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<kashiko連載>自閉症の息子と生きる (2)社会的自立の一歩。療育

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2014-06-18-logo_mini.png言葉がわかるのに話せないという苦しみの中に、息子はいる。

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息子はまったく意味のある言葉を話さなかったので、私が話した言葉を理解しているかを確認することが困難でした。日常生活では私が話しかけても何も返事が返ってこないので、傍から見ると私が独り言を言っているように見えたのではないでしょうか。

自閉症とわかってしばらく経った3歳ごろ、食事の支度中、息子にキッチンから話しかけました。

ママはごはんの支度中だから、自分でおもちゃのかたづけをしてね。

全く期待をせずに発した言葉でしたが、息子はふと考える仕草をしたあと、おもちゃを種類別に片づけ始めました。木のおもちゃは引き出しへ、おえかきボードは棚へ・・・。

それまでは、息子がルールを理解することは難しいのではないか、言葉はどうせわからないとあきらめて、私が一人でおもちゃをかたづけていました。しかし、その様子を息子はそばで見ていて、おもちゃをどこにしまえばいいのか学習していたことになります。そして、私の指示が通ったということは、言葉を理解しているということだとわかり、とても嬉しくなりました。

この出来事は、「息子はおしゃべりはできないけれど、私たちが言っていることは理解できているのかもしれない。」という確信にも似た気持ちへと変わりました。

話せないからと言って、言葉がわからないのではない。言葉がわかるのに、話せないという苦しみの中に息子はいるのだ――。

息子の気持ちがわかると同時に、一筋の明るい希望が見えた瞬間でした。

この子に文字を教えて身につけさせたら、ひょっとしたら将来筆談で会話することもできるようになるかもしれない、後々そう考えるようになりました。

現在7歳ですが、6歳ごろから「ママ」「パパ」「ビビ(本当はミミ。ペットの名前)」と言えるようになり、日常生活の中で言葉の模倣をすることが増えて発音しようとしたり、たどたどしくも言葉で理解してもらおうと頑張る姿が見られるようになりました。会話とまではいきませんが、コミュニケーションが少しずつとれるようになってきています。

「ママ」と一生言ってもらえないかもしれないと覚悟していたので、とても嬉しかった...。言葉が出ない自閉症の子どもに少しでも言葉を獲得させたいのなら、決してあきらめずに早めの個別療育を始めてみてください。

2014-06-18-logo_mini.png子どものゆっくりな成長に寄り添う。療育とは何か?

発達障害の疑いがあったり診断されると、病院や相談機関で「療育」をすすめられることがあります。この聞き慣れない「療育」という言葉。

療育とは、身体や言葉の発達に遅れを持った乳幼児や児童の社会的な自立を促すために、医療や専門的な教育支援プログラムに基づきながら、援助やトレーニングを行うことです。

療育を始めるには適切な時期があり、早期であるほうがよいとされます。例えば、言葉やコミュニケーションを身につけるためには、2~4歳の幼児期から療育をスタートするのが望ましいと言われています。しかし、それ以降に始めたからと言って手遅れということもありません。スタートは早いに越したことはありませんが、本人の適性を見ながら長期的視点に立って続けていくことが何より大切です。

筆者の場合、息子が3歳を過ぎた頃に療育を始めました。それまで、自閉症についてほとんど知識がない状態だったので、「この療育で本当に良くなるのか?これは何のためにやっているのか?」と懐疑的な気持ちに陥ることもありました。

大切なことは、療育は即効性があるものではないと理解すること。本人の個性や適性に応じながら、長い目で進めていきましょう。親が焦ってしまい、途中で療育をやめてしまうことはとてももったいないことです。焦らず、子どものゆっくりな成長を受け入れながら、療育をすすめていきたいものです。 (全文はこちら:http://www.bs-kashiko.com/2163/

2014-06-18-logo_mini.png環境を整える、絵にする・・・療育の種類と方法

ここで、日本で多く取り入れられている療育をご紹介します。

現在主流となっていて、知的障害児通所施設や、小学校の特別支援学級、特別支援学校などの現場でも多く取り入れられている療育は、「TEACCH(ティーチ)」というものです。

TEACCHとは、アメリカのノースカロライナ大学のエリック・ショプラーらが始めた自閉症のための療育方法です。環境と対応の構造化を一筋にし、わかりやすい方法を提示して行動を促すアプローチです。構造化とは、以下のような4原則が元になっています。(全文はこちら:http://www.bs-kashiko.com/2163/

(1) 物理的構造化

自閉症児が落ち着いて集中する環境を、目的別に設定することです。自閉症は目から入ってくる情報が多すぎると、処理しきれずにパニックになってしまったり、混乱してやらなければいけないことに集中できないことがあります。部屋に本やおもちゃ、さまざまなものがあると気持ちが分散してしまいます。

そこで、勉強をする机には、パーテーションなどの仕切りを使って集中しやすい環境を整え、今勉強する教材以外は置かないないなどの工夫が有効となります。

(2) スケジュールの視覚化

自閉症の子どもは耳から入る指示よりも、目から入る指示の方が入りやすいと言われています。スケジュールや手順などは、イラストや文字などの視覚的なものを使うと理解しやすくなります。何枚かカードを用意して順番に示すことで、これから何をするのかがわかるようになります。

(3) ワークシステム

「何を、どこで、いつ、どのように」するのかを、絵や文字などのカードを使いながら、わかりやすく工夫することです。例えば、歯磨きを例にすると

(1) はをみがく(左下、右下などイラストで位置を、1~10までの数字を書き「10回磨く」と示す。)
(2) コップにみずをいれる
(3) うがいをする 1.2.3.4.5(5回うがい)
(4) タオルでくちをふく おしまい

視覚的なイラストにし、1枚の紙にまとめます。このワークシステムは日常生活のさまざまな面で応用することができます。我が家はトイレの壁にもイラストを貼り、トイレの自立を促しました。

(4) 視覚的構造化

その状況を理解するために、絵やアイコン、写真などを使うことです。街中で私たちはさまざまな共通の表示を見ながら状況や場所を判断しています。トイレ、エレベーターやエスカレーター、電車での優先席など、数えたらきりがありません。発達障害の人にわかりやすい視覚的構造化は、ユニバーサルデザインの観点からも、すべての人に理解しやすいということが言えるでしょう。

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(筆者が息子のために描いたもの)

療育について、続きはこちら:kashiko

2014-06-18-logo_mini.png「かしこい」女性に「かしこく」生きるヒントを提供する情報サイト『kashiko(かしこ)』
http://www.bs-kashiko.com/

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