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中堅・中小企業のためのSNS活用プロモーションの基礎解説 NHKのSNS運用術から学ぶ、企業SNSの効果を最大化させるポイントは?

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ソーシャルメディアの種類とその特徴


(1) ソーシャルメディアとは

従来のベーシックフォン、フィーチャーフォンの市場シェアが縮小し、PCとほぼ同等の機能を持つスマートフォンが台頭してきた昨今、Webサイトから情報を取得していくだけでなく、情報を発信したいというニーズが高まり、ソーシャルメディアが急速に普及した。今や、多様なソーシャルメディア媒体が誕生し、多くのユーザーが自らの利便性や嗜好性などから各々、選択し、活用している。

なんといっても、ソーシャルメディアの特徴は、「直接的」、「双方向性」である。従来のマスメディアは特定の個人に対してのみ情報を発信することができない。マスメディアの代表格であるテレビCMは膨大な数の視聴者に情報伝達することができる一方、全く興味・関心がない人にもプロモーションすることになり、非効率さがあることは否めない。

たとえば、ピンポイントで「当社のHPを閲覧し、一通りサイト内を回遊した結果、Facebookでいいね!を押した人」という特定のターゲットにプロモーションすることは従来のメディアでは不可能である。しかし、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を含むソーシャルメディアの世界では、「いいね!を押し、さらに該当商品の商品紹介を閲覧した人」までターゲットを絞り込み、広告を打ち込むことができる。

また、ソーシャルメディアでは受信者が情報を発信することができる。Facebookで興味を持った人が個人のブログで紹介すれば、おのずと自社の商品・サービスの情報が広まっていく。

ただし、留意点としては情報が単体として主体的に拡散していく一方、一度、間違った情報がWeb上に掲載された場合、その情報が拡散してしまうリスクがあることだ。そのため、企業がソーシャルメディアを活用する場合、明確な戦略と社内の発信体制・コンテンツの管理などが必須となる。

(2) ソーシャルメディアとしてのSNS

SNSはソーシャルメディアの1つである。ネット上の掲示板やブログは制限をかけなければ不特定多数に発信できるが、SNSはコミュニティを形成することを目的の1つとしたサービスであるため、「内輪での共有」が大きな意味を持つ。SNSを利用している個人は、自分がネットワークを構築したい、または既に現実世界で交流がある人とSNS上で繋がりを持つ傾向が強い。すなわち、ブログなどに比べて、よりユーザー間の連携が強いことが特徴である。

また、利用についてもSNSは個人利用を前提としているため、企業が活用する場合、膨大な個人とのネットワークを構築することができ、かつ、個人同士のような強いつながりを生み出し得る。そのため、企業が狙いたい的確なターゲット層とネットワークを構築できれば、非常に強い訴求力を持ったツールになるといえる。

ただし、SNSには多様なツールがあるため、それぞれのツールに強みがあるため、自社が何を訴えたいか、誰に売り込みたいのか、どのような行動を促したいのかによって使い分けが出来ないと効果的な施策にはならない。主要なSNSの活用法についてはのちほど説明する。

(3) 中堅・中小企業こそSNSを活用すべき

中小企業でもSNSの活用が進んできている。中小企業白書2016年版によると、ホームページを「営業力・販売力の強化」という目的で活用している一方で、SNSは「社内の情報活用の活性化」の目的で導入している企業が多いとされている。

この点については、非常に興味深く、確かに、SNSはグループ内部でのコミュニケーションツールとしては利便性が高く、LINEのグループメールでプロジェクト内部の情報のやり取りをしている企業は増えている印象を受ける。このようなグループウェアとしてのSNSも有効であるが、SNSの双方向性は外部にも活用できる。

ダイレクトにメッセージを発信し、閲覧者にビジュアルで訴えることができ、そして何より非常に廉価にプロモーションできるSNSは中堅・中小企業にこそ最適なツールであると考える。

