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トランプ新大統領はツイッターで何を言おうとしてきたのか?

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いよいよトランプ新大統領が就任した

ツイッターをやめる気配はなく、これまでの個人アカウント「@realDonaldTrump」に加えて、米国大統領の公式アカウント「@POTUS」でもツイートを始めている。

ただ、大統領公式アカウントの方には、選挙戦でもトランプ陣営のソーシャルメディア担当を務めてきた側近のダン・スカヴィーノ氏が、主に書き込みを行う、との説明書きがある

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ただ、トランプ氏がツイッターを使うことに関しては、各種調査でもかなり評判は悪い。

トランプ氏は、ツイッターで何を言おうとしてきたのか?

3万件を超すツイートの中から、特徴的な言葉を見ていくと、「アメリカを再び偉大な国に」といったスローガンに加えて、「負け犬」「間抜け」といった強い罵倒の言葉が目につく。

しかも、その内容の7割には事実関係に誤りがあったり、偽ニュースが含まれていたりする。

強大な権力の持ち主が、そのような情報発信を思いのままに続けることに対して、人々が眉をしかめるのも当然だろう。

ただ、トランプ氏には、ツイッターが自分の"メディア"であるとの思いは、かなり強いようだ。

少なくとも、それをやめさせる手立ては、今のところなさそうだ。

●「アカウント削除」の"ニュース"


「ツイッター社、ドナルド・トランプ氏のツイッター・アカウントを削除:"人種差別とヘイトに耐えられない"」

『CNN』のロゴのついたサイトが今年1月9日付で、こんなニュースを流している。

だが、これは偽ニュースだ

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サイトの説明を見ると、『CNN』こと「クララズ・ナイス・ナネリー(クララの素敵な修道院)」を運営しているのは「ABCニュース」の偽サイト運営などで知られる「ポール・ホーナー」さんだとしている。

※参照:フェイスブックからデマニュースを排除するためのいくつかの方法

こんな偽ニュースが出回るほど、トランプ新大統領のツイッターには注目が集まっている。

●"トランプツイート"のデータベース


トランプ氏のツイッターが影響力がメディアに匹敵することは、そのフォロワー数からも伺える。

1月22日現在の個人アカウント(@realDonaldTrump)のフォロワー数は、2120万人。

ニューヨーク・タイムズ(3302万人)、CNN(3119万人)には及ばないものの、ロイターやウォールストリート・ジャーナル、フォックスニュース、AP、ワシントン・ポストなどの既存メディアを上回る規模だ。

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Data source: Twitter

2009年3月のツイッター開始以来、3万4000件を超すツイートを発信してきている。ボストン在住のプログラマー、ブレンダン・ブラウンさんは、そのうち3万件超のツイートを保存し、データベース「トランプ・ツイッター・アーカイブ」として公開している。

様々なキーワードによって、それを含むツイートを検索することができ、トランプ氏のツイッター利用の傾向を理解することができる。

●トランプ氏がツイッターで言ってきたこと


トランプ氏は、大統領選の本番だった昨年、かなり積極的にツイートをしていたような印象があるが、このアーカイブによるとツイート数は4224件。

最もツイート数が多かったのはその3年前、2013年の8127件で、大統領選の出馬表明をした2015年の7518件、2014年の5770件がこれに次ぐ。

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Data source: Trump Twitter Archive

昨年は、むしろこの数年ではもっともツイートが少なかったようだ。

そして、ツイートでよく使う言葉。

桁違いに多いキーワードとしては、「トランプ」(1万3153件)、「グレート」(4396件)、「オバマ」(2467件)、「アメリカ」(2417件)、「ラブ」(1113件)などがある。

これらのビッグワードを除いて、より細かく見ていくと、もう少しニュアンスが出てくる。

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Data source: Trump Twitter Archive Tool: Tableau Public

トランプ氏のスローガンである「メイク・アメリカ・グレート・アゲン(アメリカを再び偉大な国に)」はハッシュタグなどで多用されており、使用回数は2012年1月から合計935件。

対して、就任演説のキーワードになった「アメリカ・ファースト」は、昨春以降が中心で、件数も95件と一桁落ちる。

次にボリュームがあるのは、メディア批判やニュースの引用の文脈で、「フォックス・ニュース」(517件)、「メディア」(484件)、「CNN」(418件)、「ニューヨーク・タイムズ」(123件)、「ブライトバート」(90件)など。

対立候補だった「ヒラリー(クリントン)」はさすがに多く965件だが、「クルックト(いんちき)ヒラリー」との表現も251件にのぼる。

対立候補は、このほか「(テッド)クルーズ」(300件)、「ジェブ(ブッシュ)」255件、「(マルコ)ルビオ」189件、「(バーニー)サンダース」(91件)など。

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Data source: Trump Twitter Archive Tool: Tableau Public

