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ストリートチルドレン、子ども兵...大学生が伝え続ける"世界の不条理"-学校教育に「国際協力学」を!

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私はこれまでフィリピン、バングラデシュ、ルワンダ、ウガンダ...と足を運び、「ストリートチルドレン」「児童労働」「物乞い」「孤児」「スラム」「虐殺」「HIV/AIDs」「子ども兵」など、学生という立場にも関わらず様々な不条理や社会的弱者と接する機会を得てきた。

そして自分が現地で見た事、聞いた事、そして感じた事を、大学生という立場を活かしながら、日本の人々、特にこれからの社会を担う同世代の仲間たちに伝えるべく、国内で積極的に講演活動を行っている。

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駅で働くストリートチルドレンと。バングラデシュ首都ダッカで撮影。(写真:原貫太)
 
わたしが、大学生であるにも関わらず「"世界の不条理"を伝える」ことに従事する理由は『「伝える」こと ~"世界の不条理"と向き合って~』で既に書いた通りだが、簡潔にまとめれば、「日本の恵まれた環境と途上国の厳しい現状との両方を知る人間だからこそ、その"絶望"すらも覚える両者の格差を繋ぐ為の最低限の行為が、『伝える』ことだと考えるから」「一人でも多く、特に同世代の人々に国際協力や世界の出来事に関心を持ってほしい」の2つに集約できるかもしれない。

これまで早稲田大学を始めとして大学生対象の講演、また中学生や高校生を対象にした講演を数多く行ってきたが、それらを通して、大学生である私だからこそ伝えられることがあると、実感している。今回は、私の母校である私立逗子開成中学校にて、3年生280名を対象に行った講演を紹介し、その想いを書きたい。

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逗子開成中学校での講演当日の様子(写真:逗子開成中学校提供)
 

"世界の不条理"と向き合って~後輩へのメッセージ~

講演では、私がこれまで出会った3つの"世界の不条理"、-ストリートチルドレン問題、子ども兵問題、ルワンダ大虐殺-、を紹介すると共に、「理解と自覚」「生き方」「学ぶ」をキーワードとして、話を行う。

両親を失い、住む場所も失い、学校にも通わず毎日駅でゴミ拾いをするバングラデシュの7歳の少年。

ポリオ(小児性まひ)を患っているにも関わらず、その姿を「売り」にして物乞いをさせられるレンタルチャイルド。

初めての任務として、親や兄弟の手足を切断するように強要されるウガンダの子ども兵。

一夜にして45,000人が殺されたルワンダ大虐殺の跡地。

6年前までは自分たちと同じ席に座っていた先輩が、日本では考えられないような壮絶な話を語る。教科書やテレビでは決して触れることの無い"世界の不条理"が、写真と共に映し出される。

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ゴミ拾いで生計を立てるバングラデシュの少年。(写真:原貫太)

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ポリオを患っているも、物乞いに利用させるレンタルチャイルド。バングラデシュ首都ダッカで撮影。(写真:原貫太)

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銃を担ぎ、戦場で戦うアフリカの子ども兵(写真:認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

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100日間で80万人が殺されたルワンダ大虐殺の跡地に設置された犠牲者の遺骨。(写真:原貫太)

開始後すぐは微かにざわついていた会場も静まり返り、生徒たちは真剣な姿で私の話を聞いている。講演後に本人から直接聞いた話だが、「あと30分長ければ、僕の身体は持たなかった。それほど壮絶で、心に響く内容だった。」と感じた生徒もいたようだ。

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逗子開成中学校での講演当日の様子(写真:逗子開成中学校提供)

ストリートチルドレン問題、子ども兵問題、そしてルワンダ大虐殺という3つの"世界の不条理"を踏まえた上で、今私たちが考えるべきこと、特にこれからの社会/世界を担う同じ若者だからこそ、一緒に考えたい事へと話を移す。

「沢山の写真を通して、ストリートチルドレン問題や子ども兵問題、ルワンダ大虐殺といった他者への理解、世界への理解を行ってきた。きっと今みんなも、何かを感じているかもしれない。それは、一つ目の"気づき"だ。でも、ここでもう一つの"気づき"を持ってほしい。それは、自分自身に対する"気づき"、つまり自覚なんだ。」