たとえば、土屋鞄製造所のFacebookは参考になる。SNSの世界では成功事例として非常に有名だが、一言でいえば、会社の想いがこもった写真をうまく活用し、閲覧者に訴えている。単純に商品を紹介するのではなく、職人が真剣に作業している姿や販売員のオフの過ごし方など、商品としての鞄の後ろにある社員や会社の姿が手に取るように理解できる。

また、一見、全く関係ない風景などを載せていることもあるが、実は商品のコンセプトをメッセージとして含有している。たとえば、和を感じさせる商品には和室や日本の風景を切り取りアップし、ビジュアルで商品コンセプトを伝達し、商品イメージを明確化している。

こういった使い方は、SNSにおいては大きな資金を投入するよりも、目的を明確にすることが何よりも重要だということを教えてくれているといえるだろう。

よく商品紹介ばかりしている中小企業のSNSを見かけるが、それでは期待するような効果は出ない。もちろん、商品を売りたいという気持ちは十分に理解ができるが、SNSはコミュニケーションツールである。相手がどのように感じているのか、相手が何を言いたいのかを考え、コメント欄でメッセージのやり取りができることがSNSの強みである。

現実世界でも、こちらの希望を聞かずに、一方的に売り込みをかけてくる営業マンから商品を購入したいとは思わないだろう。コミュニケーションを取り、発信者側も情報を獲得する立場であるという意識を持つと、よりSNSを戦略的に活用できるようになると考える。

(4) SNSは導入前の検討で成否が決まる

SNSは、基本的に新規でのハードウェア・ソフトウェアの調達が不要であるため、SNSを開始することは非常に容易である。アカウントを取得し、写真とテキストを準備したうえで投稿すればすぐにサービス提供することはできる。しかし、いくらSNSであっても、何のコンセプトもなければ、情報は拡散されないし、誰も情報を受信しようとしない。SNSも企業活動である以上、しっかりとした戦略を練ったうえで進めていかなければならない。

その際重要になってくるのが、KGIとKPIである。KGIはKey Goal Indicatorの略で重要目標達成指標の意味になる。つまり、このSNSは何を実現したいのか、その実現は何をもってして成功とするのか、という基準がKGIになる。仮にKGIを「当社の認知度を高める」とした場合、そのSNS戦略はまず成功しない。なぜなら「認知度」が何を基準に向上したとするのかが不明確だからだ。

この場合、「ホームページのページビューを2倍にする」、「LINEの友達数を3倍にする」という具体的な基準を設定することが重要になり、これがKGIとなる。

一方で、KPIはKey Performance Indicatorの略で重要業績評価指標の意味になる。「この基準をクリアするとKGIに近づく」という指標がKPIになる。つまり、KGIを実現するためのマイルストーンがKPIになるため、KPIは複数設定されることが一般的である。

たとえば先ほどのページビューを2倍にするというKGIを達成するためのKPIとしては「Twitterでフォロー数10000人を達成し、Twitterからのサイト流入率を10%向上させる」といった指標がKPIになるだろう。

これまでのマスメディアによるプロモーション活動、たとえばテレビCMなどではどの程度の受信者に影響を与えたかの効果測定が容易ではなかったが、SNSではフォロワーの数などで定量的に計測することができる。そのメリットを生かし、可能な限り、数値的な目標を設定し、その実現に向けた戦略を立案していくことが重要になる。

もちろん、その実現可能性や明確性は十分に考慮すべきであることは言うまでもない。ソーシャルメディアの活用も経営戦略の一つであるため、しっかりとしたファクトに基づいた戦略を構築していくことに変わりはない。