そして、トランプ氏のツイートの特徴である攻撃性。

「失敗した(フェイリング)」(265件)、「負け犬(ルーザー)」(243件)、「あほ(ダム)」(222件)、「ひどい(テリブル)」(204件)、「違法な(イリーガル)」(187件)、「愚かな(ステューピッド)」(183件)、「間抜け(ドープ)」(117件)、「不誠実(ディスオネスト)」(116件)、「取るに足らない(ライトウェイト)」(101件)、「異常(クレイジー)」(95件)、「うんざり(ボアリング)」(91件)。

この方面の表現は、語彙が充実している。「不誠実」では、「不誠実なメディア」という表現も年明けにかけて20件ほどある。

これらに加えて、トランプ氏のツイート内容の不正確さも、以前から指摘されていることだ。

タンパベイ・タイムズのファクトチェック・プロジェクト「ポリティファクト」の調べでは、ツイッターを含むトランプ氏の情報発信のうち、「ほぼ間違い」「間違い」「全くの間違い」が全体の7割にものぼる、という。

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●ツイッターを使う理由


トランプ氏は21日、米中央情報局(CIA)の300人以上の職員を前に行ったスピーチで、こう述べた

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私はメディアと戦争をしている最中だ。彼らは地球上で最も不誠実な人間たちだ、そうだろう?

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20日のトランプ氏の大統領就任式を受けて、メディア各社は今回と8年前の前回の、ワシントン記念塔から米連邦議会議事堂にいたる約2キロのナショナルモールの写真を並べて掲載。

180万人が集まり、モールを人波が埋め尽くした8年前のオバマ前大統領就任式にくらべ、今回の聴衆の少なさを指摘していた。

ニューヨーク・タイムズは、前回の3分の1程度では、との専門家の見立てを紹介している。

これが、トランプ氏の気に入らなかったようだ。トランプ氏は会見で、「150万人はいた」と反論している。

トランプがツイッターを使う理由の一つとして、既存メディアへの根強い不信感が伺える。

トランプ氏にとっては、既存メディアに対峙するための、自分のメディアとしてツイッターが手放せないようだ。

昨年12月にはこんなツイートをしている。

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もしプレスが私のことを正確に、敬意をもって報じてくれるなら、私が"ツイート"をすべき理由ははるかに少なくなるだろう。悲しいことに、そんなことが起こるのかどうかわからないが。

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今年に入ってからも、フォックス・ニュースで同様の発言をしている。

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もしプレスが誠実なら、そうではないが、私はまったくツイッターなど使わないだろう。その必要がない。

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●ツイートの不評


前述の偽ニュースとは別に、こんなトランプ新大統領のツイッターアカウント削除を巡る議論は、実際にある。

多様性と包摂に取り組む「プロジェクト・インクルード」の共同創設者、エレン・パオさんはトランプ氏の就任式があった20日、「ミディアム」に、ツイッターCEOのジャック・ドーシーさんに宛てた公開書簡を掲載した。

パオさんは、シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタル「クライナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズ」を相手取った性差別訴訟や、人気掲示板「レディット」の暫定CEO時代に差別表現の規制などを巡って批判の矢面に立たされたり、といった話題の主でもあった

パオさんは公開書簡の中で、トランプ氏のツイートは、個人に対する攻撃やいやがらせが目に余り、ツイッターのルールにも違反している、と指摘。CEOの権限でトランプ氏のアカウントを停止すべきだ、としている。

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トランプ氏は自らの2000万人のフォロワーを扇動し、セレブや10代の子たちにハラスメントをさせることをやめようとしない――トランプ氏に投票した人も含む、大半の人々がツイートをやめてほしいと思っているにもかかわらず。

合衆国のリーダーとして、トランプ氏はそのことをもっとよく知るべきだ。だが彼はそうしてこなかったし、今後もそうだろう。

ツイッター社のリーダーとして、ジャック、あなたが彼のアカウントを停止すべきです。ほかの誰もできないのだから。

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パオ氏が指摘する通り、ツイッターのルールでは、「嫌がらせや脅し、または恐怖を与えて他のユーザーが発言できないようにするといった、攻撃的な行為」を禁じており、そのような行為をするアカウントは、「一時的にロックまたは永久凍結されることがあります」と規定している。

そして、それは世論調査の結果にも表れている。

ウォールストリート・ジャーナルが18日に公開したNBCとの共同調査では、69%が「十分なチェックを受けないメッセージが、一瞬のうちに意図せず深刻な結果を引き起こしかねない」として、否定的な回答だったという。

共和党支持層に限っても否定47%、肯定46%だった。

調査会社「モーニング・コンサルト」とポリティコの共同調査でも、否定49%、肯定23%(クリントン支持者の否定77%、トランプ支持者の否定24%)だった。

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ヴァージによると、実際にツイッター社内でもそのような議論はあるようで、ドーシー氏自身もリコードのカンファレンスで「(心境は)複雑だ」と述べているという。

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(2017年1月22日「新聞紙学的」より転載)