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「オレオレ都知事」からの脱却。だからと言って女性だからいいわけではない〜都政に望む住宅保障〜

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選挙が終わったと思ったらまた選挙だ…。

しかし、「疲れた」とか「面倒」とか言ってられない。

先週土曜日には、新宿東口で開催された鳥越俊太郎氏の応援演説に駆けつけた。本人は来ない、応援団による街宣だ。そして火曜日には、本人を迎えての街宣で、スピーチすることになっている。

なぜ、鳥越氏を支持するのか。それはただ単にもう小池百合子氏とか増田寛也氏に都知事になってほしくないから。そして鳥越氏が強調する「話を聞く姿勢」には、大いに期待したいからだ。

思えばこの十数年、「オレがオレが!」というテンションで人の話などこれっぽっちも聞こうともしない「オレオレ都知事」が都政を握っていたわけである。政治家や権力者にもっとも必要なのは、「話す力」ではなく「聞く力」だと私は思う。それだけではない。声にならないほどの小さな呟きや溜め息を聞き逃さないこと。耳を澄ますこと。そして時には聞き役として弱い立場の人のニーズを引き出すこと。

しかし、これまでのオレオレ都知事にはそんな姿勢は皆無。「オレオレ都知事からの脱却」。今回の都知事選を私は心の中で勝手にそう命名したのだが、「じゃあ、オレオレじゃないなら女性の小池さん?」と大いに誤用されるおそれがあるのであまり口には出さないようにしている。ということで、今回の連載にはこのようなタイトルをつけたのだ。

さて、この都知事選を受けて、改めて、都政について考えた。

鳥越氏は、非核都市宣言を提案し、格差是正や子育て、介護へ優先的にお金を回すことなどを政策として掲げている。

どれも賛同できるものだが、私が改めて都政について考え、自分の中でもっとも優先順位が高かったテーマはズバリ、「住居」だ。

東京。それは家賃が高すぎる都市。そして賃貸物件に住む人が多い都市。そんな賃貸向けの政策が一切ない都市。家賃のために働くような都市。そして働いても給料の3分の1を、場合によっては半分も家賃で持ってかれる血も涙もない都市。そしてそんなに高い家賃を払ってるのに、絶望的に狭い部屋にしか住めない都市。

ちなみに東京の最低賃金は907円。これで1日8時間、月に20日働いたとして14万5120円。ここから税金や保険料を引かれる。そして一人暮らしともなると家賃は平気で6〜7万円とかするわけである。ああ、フリーターの頃、本当に家賃払うの大変だった! 更新の時とか、死ぬかと思った! 

そんな時に選挙があって創価学会の全然親しくない人から電話が来て、「公明党が勝つと家賃7万で3LDKに住める」とか言われた時、よくわからないけどなんか期待してしまった自分がいた(90年代の話。もちろん、当時は今にも増して大馬鹿野郎だったので投票券はとっくになくしていた!)。だけど全然親しくない知人の選挙モードなテンションが高すぎて、「東京って怖い…」としばらく電話をとるのが恐怖だった!

話を戻そう。

この6月、「Call for Housing Democracy」が「家賃を下げろデモ」を開催したことはこの連載でレポートした通りだ。そのデモで、バナーには「住宅保障に税金使え!」という言葉が大書きされ、プラカードには「公営住宅今すぐ増やせ」という言葉が躍っていた。

今、まさに私は都政に同じことを求めたい。

まずは都営住宅。知ってる人は知ってるが、東京都ではこの17年、ただのひとつも都営住宅の新規建設がされていないという事実がある。都営住宅があれば、そしてそこに非正規の人や単身の人や若年層が入れれば、どれほど生活は楽になるだろう。

今の家賃が半額になるだけで、生活が劇的に変わるという層は、かなりいる。「家賃のためだけに働く」生活から解放されれば、生活が変わる。家賃のために節約に節約を重ねている層は、消費だってするようになるだろう。