(5) メジャーなSNSの特徴と活用方法

次に具体的なSNSについて簡単に見ていきたい。ここでは利用者数が多い4つのSNSをご紹介する。

・Twitter

情報をいち早く伝えたい場合はTwitterが非常に有効な手段である。たとえばイベントの開催・セールの告知など今まさに伝えたい情報がある場合は効果的なSNSである。「今日、12時からセール開始します!」というようなメッセージはTwitterが最も訴求力が強い。一方で、詳細な商品やサービス内容を伝えることにはあまり向いていないため、リアルタイム性が求められる時のみTwitterを使うということが導入時点では分かりやすいのかもしれない。

・Facebook

SNSプロモーションを戦略的に使うことを考えた場合、Facebookは欠かせない。Facebookの特徴は実名による信頼性である。ターゲットが明確になっており、投稿をシェアされた先の潜在顧客のカテゴリーも把握できる。また、数字管理という点でも使い勝手が良い。Facebookの指標ではまず、「いいね!」の数になるが、そこからさらに深堀できるリーチ数という指標がある。リーチ数にはいくつかのタイプがあるが、簡単に言えば「どのような人が投稿を見たか」が分析できる。

たとえば、ある投稿をファンがどのくらい見たのか、ファン以外がどのくらい見たのかを把握することができる機能もあり、またファンがシェアした投稿がどのくらいニュースフィード上で表示されたかも把握することができる。しかし、投稿数が少ないと認知度が上がらず、なかなかシェアされないため、強みが生かされない。誰が、どのタイミングで何を投稿するかなど、担当者や作業内容を明確にしたうえで取り組むと想定を超えるインパクトを生む可能性がある。

・LINE

LINEの持つ圧倒的な強みはプッシュ通知だ。メッセージが到着したことを、ある意味、強制的に受信者に知 らせることができるため、広く受信者の目に触れさせることができる。ただし、プッシュ通知のタイミングが悪い、内容が期待と違う、ということになるとブロックされてしまうこともあるため、対象者の「行動パターン」、「生活リズム」などを把握し、最も読まれやすい時間に配信することが必要になる。

たとえば、学生は夏休みの8月は平日でも比較的時間があるため午後2時に配信してもメッセージを閲覧する可能性が高い。しかし、社会人で8月の午後2時に配信されても仕事中でメッセージを読めないどころか、忙しい時間にメッセージが送られることに不快感を覚える人もいるだろう。先ほどお話ししたKGIやKPIを明確にし、最も効果のあるタイミングで配信すると広くプロモーションすることができる。

・Instagram

最後にご紹介するInstagramだが、ビジュアルに訴えるとインパクトがある商材があるときには非常に有効だ。興味を引く写真を投稿すると自然に拡散されていくため、広くプロモーションできることも魅力である。ただ、Instagramはテキストでの説明が少なく、Twitterのような双方向性も弱いため、相当インパクトのある写真でない限り、定期的に拡散させていくのは難しい。そこで、他のツールと連携させることが対応策になる。

たとえば、Facebookと連動させることで文字情報をFacebookで告知し、Instagramに促すというような方法が想定される。

(6) NHKのSNSの活用事例

SNSやWebというと先進的な企業が導入するものだというイメージを持っている方もいるかもしれない。確かに、アパレルやゲーム、IT業界のSNS活用は進んでいるが、意外に面白い取り組みをしているのがNHKだ。真面目で堅いイメージのあるNHKだが、若年層を取り込むべくSNS戦略を積極的に採用し、効果的な情報発信を行っている。

NHKが採用しているツールは自社アプリも含めれば、実に8つのツールを駆使している。例として、大河ドラマを見てみよう。現在、大河ドラマはFacebook、Twitter、Instagram、LINEでプロモーションされているが、それぞれの使い分けが緻密に計算されている。

Facebookの公式ページはとにかく情報量が多い。番組の裏話や出演者のインタビュー記事など興味を引き付ける番組のエントランスの役割を果たしている。またタイミングも秀逸でほとんどが番組の前日か後日に配信しており、当日にはあまり配信をしていない。これはリアルタイムな発信は他のSNSを使用するという使い分けをしているためであろう。

