターン生。
大学1年時に参加したスタディーツアーで物乞いをする少女に出逢ったことをきっかけに、「国際協力」の世界へと踏み込む。2014年に学生NGOバングラデシュ国際協力隊を創設、第一期代表。国内での講演多数。
交換留学生として、カリフォルニア州立大学チコ校にて国際関係論を専攻。帰国後、赤十字国際委員会駐日事務所や認定NPO法人テラ・ルネッサンスでインターン生として活動。政治解説メディアPlatnewsでは国際ニュースの解説ライターを務める。
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連絡先:kanta.hara.bicp@gmail.com
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