世界中で子ども兵が生まれる決定的要因-自衛隊派遣の南スーダンには1万6千人の子ども兵

わずか13歳の子どもまでもが、「兵士」へと仕立て上げられている。

洗脳するために、初めての任務として親や兄弟の殺害が強要される。少女兵の場合、戦闘に駆り出されるだけではなく性的奴隷としても搾取される。帰還後もコミュニティからの偏見や差別に苦しみ、再び反政府軍へと戻る元子ども兵がいる。

子ども兵(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

その理不尽すぎる実態から、子ども兵問題は多くの人々の心を揺さぶる。そして、考えさせる。

そもそも子ども兵とは、「正規、非正規を問わず、あらゆる軍隊に所属する18歳未満の子どものこと」を指す。子ども兵には戦闘に直接関わるもの以外の兵士(非戦闘員)も含まれ、そこには少年兵だけではなく、性的奴隷として搾取されたり、また男性兵士と強制結婚させられたりする少女兵もいる。私が今年1月にインタビュー取材をしたアイ―シャさん(仮名)も、元少女兵の一人だ(→「"12歳で兵士になった女性"が語る壮絶な証言-子ども兵問題の実態(後編)」)。

歴史的に、子ども兵という存在は決して古いものではない。古くは中世から、騎士になることを望む子どもが従士になり、上官の身の回りの世話や荷物運びといった雑務に従事していた。

しかし近年、特に第二次世界大戦後は子どもが武器を持ち、最前線で戦闘に駆り出されることが急増した。その決定的な要因として、カラシニコフ(AK-47)をはじめとする小型武器の登場と流通が挙げられる。

子どもでも簡単に扱える小型武器

未だ世界には25万人以上の子ども兵が存在すると言われているが、その決定的な要因として、軽くて小さく、子どもでも簡単に扱える小型武器の登場と流通が挙げられる。

子ども兵(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

兵器には大きく分けて「大量破壊兵器」と「通常兵器」が存在するが、通常兵器はさらに大きい兵器である「重火器」と、比較的小型な「小型武器」(小火器)に分類できる。子ども兵が戦場で手にする小型兵器には、拳銃や自動小銃、地雷などが含まれる。

そして、この小型武器を使った暴力によって命を落とす人は、毎年約(30万人~)50万人にのぼるとみられている(2006年データ)。これは、約1分に1人、1日に1440人の命が地球から消えていく計算になる。1990年代に起こった49の武力紛争のうち、46は小型武器が主要兵器として使われていた。武力紛争がなくても、アメリカ、メキシコ、南アフリカをはじめとする多くの国では、小型武器は日々の犯罪に使用されている。

特に、カラシニコフ(AK-47)のような軽量で丈夫な銃の登場は、子ども兵の戦闘への参加を安易にした。10歳にもなれば、カラシニコフを肩に担ぐことが可能になり、わずかな力で引き金を引けば、1分間に30発の弾を撃つことが出来る。銃の手入れも容易だ。

小型武器が大量に出回り、紛争地から紛争地へと移転されるような場合、その値段は安価になり、入手しやすくなる。ケニアでは、1967年には銃1丁が牛約60頭と同じ値段だったのに比べ、2001年には牛5頭と同じになっていた。

このような状況をみて、コフィ・アナン国連事務総長(当時)は「小型武器は事実上の大量破壊兵器である」と述べている。

自衛隊が派遣された南スーダンでは1万6千人の「子ども兵」が存在

今月12日、国連平和維持活動(PKO)に参加するため南スーダンに派遣されている自衛隊の部隊は、安全保障関連法に基づいた新たな任務「駆けつけ警護」を行えるようになった。

その内戦が続く南スーダン。今年10月のBBCニュースによれば、未だに1万6千人の子どもが「武装勢力」に属しており、また15日には、今年だけでも約1300人の子どもが武装勢力に徴用・徴兵されたと国連児童基金(ユニセフ/UNICEF)が発表している

南スーダンでは反政府組織のみならず、政府軍でも子ども兵士を徴用・徴兵していることがヒューマン・ライツ・ウォッチによって報告されている。わずか13歳の子どもまでもが、「兵士」へと仕立て上げられている。

子ども兵(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

ニュースを見ている限り、国会で議論されるのは「駆けつけ警護」のことばかりだ。大学生ながら、私は疑問に思ってしまう。それは本当に、南スーダンの現状を見つめた上で行われているのだろうか。それは本当に、南スーダンの「平和」へと貢献することに繋がるのだろうか。それは本当に、私たち日本人だからこそ果たせる役割なのだろうか。

私は認定NPO法人テラ・ルネッサンスが行う元子ども兵社会復帰支援プロジェクトに携わるため、2017年1月~2月末ウガンダ北部に派遣される。「子ども兵問題」は深刻で根深く、そして複雑だ。今この瞬間も現在進行形で続いているこの問題と現地で真正面から向き合い、"私だから出来る「平和」への貢献の仕方"を考え続けたい。

記事執筆者:原貫太

1994年、神奈川県生まれ。早稲田大学文学部社会学コース4年。認定NPO法人テラ・ルネッサンスインターン生。

大学1年時に参加したスタディーツアーで物乞いをする少女に出逢ったことをきっかけに、「国際協力」の世界へと踏み込む。2014年に学生NGOバングラデシュ国際協力隊を創設、第一期代表。国内での講演多数。

交換留学生として、カリフォルニア州立大学チコ校にて国際関係論を専攻。帰国後、赤十字国際委員会駐日事務所や認定NPO法人テラ・ルネッサンスでインターン生として活動。政治解説メディアPlatnewsでは国際ニュースの解説ライターを務める。

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(2016年12月19日 原貫太ブログ「拝啓 美しくも不条理な世界へ」より転載)

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記事執筆者である原貫太(早稲田大学4年)は、これまで自分がアジアやアフリカの途上地域で見た事、聞いた事、そして感じた事を、大学生という立場を活かしながら、日本の人々、特にこれからの社会を担う同世代の仲間たちに伝えるべく、国内で積極的に講演活動を行ってきました。

これまで早稲田大学や神奈川県の中学校・高校などを始め、多くの方から高い評価を頂いています。"平和"に関する講演会を開催し、世界の諸問題を共に考え、そして共にアクションを起こしてみませんか?

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神奈川県内の中学校で3年生約280名を対象に行った講演会の様子(写真:原貫太)

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