実際、Twitterは当日の情報発信が多い。「まもなく!」というキーワードを使用するのはTwitterの強みを熟知している証拠だと考える。

Instagramでは出演者の写真を多く掲載している。ここでは番組情報をほとんど提供していない。ただし、出演者の撮影風景やオフの写真を共有することは、番組に興味を持ち、Facebookから流入してきた閲覧者に対して、さらに番組に関心を持たせる効果があることは間違いない。

LINEでは、番組の公式アカウントを設置し、視聴者とのコミュニケーションを取っており、双方向性を十分に生かしている。視聴者が感想や意見を伝えることができ、番組と視聴者の間を取り持つ機能を持たせている。

NHKの事例は、それぞれのSNSの強みをうまく生かし活用しているといえる。このような活用を行うためには、どのSNSで何を、誰に伝え、どのように番組視聴につなげていくのかのプロセスが明確になっていなければできない。また、コンテンツや文体についてもドラマ、情報番組、コントなどで使い分けている点もターゲット目線でSNSを運用している証拠だろう。緻密な視聴者分析を行い、明確なビジョンやKPI、KGIが設定されているのだろうと推測することができる。

ただし、この戦略はそれほど難しいものではなく、実際、NHKのSNSも運用そのものは通常の使い方とほとんど変わらない。明確な目的を持って、なぜSNSを使っていくのかを考えればどの企業でも採用でき、効果的なデジタルマーケティングができるのである。

(7) SNS戦略は常に全社の方向性・戦略を意識するべき

このような取り組みを行うためには本来、複数のWeb担当者が在籍していることが望ましい。しかし、そのような企業は非常にまれである。大概は1人のマーケティング担当かIT担当が兼務していることが多い。

1人でSNSを運用していると、十分なコンテンツチェックが実施されないまま、投稿されてしまうケースがある。その結果として、不適切な言動や間違った内容などが、会社としての「総意」として流れてしまい、SNSが炎上し、謝罪に追い込まれることになる。実際、そのような事例は枚挙にいとまがない。

それを防ぐためにはまずは内容をダブルチェックする体制を作っておくことが重要になる。たとえば、マーケティング部がコンテンツを作り、システム部が投稿をするというような体制が考えられるだろう。

また、部門をまたぐことで全社の視点を加えることができる。特定の部署や担当者のみで運用していると無意識のうちに個人的な意見や部門としての見解に引っ張られてしまうことがある。それが会社として価値のあることであっても会社全体と異なる方向性では、情報の一貫性が維持できない。SNSは情報発信ツールの一つであるため、WebサイトやIR情報などと合致した内容であることは運営上の基本である。

最近は、SNSの運営そのものを外注する企業も少なくない。投稿のタイミング、情報分析、コンテンツの文書チェックなどを外部に委託することで社内の負担を軽減できる。また、プロが効果を測定することで、どのSNSに何を投稿することで最もインパクトがあるかの提案を受けることができる。これは企業がSNSを活用するうえで非常に有意義である一方、当然ながら費用が発生する。そのコストバランスについても検討する必要があるだろう。

しかし、外注するかしないかに関わらず、明確な戦略とビジョンは企業の責任で検討しなければならない。SNSはコミュニケーションをベースに情報伝達をするというマスメディアにはない新しいソリューションである。このようなデジタルを活用した消費者とのコミュニケーションスタイルは今後も大きく伸長するだろう。しかし、どれだけデジタル化が進んでも、戦略や企画はヒトが担当する領域であることは変わらない。

SNSは、新しい顧客獲得、サービスの発見につながる可能性を持つ大きな武器になる可能性を秘めている。そのメリットを最大限発揮するためにはまず、社内の体制の確立や明確なビジョン・戦略策定など事前の準備を入念に行うことが不可欠である。

(2017年2月14日「コンサルティングレポート | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング」より転載)