また、東京という都市ならではの問題として、脱法ハウスやネットカフェなどの「本来住む場所でない場所にしか住めない層」の問題もある。

これについては東京都独自の取り組みとして「TOKYOチャレンジネット」という制度がある。ネットカフェ難民が社会問題化した数年前にできた制度だ。ざっくり言うと、ネットカフェなどに住みながら不安定な雇用で働く人、仕事を失った人に住宅費などを貸し付ける制度。ただし、あくまでも貸付だ。敷金礼金などの初期費用を合わせると数十万円になる。

私の知人の中には、この制度を利用して脱ネットカフェ難民。アパートに入って無事に仕事も見つかったものの、すぐに始まった返済が大変で家賃を滞納。結局路上に舞い戻ってしまったというケースもあった。しかも、審査を突破しないと当然貸し付けは受けられない。

ちなみにチャレンジネットでは介護職への就労支援、資格取得のための支援を行っており、こちらは晴れて介護職につき、半年以上働けばもろもろの貸付は免除になるものの、半年経つ前にやめてしまうと全額が借金となってのしかかる。この貸付金には生活費(資格をとるため学校に行くのでその間の生活費)や資格取得のお金も含まれるので、かなりの額。その上無職で無収入でも、原則返済しなければならないというシステムだ。

チャレンジネット、必要な制度ではあるが、もっともっと使い勝手をよくすることはできる。それに介護職への就労支援だけでなく、いろんな業種への就労支援があればいい。

都の制度ではないが、「家を失わない」という意味で似た国の制度で住宅確保給付金(住宅手当)がある。こちらは住む場所を失ったか、失うおそれのある離職者が対象で原則3ヶ月(場合によっては延長あり)の貸付ではなく、給付だ。が、既に家がない人の場合、敷金礼金などは出ないため、別で社会福祉協議会からの貸付金を借りる必要があり、こちらも審査があったりと使い勝手はあまり良くない。

しかし、もっとも使い勝手が良くないのは、「離職者」を対象としているところだろう。これでは、日雇い派遣などでなんとか食いつなぐネットカフェ難民や脱法ハウス暮らしの人は含まれない。彼らは働いており、離職者ではないからだ。

ちなみに、スウェーデンやフランスでは住宅手当を5世帯に1世帯が受給しており、働いていようがどのような家族形態だろうが利用できるという。また、イギリスでは低所得者に手厚い家賃補助制度があるのは有名な話だ。一方、フランスでは、そんな家賃補助の恩恵を外国人でも受けられる。

私の知人の娘さんがフランスに留学したのだが、その娘さんにある日、役所から電話がかかってきたという。内容は、「あなたの収入と比較して家賃が高すぎるから家賃補助を受けられる」というもの。わざわざ役所から留学生に対して「家賃補助を受けろ」と連絡がくるなんて夢のような話ではないか。

そういえばフランスに亡命したイェダりんも、国から家賃補助のお金がかなりの額振り込まれたと言っていた。韓国からの亡命者にも、家賃補助が振り込まれるのだ。

「ハウジングファースト」という言葉が知られてから、かなりの時間が経った。

まず住む場所がなければ、どんな就労支援も意味がない。住民票がなければ選挙権もない。様々な「人権」が、あっさりと失われてしまう。この10年、本当に簡単に人がホームレス化をする状況を見てきたからこそ、言えることだ。生活の基礎はまず、住居だ。

鳥越氏は、「住んでよし、働いてよし、環境によし」という言葉を掲げている。

「住」という言葉が一番最初に来ているからには、公営住宅が極端に少なく、倍率が極端に高く、そして家賃が極端に高い東京から、「住まい」の保障を訴えてほしい。

ということで、泣いても笑っても今週末に結果が出る。

殺伐とした東京から、もう少し優しい東京に変われば、たぶんこの国が変わる。そのためには、みんながもうちょっと安心して暮らせて、安心して働けて、安心して子育てなんかができる仕組み作りが必要だ。

さて、投票率はどのくらいになるのか。ドキドキしながら投票の日を待っている。

(2016年7月27日「雨宮処凛がゆく!」より転載)