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米国は差別の国なのか? トランプ騒動にみる日本の問題

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トランプ米大統領が就任してひと月が経ちましたが、大統領令で、中東・アフリカの7カ国の国民や難民の入国を一時禁止したときのことについて、私見を述べたいと思います。

禁止令が出た直後の30日。ANAとJALが対象の人の米国便への搭乗を原則として断る方針を決めたとのNewsが報じられてから、SNSだけでなくテレビに出ているコメンテーターまでもが「なんでそんなことするんだ!」と批判していたのには少々驚きました。

これは国際航空運送協会(IATA)からの通告による措置で、IATAは世界の航空会社でつくる業界団体です(通告の強制力はない)。
そもそも航空会社には「乗客を最終目的地まで届ける義務」があり、今回のケースではなんらかの措置をとる必要があります。
 
入国許可がない人を精査せずに搭乗させれば、航空会社に制裁が科される恐れ
もある。なので「原則として断る」という方針以外、手立てがないのです。

みなさんも飛行機に乗ったときにCAが「入国書類お持ちですか?」と機内を歩く姿をみたことありますよね? 
あれも「最終目的地まで届ける義務」が航空会社にあるからに他なりません。
別にスッチーがヒマをもてあましているわけでも、やさしさから「お持ちですか?大丈夫ですか?」と乗客ひとりひとりに丁寧に声をかけているわけじゃない(はい、私は元ANAのスッチーです)。

なので「日本は日本として......」というコメントは、あまりに知識不足といわざるをえません。

国際線キャリアは、これまでも世界情勢にさまざまな影響をうけてきました。

天安門事件のときには救援機で、血だらけになった日本人の方たちを北京まで迎えに行きましたし(私は乗務しました)、湾岸戦争のときにはロンドンやパリ便は空席だらけで、CAの数が乗客を上回ることもありました。

250席あるエコノミークラスに、たった3人しか乗っていなかったときは「ひざまずきサービス」でもしようかと思ったほどです(笑)。

空港のセキュリティチェックも厳しくて「ワイヤーの入ったブラはしないように!」という指示が会社から出されたこともありました。

ただ、空を飛んでいるとどこにも国境線は引かれていなくて。
ただただ大きな空と広い大地が広がっていて。パスポートの色は違ってもわがままな客はわがままだし、温かい客は温かかった。言葉が通じなくても身振り手振りで、長いフライトの退屈な時間を埋めたこともありました。

ですから日本の航空会社まで、大統領令に屈しなくてはならないことが、個人的にはとても悔しかった。
と同時に、「アメリカは建前の国。ホンネの政治になった」とコメントする識者に少々違和感も抱いています。

私が子どものときに住んでいたアラバマは、キング牧師の故郷ジョージアの隣に位置し、黒人と白人は全く別の地域で生活をしていました。
曾野綾子流にいえば「差別」ではなく「区別」ってことなのでしょうか。

時代はちょうど「ルーツ」が放映されていた1970年代後半。
民主党のカーター(元州知事)が、現職の副大統領だった共和党のフォードと対決し、カーターが事前の認知度や支持率が低かったにも関わらずディベート後に支持率を大逆転させ、カーターが勝利。
これがきっかけで、大統領選の「ディベート」の重要性が高まったとされています。

住んでいたハンツビルの日本人は、うちの家族オンリー。
お金持ちの友人の家には黒人のメイドが何人もいて、通っていたエレメンタリースクールは99.9%が白人。残りの0.1%が「私」です。

よほど初めて見る黒い髪の少女が珍しかったのか、休み時間ごとに私の周りにはたくさんの人だかりができ、動物園の「パンダ」状態でした。

しかしながら私は自分の名前をローマ字で書くのがやっとで、一言も英語が話せません。
それでもひっきりなしに、皆が一斉に話しかけてくるので、ひたすらニコニコしていました。

何を言われても、ニコニコ。とにかくニコニコしていたのです。

するとニコニコ効果なのでしょうか。転校した日にジェニーという友だちができ、1週間目にはダイアンの家に寝袋を持って泊まりに行き、1カ月後にはキャンプに参加し、0.1%と99.9%を隔てる壁は、肌の色以外なくなりました。

おまけに私は、その年の"スマイルチャンピオン"になり、学校で表彰されハンツビルタイムズという地元紙の一面を飾りました!

数年経ってから気がついたのですが、スマイルチャンピオンはあとにも先にも「私」だけ。
つまり、私のために学校(担任の先生)が作ってくれたプライズだったのです。

今回の大統領令を受けて「アメリカってそもそもそういう国だから(人種差別)」
という人がたくさんいます。確かにそういった側面があることは否定しません。

同じ時期にアメリカに住んでいた友人の中にはジャップといじめられたとか、「You Stink!」(子どもが仲間外れにするときに使う俗語)って何度も言われたといった悲しい経験をしている人もいました。

でも、NOMOを、ICHIROを、受け入れてくれる国でもある。
肌の色の違いを、言葉の違いを、文化の違いを受けいれてくれる人がたくさんいる国でもある。

かたや日本はどうなのでしょう? 
以前、外国人労働者について取り上げたときに「目に見えない鎖国が日本にはある」
と書きました。

「コメントする立場にない」としかいえない国と、「カナダ人は難民を歓迎する」
という国と......。日本も「今」だからこそ、考え、議論して欲しいと思います。

河合薫の「社会の窓」Vol.011より転載)