マクドナルドで4年間働いてわかったこと(アメリカでの体験記)

マクドナルドで働くには、自分は優秀すぎると密かに思っていた。
In this Jan. 20, 2012 photo, the McDonald's logo and a Happy Meal box with french fries and a drink are posed at McDonald's, in Springfield, Ill. McDonaldâs Corp. saw net income jump by 11 percent in the fourth quarter, as the fast-food giant continued to attract budget-conscious customers with low prices. (AP Photo/Seth Perlman)
In this Jan. 20, 2012 photo, the McDonald's logo and a Happy Meal box with french fries and a drink are posed at McDonald's, in Springfield, Ill. McDonaldâs Corp. saw net income jump by 11 percent in the fourth quarter, as the fast-food giant continued to attract budget-conscious customers with low prices. (AP Photo/Seth Perlman)
ASSOCIATED PRESS

18歳から22歳までの4年間、私はマクドナルドで働いた。もっといい仕事を見つけられなかったので、パートタイムとフルタイムで働き続けた。昇進もせずマネージャーにもならなかった。大きなことを成し遂げたりもしなかった。

基本的に、私は典型的な怠け者のマクドナルド労働者だった。いいかげんで、愚かで、自発的に働こうなんて考えもしなかった。

マクドナルドで働いている人は怠け者、と世の中の人たちも思っていることも実感した。マクドナルドで働いているんだと伝えると、両親や友達はがっかりした。「まだ、マクドナルドで働いているの?」「私だったら、絶対にあんな所で働かない」といった遠回しな批判や、「今日は仕事に行くのやめなよ(そんなの本物の仕事じゃないじゃない)!」といった彼らなりの励ましから、その事がわかった。

私自身も心の中で同じ様に思っていた。私はひどい労働者だった。動きは遅いし、不器用だし、自分の置かれた状況に腹を立てていた。マクドナルドで働くには、自分は優秀すぎると密かに思っていた。「こんな仕事、本当にくだらない! お金のために仕方なくやっているだけ」といつも自分を正当化していた。読書好きで優秀、知的な会話を楽しむ学生の私は、こんな意味のない肉体労働には向いてないと思っていた。

仕事は一向に上達しなかった。上達したくもなかった。自分にとって何の意味をない仕事を、わざわざ努力して上達する必要なんてないでしょう?

でも数年が過ぎた頃、私の態度は変わり始めた。

自分の仕事にプライドを持ち始めたのだ。

マクドナルドの仕事は最悪でうんざりする。でも私自身や、友達、家族がマクドナルドで働くことに屈辱を感じていたのは、ハンバーガーを作るのが原因ではなかった。そうじゃなくて、それよりもっといい仕事に就けたはずだったから。

こう自問自答した。マクドナルドと他の仕事は何が違うのだろう? 自分の仕事はなぜ他の仕事よりずっと哀れに思われるんだろう?

大企業だから? そうじゃない。もしそうだったらスターバックスや(ディスカウント百貨店の)ターゲットで働くのだって恥ずかしいはず。

悪質企業っていわれているから? だけどH&MやGapも奴隷労働を批判されているでしょ。

ファストフードだから? でもチポトレ(メキシコ料理のファストフード・チェーン)の仕事には悪い印象はない。

知的な仕事じゃないから? いやいや、小売や受付の仕事は問題ないでしょ。

そして私は気が付いた。

マクドナルドは、他に何もできない人にとっての仕事なんだ。初心者レベルの仕事の採用ですら、私がマクドナルドで一緒に働いてきたような人たちを雇っていない。

マクドナルドでは、障害を持った人、太り過ぎの人、生まれつき魅力的とはいえないような人、英語をあまり喋れない人、十代初めの人、それに多様な人種の人たちが働いていた。彼らがマクドナルドを支えており、最も仕事ができる労働者として尊敬されていた。

これがスターバックスだったら、大半の労働者が私のような人だろう。20代前半の白人、そこそこ魅力的、スリムで英語を話す。

これが、私と私の周りにいる人たちがマクドナルドに対して持っていた偏見だった。アパレルの仕事をすれば「良い」仕事に就いていることになる。きちんとした環境で育った人は、努力しても仕事ができないような人たちとマクドナルドで一緒に働いたりはしない。

もしあなたが20代前半の白人女性だったら、マクドナルドで働いたら馬鹿にされる。でも障害を持った人や移民の中年女性にも同じことが当てはまるとは思えない。友達から「いつになったら、本当の仕事に就くの?」なんて笑われたりしない。マクドナルドこそが、彼らにとっての仕事だと私たちは思っているから。

マクドナルドの仕事は最悪でうんざりする。でも私自身や、友達、家族がマクドナルドで働くことに屈辱を感じていたのは、ハンバーガーを作るのが原因ではなかった。そうじゃなくて、それよりもっといい仕事に就けたはずだったから。マクドナルドで一緒に働いていた人たちより、もっと知的で、一生懸命働き、有能なはずだったからだ。「私にはもっとふさわしい仕事がある」。恵まれた環境で育った私は、そんな思い上がった気持ちを持っていた。

小売店で働いたり、受付係としてファイルを整理しているから、自分はマクドナルドで働いている人たちより優秀だと考えているなら、それは間違いだ。

そして私は気が付いた。こんな態度はフライドポテトをすくうよりも最悪だ。私はマクドナルドで働いている人たちより優秀じゃない。

確かに私は、彼らとは違うスキルを持っているかもしれない。私は筋力があるほうではないし、プレッシャーを感じると慌てることもある。だから肉体労働よりデスクワークの方が力を発揮できる。だからといって、マクドナルドの凄い従業員たちより、知的でスキルがあって価値があるということにはならない。

世の中には色々な仕事がある。社会で過小評価されている人たちが就いている仕事は、価値がないものに見られがちだけれど、それは違う。

真夜中にハンバーガーを買いにくるお客さんのために、時には20時間働く同僚ほど私はハードワーカーではない。

マネージャーからエンジニアにも早変わりする同僚ほど賢くもない。全ての機械の修理の仕方を学んだ彼は、壊れても修理を呼ばずに自分で直してしまう。

一週間に何千人のお客さんが来るかを予測して、材料を注文する人たちほどの計画性もない。もし失敗すれば上司から大目玉を食らうだけでは済まないということを、彼らは知っている。

ケチャップがないというだけで大声を上げたり、ドリンクを投げつけたり、人種差別的な中傷をするお客さんたちもいる。そんな人たちに対処できるほど忍耐強くもない。

これら全てが仕事のスキルなのだ。

小売店で働いたり、受付係としてファイルを整理しているから、自分はマクドナルドで働いている人たちより優秀だと考えているなら、それは間違いだ。

私にとって、マクドナルドで過ごした時間はとても貴重なものだった。またフライドポテトをすくったり、ハンバーガーを作りたいとは全く思わない。でもそれ以上に大切な何かを学んだ。自分の横柄さを少しずつ減らし始めた。就いている仕事で人の善し悪しを判断することに疑問を持ち始めた。不愉快な大企業で働いているからといって、そこで働く労働者たちにも嫌悪感を抱くのを止めた。そして他人にもっと共感できるようになった。

マクドナルドで働いたことが履歴書の汚点になる? 私はそうは思わない。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

シャロン・ストーン

マクドナルドで働いていたセレブ

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