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フェイスブックが人種によって広告配信を除外できるようにする

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フェイスブックが、「アフリカ系」「アジア系」「ヒスパニック系」とユーザーの民族(人種)ごとに広告配信を除外できるようにしている―。

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By Nobuyuki Hayashi (CC BY 2.0)

調査報道メディア「プロパブリカ」が28日に掲載した記事で、そう指摘している

米国では、不動産や雇用の広告で、人種に基づいた差別を行うことは違法とされている。

フェイスブックは、差別的な意図をもった広告は「広告ポリシー」で禁止しており、違法でもある、と説明するが、記事は波紋を広げている。

フェイスブックは、17億人というユーザー規模と影響力から、コンテンツの扱いを巡って、メディアとしての責任が問われている。

※参照:フェイスブックがパレスチナのジャーナリストを検閲する
※参照:フェイスブックがベトナム戦争の報道写真"ナパーム弾の少女"を次々削除...そして批判受け撤回
※参照:編集者を解雇したフェイスブック、アルゴリズムがデマをピックアップする

メディアとしての責任の議論は、ニュースだけでなく、広告にも向けられている。


●除外できる人種

「プロパブリカ」の記事の筆者の一人はジュリア・アングウィンさん。プライバシー問題の専門記者で、最近では、グーグルがウェブ閲覧履歴と個人情報の間の"壁"をなくしたことも、明らかにした。

※参照:グーグルが個人情報とネット閲覧履歴を隔てていた"壁"をなくす

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記事によると、フェイスブックには、広告主が広告の配信条件を設定する「広告マネージャ」という機能がある。ここには、広告を見て欲しいユーザー層を、地域、年齢、性別などで絞り込むターゲット設定がある。

この中に、「詳細ターゲット設定」として、「以下のいずれかの条件に一致する人がターゲットになります」という欄があり、「学歴」などと合わせて「民族」を選ぶこともできる。

「民族」欄にあるのは「アジア系アメリカ人」「アフリカ系アメリカ人」「ヒスパニック(すべて/バイリンガル/主にスペイン語/主に英語)」の6項目。

だが「詳細ターゲット設定」には、もう一つの欄がある。それが「以下のいずれかの条件に一致する人が除外されます」との設定だ。

「民族」には同じく「アジア系アメリカ人」「アフリカ系アメリカ人」「ヒスパニック」がある。例えば、これらをすべて除外すれば、広告は主に白人だけに配信されることになる。

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ここで問題となるのが、1968年制定の公正住宅法と呼ばれる法律と、1964年制定の公民権法だ。

それぞれ不動産、雇用について、人種などに基づく広告での差別的な取り扱いを禁止している。

だがフェイスブックでは、不動産分野の広告でも、特定の民族を除外した広告配信ができるようだ。

その実例として、「プロパブリカ」は自らの不動産関連のイベント告知の広告を、「アジア系」「アフリカ系」「ヒスパニック系」を除外した上で配信し、公開できたという。

この「除外」設定について、記事は人権派弁護士のジョン・レルマンさんのコメントを紹介している。

これは甚だしい違法行為だ。知る得る限り、最もあからさまな公正住宅法違反だ。


●フェイスブックの釈明

「プロパブリカ」の取材に対し、フェイスブックのプライバシー・パブリックポリシー・マネージャー、スティーブ・サッターフィールドさんは、こうコメントしている。

広告主による、我々のプラットフォームの悪用に対しては、毅然とした対応を取る。我々の(広告)ポリシーはターゲティング設定を差別に使うことを禁止しており、法律の順守を求めている。広告がポリシーに違反していると判断すれば、すみやかな対応措置を取る。

民族ターゲティングは、2年前から"多文化広告"の取り組みの一環として導入されたという。

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フェイスブックのユーザーの登録情報には、「人種」の欄はない。そこで、ユーザーの「いいね」などの行動履歴を解析して、フェイスブックが独自に"人種的傾向"を判断しているという。

