031 | How to トレイルランニング 第一回、トレランの心得。

ランニング、続いていますか?朝走ろうと思って起きられなかったり、寒いなか外に出るのが億劫になったり、家の近所や有名なランスポットも一通り走って飽きてしまったり......。そんな、"燃え尽きランナー"にこそおすすめしたいのが、「トレイルランニング」です。

ランニング、続いていますか?朝走ろうと思って起きられなかったり、寒いなか外に出るのが億劫になったり、家の近所や有名なランスポットも一通り走って飽きてしまったり......。そんな、"燃え尽きランナー"にこそおすすめしたいのが、「トレイルランニング」です。

山や森の中を駆け抜け、フルマラソンよりも長い距離を走るトレイルランニングを楽しむ人の人口が年々増えてきています。ここでは、ランニングのギアショップを経営する桑原慶さんと、桑原さんのトレラン仲間である小松俊之さんを講師に迎えてその心得を教えてもらいましょう。

--おふたりがトレイルランニングをはじめたのはいつですか。

桑原慶(以下、桑原) 3年くらい前になります。その半年前から始めていたランニングの仲間に連れられて、突然、高尾山30kmくらいのコースに挑戦しました。ペース配分も何もわからないまま登りも全部走ったものだから、折り返し地点の前で帰りたくなりましたね(笑)。

小松俊之(以下、小松) 突然ハードだね(笑)。平地しか走っていない人が傾斜を走ると、すぐに疲労が溜まって体力を消耗するんですよ。完走を目的にしている場合は、登りは歩いてもいいと思う。トレイルランニングは、すごくストイックなイメージがあるかもしれないけれど、そうじゃないトレランがあっても良いんです。僕は、2年程前にトレイルランニングを始めて、今も、やさしい鎌倉のコースをみんなで話しながら走って、美味しいものを食べて帰るような、"ゆるふわ"な走りも大好き。

桑原 厳しいレースを走り切る爽快感はもちろん、山の景色を楽しみながらハイキング気分で楽しめるのもトレランの魅力だと思います。普通のロードに飽きてしまった人にこそ、チャレンジしてみてほしい。僕もトレイルランニングに挑戦してしばらくは、月に1回くらいの頻度で仲間と集まって山を走っていたんですけれど、『BORN TO RUN』という本と出会って、走ることのモチベーションが変わりました。

--「トレイルランニング」とは、いつ頃からスタートした競技なのでしょう。

桑原 「山を走る」という行動・文化はすごく古くからあって、例えば1000年代に、イギリスの「フェルランニング」と呼ばれるレースの記録が残っています。また、アメリカでは1955年から開催されている、シェラネバダ山脈のウェスタンステイツトレイルを、馬で100マイル(160km)走るレースがあるのですが、1974年に一人の騎手がそのコースを自分の足で走破し、それがアメリカで一番権威あるトレランレースである"ウェスタンステイツエンデュランスラン"の起源となっています。日本でも、一般的にイメージされるトレイルランニングとは少し異なりますが、1948年に第一回が開催された「富士登山競争」という歴史あるレースがあります。1986年には「ランニング登山」という、おそらく日本で一番最初に山を走ることについて記した書籍が出版されています。その後90年代から徐々に大会が開催されはじめ、今の日本のトレイルランニングシーンが形成されていきます。

小松 明確に「トレイルランニング」という競技が認知されていなかった頃とは違って、今は競技人口も増えてきています。トレラン仲間とよく話をしているのが、「スキー場にスノーボーダーが現れた頃と似ているね」ということ。スキーヤーが新しいスタイルとしてスノーボードを始めて、一般に認知され始めて人口が増え、スキー場でも目立つようになり、接触事故が起きたりして、認知度に比例してネガティブなイメージを持つ人も出てきました。

--「トレイルランニング」に関しては、どのような理由でネガティブイメージを持つ人がいるのですか。

桑原 よく言われているのが、ハイカーさんとのトラブルですね。僕らが走るコースは、ハイキングをしている人と同じだったりするので、お互いに安全に山を登るためのマナーはマスト。ハイカーの方にとって猛スピードで走るトレイルランナーはとても脅威。そのことを踏まえて、すれ違う時はスピードを落としてゆっくり歩いたり、ちゃんと挨拶を交わしたり、道を譲り合ったり等の気遣いや、同じ山を楽しむもの同士の敬意が必要です。

小松 スノーボーダーは、そう言った過渡期を経て今ではスキーヤーと共存しています。トレイルランニングも同様に、周りとうまく共存しながら広がっていってほしいですね。

桑原 まだトレイルランニングは後進のスポーツなので、これからも山に関わる方々の理解を得ていく必要がありますね。あとは大きな大会開催に関しては、地域振興のポジティブイメージと環境破壊のネガティブイメージの両方があると言えます。

小松 マラソン大会に比べると人数は圧倒的に少ないのですが、それでも大規模の大会になると2千人くらいの人が参加する。過疎化が進んでいる村で大会を開いて、地元の人の協力を得て民家に泊まったり、飲み食いしたりして経済効果があることもあります。一方で、それだけの人数が、細い山道を数時間で走り抜けることに対しての、環境へのダメージを指摘する声が少なからずあるのも事実です。

桑原 大会運営側も、環境へのインパクトを考えて、参加人数やコースに関してはすごく繊細に計画しています。また、軽装で走っているイメージがあると思いますが、走っている場所は場所によっては登山者がしっかりとした装備で臨んでいるような山だということは忘れちゃいけない。そう言った様々なことをふまえて、山のルールやマナーを守り、自然の中を走る楽しさを堪能してほしいなと思います。

▶POINT

・まずは、『BORN TO RUN』を読むべし。

・歩いてもいい、休んでもいい、始めは何事も楽しむべし。

・トレランとは "山に入ること"。山のルールを守るべし。

(次回)実際に、都内で走ってみよう!どんなコースがおすすめ?

●桑原慶

くわばら・けい/1975年、静岡県生まれ。フットサルカフェなどの経営を経て、2013年3月に、トレイルランニングやランニングのギアショップ〈Run boys! Run girls!〉をオープン。

●小松俊之

こまつ・としゆき/1969年、新潟県生まれ。2009年、岩本町に〈OnEdrop cafe.〉をオープン。店内外で新たな「出逢い」を生み出す各種イベントを開催している。

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(「からだにいい100のこと。」より転載)

Giant sequoia in Sequoia National Park 2013

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