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IoTの光と影-TechNW2016キックオフセッション(6)

2016年12月07日 22時49分 JST

2016年10月31日に開催した「いまだからエレクトロニクス、変わるエレクトロニクス! テクノロジー × ビジネス - エレクトロニクスの新世界」では、デジタルとアナログ、そして魔法の3文字言葉「IoT」について議論されました。

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デジタルトランスフォーメーションという言葉が生まれたのは2004年。

スウェーデンのウメオ大学で教壇に立つErik Stolterman氏、Anna Croon Fors氏が、ITが生活にもたらす影響に着目し、論文 "Information Technology and the Good Life" のなかで"ITの浸透により人々の生活があらゆる面で継続的により良い方向に変化すること" を「デジタルトランスフォーメーション」と定義しました。

第4次産業革命が話題となるなか、昨年はカナダのthe University of Ontario Institute of Technology大学でシーメンスカナダ法人CEO、Robert Hardt氏が"Digitalize or Die"(デジタル化か死か)と製造業のデジタル変革の必要性を訴え、来日した現代マーケティングの父、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院フィリップ・コトラー教授もWorld Marketing Summit2015で同じく"Digitalize or Die"(引用:2015年10月28日 Advertimes) と問いかけました。

今年の世界ICTサミット2016でも"デジタルトランスフォーメーション"がテーマとなり、ガートナーは2016年11月18日、デジタル・ビジネスへの取り組みを全社的に行っている日本企業は1年間で2割から3割に増加した、と発表しました。

改めてデジタルばやりの今、コンピューターやスマホが生活のなかに入ってデジタルという言葉が身近になり、対極にアナログが置かれています。デジタル以外のものをアナログと呼び、ざっくりいうと、ものごとを整数値で表すことがデジタル化、整数値にせずに連続した量として表すことがアナログ化といえます。

そんな折、今春まで日経エレクトロニクスの編集長を務めた蓬田 宏樹さんが約20年のジャーナリスト活動を終えて、社長として参画したテックポイントジャパンはアナログ半導体の会社です。蓬田さんとほぼ同じ年月IT業界にいるわたしは恥ずかしいことに、「アナログ半導体って何ですか?世の中すべてデジタル化されてるんじゃないんですか?」と最初思いました。

その解がひとつ、News & Chipsの2016年3月25日記事「デジタル時代こそ成長するアナログ半導体」にありました。

スマホのページめくりや拡大縮小、画面回転の操作など、人が触る部分、ユーザーエクスペリエンスとよばれる機能のほとんどが、アナログ回路でできています。端末に入っているCPUとメモリーはデジタル回路ですが、そこへの入出力のインターフェースや周辺回路の一部はアナログ回路で、デジタル時代の進展とともに、アナログ回路の出荷量はデジタル回路よりも増えています。

  • なぜ今、アナログ半導体なのか

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蓬田さんはテックポイントジャパンで、アナログ半導体市場を狙っています。

テックポイントジャパンは、監視カメラおよび車載カメラ向け通信用の、ミックスドシグナル(アナログ信号とデジタル信号が混在した回路)を扱う半導体を作るファブレスメーカーです。

半導体業界の合従連衡、規模の競争は熾烈を極めていますが、それはデジタル半導体の話ともいえます。蓬田さんは、Deloitte Touch Tohmatsu India安井 啓人さんの競争戦略の構図のなかでは"異質化"にあたる、大手企業と喰いあわないニッチ市場に商機を見出いだす戦略を取ります。

アナログ半導体は極めて収益率が高いうえ、アナログ回路設計者のデザイン力が差異化要素として大きく、加えて顧客獲得力、ビジネススピード、ファブの使いこなしなどマーケティングによって差異化を促進することができます。蓬田さんはテックポイントジャパンを端緒として、日本の電気・電子技術者が活躍できる半導体ベンチャー企業を立ち上げることで、エレクトロニクス事業を成長させられると考えています。

クラウドコンピューティングの世界では、身の回りでセンサーなどが発するアナログ信号を、デジタルに変換したりアナログに戻したりしてやりとりしています。

つまりいわゆるIoTの拡大でクラウドのデータが増えれば、それを処理するアナログ半導体のニーズも高まる、という訳です。

日本アイ・ビー・エム 東京基礎研究所の細川 浩二さんは、高速のインターフェースを動かすにはアナログ設計が必要、とコメント。安井さんは、大規模な雇用創出という観点ではアナログ半導体市場は未知数としながらも、医療など新しい分野ではベンチャー企業の活躍が期待できるのでは。異質化から同質化のスピードは早いか遅いかの問題でいずれやってくるもので、勝ち残れるのは技術的難度と技術の蓄積による、とコメントしました。

  • IoTの光と影

最後に、"IoT"という言葉のあいまいさ、氾濫について、登壇者からも参加者からも疑問視の声が上がりました。つながる、という観点ではInternet of xxと無限に言え、Internet of Things(モノ)、PC、ケータイ、スマホ、クルマ、インフラへと対象が拡大する一方で、付加価値がつながるモノ(ノード)でなくインターネット側に移る価値低下の恐れがある、との指摘がありました。

IoTのつまづき、ともいえるマネタイズについては、BtoBの企業間取引で合理的な価値、例えば労務管理コストの引き下げや雇用に係る訴訟リスクの低減など明確な費用対効果を出せるところは生き残る、という回答がでました。エレクトロニクス業界においては、アプリやサービスなど産業構造の上のレイヤーのほうが時を経ると儲かる仕組みになる、という議論がありました。

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BtoBマーケティングについては、筆者がボランティア運営委員を務める次世代マーケティングプラットフォーム研究会で12月2日に、注目を集めるABMをテーマに第10回総会を開きます。よろしければご参加ください。

本記事はコウタキ考の転載です。