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アベノミクス時代において必要とされる、資産防衛のための「分散投資」という考え方

2014年05月01日 19時10分 JST | 更新 2014年07月01日 18時12分 JST

アベノミクスを起因とした株高やNISAなど資産運用や資産管理について真剣に考える人口は以前と比べて確実に増えたといえるでしょう。その中で、必ず出てくる「分散投資」という言葉の、その意義や本質的な価値について考えてみたいと思います。

長年、日本人は資産の大半を自国通貨である「円」建てで保有してきました。アベノミクスによって15年以上に及ぶデフレからようやく脱却の兆しが見え、景気回復への見通しが広がる今、日本株など円建て資産の上昇に期待を寄せる人は少ないのが現状です。ただ、安倍晋三政権が目指す2%インフレが実現すれば、円安を伴う形で実質的に円建て資産が目減りすることにもなります。新興国の成長余力も依然として高い中で、資産管理の観点から資産防衛として外貨の持たざるリスクを意識する必要性が増しています。

■ 外貨の持たざるリスク

日銀の資金循環統計によると、今年6月末の家計の外貨建て金融資産(預金、投資信託、対外証券投資)の総額は36・6兆円で、家計の金融資産総額(約1,590兆円)に占める外貨建て資産の比率は2.3%にすぎないようです。また、家計の金融資産のうち54%は現金・預金で、米国(14%)やユーロ圏(36%)に比べても高い比率を占めています。これらは金融資産であって、不動産などの実物資産は含んでいないため、日本の家計資産全体に占める外貨建て資産の比率は更に低くなると考えられます。

ただ、古くから「タマゴを一つのカゴに盛るな」と言われるように、資産の多くを特定の商品に集中させることは高いリスクを伴います。また、ポートフォリオ(資産構成)理論からも、複数の資産への分散はリスクを抑制して資金を効率的に運用できることが知られています。ハイリスク・ハイリターンの商品と、ローリスク・ローリターンの商品を組み合わせることで、長期的に収益の振幅を平準化しながら、ローリターンの商品よりも高い収益を見込めることが可能になります。

■ ユダヤ・華僑が古くから実践する分散投資

こうした資産運用法を古くから実践しているのが、ユダヤ人や華僑と呼ばれる人々です。ユダヤ教の聖典「タルムード」にも「富は常に三分法で保有すべし。すなわち3分の1を土地に、3分の1を商品に、残る3分の1を現金で」と記されています。現代においては、さらに株式や債券、複数の通貨などへ分散させることと意味すると考えていいでしょう。私は、現在の会社を起業する前、日系証券会社のシンガポール法人で富裕層向けサービスを担当していましたが、フィリピンやシンガポールなどの華僑の資産家もまさに同様の考えでした。

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(筆者作成)

■ ストックを活用しフローを生む

こうしたユダヤ人や華僑の分散投資には、さらに大きな特徴があります。それは、既存の資産から安定して得られる収益(ストック)を、常に成長性の高い市場(フロー)へと振り向けていることです。現在でいえば、先進国から得られる収益を、一定のリスクを覚悟しながら複数の新興国へと分散投資することに当たります。ユダヤの富豪として知られるロスチャイルド家などは長年、こうして資産を増やし続け、度重なる戦禍などをくぐり抜けてきました。

■ 政府系ファンドや大学基金も実践

このような分散投資法は、ユダヤ人や華僑だけが実践しているものではありません。シンガポールやアラブ首長国連邦(UAE)などの世界最大規模の政府系ファンドも基本的な考え方は同じで、豊富な税収やオイルマネーによって蓄積された資産を株式や債券、不動産など世界の様々な資産に分散投資し、収益を生み出しています。安全運用が求められる日本の公的年金ですら、運用主体の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は資産の4分の1近くを外国株式・債券に振り向けています。

米エール大学の基金運用局では、1985~2005年の20年間平均で年率16.1%という驚異的な運用成績を達成していることで有名です。同大の最高財務責任者(CFO)、デイビッド・スウェンセン氏はその著書の中で「リターンの変動の約9割が資産配分に起因する」「投資家は資産配分目標を合理的に設定するのが先決なのに、役に立たない銘柄選択や(投資)タイミング(の時期を図る)のに夢中になっている」と指摘しています。資産をどのように配分して分散させるかは、 それほど重要なことなのです。

■ 円安進行により資産価値が下落

気になるのはこのところの為替の動向です。ドル・円レートは11年10月、一時1㌦=75円32銭の戦後最高値を更新後も歴史的な円高水準が続いていましたが、安倍政権の発足によって2012年の秋以降、急速に円安が進行し、昨年より1㌦=100円〜105円で推移しています。円安は円建て資産の目減りを意味しますが、復活する米国景気は日米金利差の拡大を通じて円安要因となる可能性があります。また、安倍政権が目指す2%インフレの実現も、貨幣価値が下落することで円安につながってしまいます。

バブル崩壊後、20年以上を経て、日本は今なお世界3位の経済大国。当面は円建ての資産から安定した収益は期待できるが、将来は人口減少や膨大な財政赤字など懸念要因も抱える。

世界経済の転換期にある今、株式や債券、不動産などの形で資産を海外分散させる運用法は、収益の安定化だけでなく資産防衛にもつながることを意識したい。

(※この記事は2014年5月1日の「ZUU online」を修正・加筆したものになります。)

リンク: http://zuuonline.com/archives/9277

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