フェイスブックの多文化責任者、クリスチャン・マルチネスさんも28日、声明を公開。その中でも、こう述べている。

フェイスブックは広告主に、「いいね」やその他の行動からみて、特定の民族コミュニティ―アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系アメリカ人、アジア系アメリカ人―に関係するコンテンツに関心がありそうなユーザーに、リーチできる機能を提供しています。

裏を返せば、フェイスブックではユーザーに対して、本人のあずかり知らぬ"人種的傾向"のラベルを貼って、広告配信に利用しているということになる。

フェイスブックが、サービスの利用履歴から、ユーザーの興味関心を広告配信でどのように判断しているか。「プロパブリカ」はこれまでにもキャンペーン記事で指摘してきた

そして、フェイスブックの判断は、ユーザー向けのページで、自分でもある程度確認することはできる。


●フェイスブックの責任

「プロパブリカ」の記事には、様々なメディアが反応し、騒動となった。ただ中には、否定的な見方もある。

著名ブロガーのダニー・サリバンさんは、自らのサイト「マーケティングランド」で、「フェイスブックの人種ターゲティングは、目新しくも悪いことでもなく、すべてが違法というわけでもないのだが、改めて注目を集めている」と題した記事で、今回の騒ぎには誤解も交じっている、とする。

サリバンさんは、フェイスブックが今回、メディア向けに出した声明から、"除外ターゲティング"について説明している部分を引用する。

除外ターゲティングについて:マーケターはこのタイプのターゲティングを、広告が特定のオーディエンスとそれ以外とで、どちらがより響くか、を評価するために使います。例えば、あるオーディエンスはワールドカップのスポンサーによるスペイン語の広告をクリックするかもしれないし、別のオーディエンスは同じ広告の英語版をよりクリックするかもしれません。そのため広告主は、ヒスパニック系グループを除外した英語のキャンペーンを展開し、そのキャンペーンをスペイン語でやった場合より、どれだけ効果が上がるかを見ることもあるでしょう。これは業界では一般的な手法です。

そして、民族ターゲティングは、これまでもオープンな形で行われてきた、と指摘。

2015年に公開された米ヒップホップグループ「N.W.A」の伝記映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」キャンペーンでは、グループの知名度が人種ごとに異なることから、白人、アフリカ系、スパニッシュ系で、フェイスブック上のトレーラー映像を差し替えた事例が知られている、という。

また、人種による差別的広告が違法となるのは、意図的な場合で、しかも不動産と雇用という限定された分野での話だ、と。

ただ、サリバンさんも、フェイスブックの現状に問題なし、としているわけではない。

確かに、(不動産、雇用といった)センシティブな分野での広告について、特別な点検を確実に行うよう、やるべきことはあるだろう。

すでに紹介したように、「プロパブリカ」は、「アジア系」「アフリカ系」「ヒスパニック系」を除外した上で、不動産関連のイベント告知広告を公開できた、という。現状では、これらの分野で差別的な広告を出すことに、システム的な歯止めはかかっていないようだ。

アトランティックのジリアン・ホワイトさんの記事の中で、テクノロジー政策のコンサルタント「アップターン」のアーロン・リーケさんはこう述べる。

人種に基づく指定ができるようなサイトはいつくもある。だが、フェイスブックが特別なのは、それが桁外れに強大だからだ。

そしてフェイスブックのような大規模サービスでは、そもそもシステム的な対策がない限り、ユーザーからの違反指摘を待つ、という仕組みではチェック態勢として機能しないだろう、と言う。

筆者のホワイトさんもこう指摘している。

フェイスブックが主張するように、オーディエンスターゲティングのツールの狙いが、差別を許容するものではない、というのは多分その通りだろう。ただ、このサイトは、ユーザーの包摂を誇っているようだ。だとすると企業として、広告主がその目の前で差別的行為を犯すことが出来ぬよう、確実な手立てを取る責任がある。

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■ダン・ギルモア著『あなたがメディア ソーシャル新時代の情報術』全文公開中

(2016年10月30日「新聞紙学的」より転載)