無敵に見える米国株の調整リスクから日本株の動向を考える

現在、先進主要国の量的緩和相場が続いていますが、一部にはその神通力も通用しなくなっているとの見方も出てきています。今回は世界の株価に影響を与える米国株の調整リスクについて考えてみたいと思います。
NEW YORK, NY - JUNE 20: Traders work on the floor of the New York Stock Exchange (NYSE) on June 20, 2014 in New York City. Markets enjoyed another strong week with the S&P 500 and the Dow Jones Industrial Average both closing at record highs on Friday. The S&P 500 rose to 1,962.87 whilethe Dow climbed to 16,947.08. (Photo by Spencer Platt/Getty Images)
NEW YORK, NY - JUNE 20: Traders work on the floor of the New York Stock Exchange (NYSE) on June 20, 2014 in New York City. Markets enjoyed another strong week with the S&P 500 and the Dow Jones Industrial Average both closing at record highs on Friday. The S&P 500 rose to 1,962.87 whilethe Dow climbed to 16,947.08. (Photo by Spencer Platt/Getty Images)
Spencer Platt via Getty Images

現在、先進主要国の量的緩和相場が続いていますが、一部にはその神通力も通用しなくなっているとの見方も出てきています。今回は世界の株価に影響を与える米国株の調整リスクについて考えてみたいと思います。

■連日最高値の米国株の要因とは

最近の米国株は連日のように史上最高値を更新し続けていますが、好調な経済指標や企業業績、割安感(PERの低さ)などがその理由として挙げられています。一方で現在の米国の株価上昇は2008年のリーマンショック後からのFRBの量的緩和政策(QE政策)の賜物とも言われています。実際リーマンショック前に約1兆ドルだったFRBのバランスシート最近約4.5兆ドルになっており、量的緩和開始から約6年で3.3兆ドルも拡大しています。このFRBのバランスシートの拡大とともに株価が上昇してきたという見方です。

QEは過去3回実施され、現在は3段階目が進行中です(QE3)。注目すべき点は過去2回のQEの終了後(2010年3月と2011年6月)にNYの株価が10%以上の調整をしているところです。そのことの反省か、QE3の終了にあたってFRBはかなりの神経を使っており、もともとQE3終了の目安の一つであった失業率6.5%の目処なども途中で撤回しています。

■FRBに見る米国株調整の動き

ピークで毎月850億ドルの資産買い入れを行っていたFRBですが、5月では450億ドルまで減額してきています。マーケットではFRBのバランスシートの拡大が10月に終わるとの観測がありますが、実際には4,5月ぐらいから拡大ペースが鈍化してきている週もあり、これはおそらく現在FRBの保有している資産の償還等があるからと思われます。7月からの毎月の資産購入額を、更に100億ドル(約1兆円)減額し350億ドルにすることを6月のFOMCでも決定しており、10月を待たずにFRBのバランスシートの縮小が始まることも考えられ、上述の見方から言えば、それだけで米国株の調整が想定できます。

■早期利上げの可能性

しかし、現在のマーケットは、好調な経済指標や企業業績を根拠に米国株の更なる上昇を想定する見方も多いのも事実です。このことに関しては、先日モルガン・スタンレーが米経済の相対的な力強さを理由に米国債を売るべきだとの指摘をしているという報道がでており、米経済の成長加速から早期利上げの開始の可能性も指摘されています。例えばセントルイス連銀のブラード総裁が、従来の自身の利上げ時期見通しを、2015年第一四半期終盤としていたものを前倒しする可能性を述べています。これだと年末か年明け直ぐということになってしまいます。

つまり、ここからの株価上昇を米国経済の好調で説明する前に、早期利上げ観測が出やすくなっているということで、先般のイエレン議長の失言(QE終了後の半年程度での利上げもあり得るという発言)で利上げ時期が2015年の5月ぐらいとの見方にマーケットが動揺したことは記憶に新しいところですが、こういった発言はそれより手前のタイミングということになります。(大方の予想は15年の後半以降)

FOMCでの投票権はなくタカ派でもあるので言いたい放題のところはあるものの、モルガン・スタンレーの見方と重なる部分もあり、それだけに6月のFOMC(17・18日)でのイエレン議長の記者会見は注目されていましたが、1−3月の寒波の影響のマイナス成長もあり、利上げ時期に関してはマーケットに対して言質をとられない無難な会見にはなったものの、米国10年金利などは5月末を底に徐々に利回り水準が切り上がってきています。

■米国株が日本株に与える影響

これまでに述べてきたような早期利上げ観測からの米国株の調整があれば、日本株も調整せざる終えないかも知れません。米国金利が上昇→ドル高円安で日本株が上がるという考え方もありますが、現在日本株は株高と円安、株安と円高がリンクしている感じで、もしマーケットが米金利上昇を株価が調整する材料で捉えたときには、金利上昇での円安のバイアスと先物などからの売りでの日本株の調整にリンクする円高との綱引きになるので一概には言えないと思います。また、リーマンショック以降3回目となるFRBの資産規模拡大の減速が起きたときの米国株価の動向には特に注意が必要です。

最後に日本株に関しては、もし米国株の調整があった場合に一緒に調整したとしても、現在報道されているような、消費税の影響も軽微で今後のインフレ期待、NISA/GPIF資金の流入、日銀の追加緩和期待などから、ある程度の水準で下げ止まって反転していく強さはあるのではと思います。

【関連記事】

米中間選挙の年のアノマリーとは?〜米国株は大波乱の相場になる可能性〜

イエレン氏就任で、経済はどう動くのか?~vol.2 世界の株式市場への影響~

注目記事