「今の君たちは、僕たちは、どんな環境に置かれているだろうか?どんな生活を送れているだろうか?少し立ち止まって、当たり前に過ごしている日々に、自覚を持ってみてほしい。」

「ストリートチルドレンや子ども兵と、僕らとの間にある格差。この格差を真剣に見つめ、考え、自分の心に落とし込んでみると、君は何かを感じないだろうか。僕は、『自分だけが幸せならそれでいいのだろうか?』『今見てきた問題を、"どこか遠くの世界の出来事"として終わらせていいのだろうか?』、そんな葛藤を感じる。」

「ほとんどの人は、自分には関係ない事だと割り切り、目を背ける。だけど、目を背ける前に、もう一つ考えてほしい事がある。それは、今僕らが生きている世界は、21世紀だということ。グローバル時代における、世界と自分との"繋がり"だ。」

「僕らが着ている洋服は、どこで誰が作ったものだろう。僕らの携帯電話に使われているレアメタル(希少金属)は、どこから来たものだろう。そしてテレビを点ければ、インターネットを使えば、世界中の情報が僕らの手元に入ってくる。」

「グローバル化が極度に進展し、世界中のあらゆる事象が連関を強める今日、地球の裏の出来事が他人事ではなくなってきている。地球の裏の人々と僕らとが、どこでどう繋がるかなんて、分からない。もう、とっくに繋がっているかもしれない。みんなそれに気づいていないだけかもしれない。」

誰かの犠牲の上に、私たちの『豊かな』生活が成り立っている。その"繋がり"に気づいたとしたら、僕らはどう生きていくべきだろうか。」

今まで私が出会ってきた人々の"声なき声"を届けられるように。これからの未来を創る同じ若者だからこそ、一緒に考えたい。そんな想いを胸にして、45分間全力で話を行った。


講演を聞いた中学3年生の感想

「バングラデシュやウガンダの子供たちの話を聞き、自分の生活との格差を感じました。同じ人間なのに、生まれた場所が違うだけでこんなにも置かれる環境が違うのか、命の価値に差が生まれるのかと、世界には様々な不条理がある事を知りました。」

「世界で起きている出来事や、困っている人に対しての理解を深め、同時に自分の置かれた環境や今の生活について自覚する事が大切だと思う。また、世界に目を向け、自分に出来ることや世界で起きている問題を考えるなどの、世界と自分のつながりを捉えることが大切だと、今日の話を聞いて気づいた。」

「世界で理不尽な暴力や紛争が横行している事は知っていたが、やはり日本で学ぶのではなく実際に現地に行かなければ理解出来ない。聞いている時は心に響いても、1日もすれば忘れてしまう。記憶の中に残っても、心に残る事はない。行って見なければ理解出来ないと再認識した。必ず一度、この眼で見る。」

「まず、日常的に他者に対する『理解』と自己に対する『自覚』をすること。そうすれば、これからの進路や生き方を見つける事が出来る。そして、中学生の時期から、世界の事を見たり考えたりして、今自分が置かれた環境や立場を自覚する事。自分は屋根のある家に住み不自由なく暮らしているが、そんな人たちは世界では多くないと思う。だから、今生きている事に感謝して生きる。講演を聞いて、そう思った。だけれども、聞くより実際に体験したり見てきたりした方が、感じる事は何倍もある。だから、機会があれば作ってみたい。」

この世界では、誰かの犠牲の上に自分の豊かな生活が成り立っているのだと、感じました。正直、今日の話を聞いて国際協力やボランティアに参加したいとは思わなかったけれど、少なくとも世界の不条理を少しでも知り、理解した事は、これからの自分にとって決して無駄な事ではないと思う。」

