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「事実婚」を考える

2014年06月17日 00時04分 JST | 更新 2014年08月15日 18時12分 JST

女性が働くと事実婚が増える?

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事実婚は入籍をせず夫婦として一緒に生活をしている人たちのことを指します。法律や社会的承認によらず、二人の意志で結婚関係を決定する自由主義、個人主義的な結婚のかたちです。相手にとってベストパートナーで居続けることがお互いに求められる大人の関係ともいえます。

恋愛結婚や共働きが当たり前の時代に、家と家、結婚と国家の結びつきを重視するこれまでの結婚制度が補えない価値観のなかに広がっている実態があります。なかでも事実婚のニーズを高めている背景には、女性の社会進出があります。

年収が高い女性には配偶者控除などの制度も無効となるので、結婚して籍を入れるのは子供のためだけという人も増えているようです。これまでのように男性に経済的に従属する構図が減っていることが大きな要因といえます。責任ある仕事をするワーキングマザーも増え、お金や生活のためだけに働いているのではないという自負心があるのも大きな変化です。

似たようなステータスと捉えられがちな同棲との違いは、事実婚は二人が夫婦であるという認識を共有している点です。昔からある「内縁の妻」とも違い、事実婚を選ぶ場合は思想的な主張が強く含まれています。

認められてきた事実婚

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既婚・未婚の女性を対象にした「事実婚に対する意識調査」によると、事実婚をしてみたいと考える人は1割程度。結婚式に対して消極的な人も多く、従来の"結婚"という慣習や儀式に縛られたくない人が多いこともわかります。

「共感するが、自分はそうしたくない」が3割、「共感しないが、他人がそうするのはかまわない」という回答が5割というのも事実婚が認知されてきた表れでしょう。

女性の社会進出によって、これまでの男性が一家の大黒柱になる家庭の在り方は崩れ始めています。女性の方が年収の高い世帯もあり、家庭内の男女の役割についても見直される時代になってきているでしょう。また、妻をサポートするイクメンという現象も、男性が自発的に育児に参加する姿に変わった象徴と見られます。朝の保育園への受け渡しはほとんどが男性という駅前の保育園も増えています。

そんな働く女性にとって事実婚のメリットは名前を変えずに働けることです。

社内規定で通称として旧姓を使えれば問題ないようですが、事実婚を選ぶ人は、名前を変えないことで一人の人格としてお互いに尊重しているという意思を持っています。

特に収入が多い働く女性が、思想と実用性の観点から事実婚を選ぶケースも見られます。相手の男性も同じ理念を持っているか、女性の希望を聞き入れるタイプに多く、対等な関係を求める同年代カップルに選ばれています。

最大の障壁、戸籍問題

事実婚で最もネックになるのが子どもの戸籍の問題です。愛情ある夫婦から生まれた子であっても、父親が認知する必要があるなど、様々な場面で法律の壁にぶつかることになります。

事実婚のカップルの間に生まれた子どもは非嫡出子となり、嫡出子に比べて立場が弱くなるので相続トラブルを想定して周囲を説得する必要が生じます。実の子であるので相続の権利は持っていますが、もし嫡出子が他にいた場合は権利が半分になるという法律も存在します。

夫婦の間では了承されていても、他の親族への説得が障壁になるケースがあります。特に財産の多い家では、骨肉の争いに発展しやすく、周囲の理解や、遺言による遺産配分の明記などの防衛策が必要になってきます。

現状では少しずつ法律面で事実婚を認める傾向もありますが、完全に法律婚と同じではありません。事実婚で子を産み育てることを決意した夫婦はリスク面も把握しておく必要があります。周囲を説得し、面倒な手続きも一つずつクリアしていかねばならないデメリットもあります。

また、将来的に子どもへの説明責任もあります。自分たちのスタイルを貫くことを理解してもらえるかどうか、話をするタイミングも配慮する必要があるかもしれません。

「結婚先進国」に見る事実婚

事実婚が当たり前の選択肢として存在する国もあります。フランスやスウェーデン、オランダでは事実婚を選ぶ人が多く、家族制度として法律で守られています。そうした国では出生率が若干上向きになるなど事実婚による少子化への貢献が認められています。

フランスではユニオンリーブルという事実婚のスタイルがあります。さらに制度として連帯市民協約PACS(パックス)ができ、事実婚のカップルは男女の組み合わせを問わず夫婦として法律で守られる制度になっています。法律婚の夫婦とほぼ同様な税制優遇が受けられ、離婚手続きも簡単ということで、ユニオンリーブルと法律婚の中間のようなところにあります。

初めは同性愛者やフェミニスト運動の機運で始まったPACSですが、今では一般の利用者が多く、「お試し婚」という感覚で使っている若い世代も多いようです。お試し婚の後は法律婚に移行するカップルもいますし、そのまま事実婚を選ぶカップルもいます。

今では先進的と思われる国でもその変遷は少しずつです。フランスでは、同じように"家"を重要視していますし、カトリックの教義では離婚は許されないので離婚手続きは厳しく負担も大きくなります。そこで生まれたのが自由な夫婦の在り方だったと言えるでしょう。

しかし同時に、フランスの高い離婚率も一つの文化です。外国の例がすべてバラ色ではないことも見逃してはいけません。日本でも事実婚を容認すると結婚のハードルが下がり、離婚率が増えるのではないかと懸念されています。

「事実婚」で少子化は解決できるのか

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一方で、未婚率も上昇し少子化が進む中、時代に合った結婚制度を柔軟に取り入れることは、今後人口構成を考えた時に日本の大きな課題になるかもしれません。子どものためには、安定した結婚生活があることは重要です。しかし、それは婚姻関係がなくてもできることです。

自由に結婚のスタイルが選べ、重圧からではなく二人の自由な意思で家庭を築ける支援が少子化に対して必要な処置ではないでしょうか。その点でも事実婚を広めるには婚外子となってしまう子供への偏見といった意識面での変革や、法整備が一層求められます。

現状では子どもに関してのデメリットも大きい事実婚ですが、女性が自立した立場を持つという意味で、働く女性にプラスになる可能性も期待されます。事実婚というスタイルを通じて改めて結婚という制度を考え直す時期に来ているかもしれません。