「抽象的な感想になってしまうが、『ちゃんと生きよう』と思った(当たり前か)。自分がダラダラと生きている日常と地続きで、1日を生き延びる為に必死な子供達が沢山いる。今すぐそこに飛んでいき全員を救うなど到底無理だろうけど、そういう出来事に意識的になる事は出来る。そしてこれから社会に出た時に、そういった問題に取り組む立場につきたいと思う。将来の夢を具体的に決めなければいけないと思っていたけれど、原さんみたいな活動も夢の一部になるかなと思った。」

「今自分が送っている生活が当たり前ではなく、世界から見たらとても恵まれている状況だと理解した上で、そんな生活を送れている自分が今何をすべきなのか、将来自分がその問題に対して何をすべきなのか、考えさせられた。」

「同じ『地球』という1つの星にいるのに関わらず、生まれた国によって生きていくために必要なお金や自己犠牲、1日を生きるという大変さや命の重さがとてつもなく違った事に、凄く驚いた。"世界の不条理"として挙げられていたバングラデシュのストリートチルドレンやウガンダの子供兵の話に衝撃を受けた。」

「過去に起きた虐殺は取り返しがつかないけど、未来は変えられると思う。過去の罪をもう一度、同じ人間として考える必要があると感じた。これをたくさんの人に伝えることも必要だと感じた。」(別日の講演を聞いた中学1年生の感想)


自分が中学生の時に同じ話を聞けていたなら...

最初にも述べたが、これまで数多くの講演、特に同世代を対象にした講演を行ってきたが、「大学生である私だからこそ伝えられることが二つある」と実感をしている。

一つは、遠くの世界の出来事を身近に感じさせる力だ。

もちろん、プロとして長く活動を続ける方のお話は、大学生である私の話よりも数倍、数十倍厚みがあるかもしれない。しかしながら、自分とほとんど年齢が変わらない人間が"世界の不条理"を語る姿は、講演を聞く若者の胸には印象強く写るようだ。「私にだって出来る事があるかもしれない」「私も考えなければならない」といった感想を、これまで沢山聞いてきた。

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ウガンダの子供たちと筆者(写真:原貫太)

もう一つは、これからの社会/世界の未来を担う同じ若者なのだから、共に考え、共にアクションを起こそうという姿勢だ

私自身まだ発展途上であり、「国際協力のプロ」を目指すにあたって自身のキャリアプランを模索している段階だ。だからこそ、「同じ若者として共に考え、共にアクションを起こそう」という他者を巻き込む姿勢が、講演を聞く同じ若者の胸にも響いているように感じる。実際、私の話を聞き、大学2年時に創設した学生NGOバングラデシュ国際協力隊に加入して一緒に活動しているメンバーも複数いる。

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バングラデシュ国際協力隊の現地での活動の様子(写真:バングラデシュ国際協力隊)

先日の逗子開成中学校での講演後、私はふと思った事がある。もしも自分が中学3年生の時に、同じ話を聞いていたなら、と。

中学生・高校生の時から、今のように世界に目を向けていたら、その為のきっかけがあったなら、今良い意味で違った自分がいるかもしれない。

私が中学生の時は、このような"世界の不条理"を語ってくれる身近な存在が居なかった。貧困や紛争というものはテレビの中の話であり、自分の生活とは無関係だと思っていた。

この世界には、貧困・紛争・格差・環境汚染・テロなど、数え切れないほど多くの問題が存在する。その問題全てを「志のある者たち」だけで取り組み、改善・解決へと導くことは不可能だろう。だからこそ、国際協力や社会貢献の世界に関心を持ち、かつ具体的に行動を起こす人材や組織を増やしていく必要性がある。さもなければ、今私たちが生きている世界は、「持続可能」とは呼べないだろう。

「学び」とは、語句を暗記したり、計算式を紐解いたりする机上の勉強だけではない。学校教育の現場、特に感受性豊かな時期である中学生・高校生に対して、「国際協力学」なるものを提供することが出来れば、「これからの21世紀国際社会を生き抜く日本人として、私たちは何をすべきなのか」を考える、一つのきっかけになるのではないだろうか。

記事執筆者:原貫太
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(2016年7月24日 原貫太ブログ「拝啓 美しくも不条理な世界へ」より転載)