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「もんじゅ」改革の落とし所 〜 JAEAから切り離し、新『再処理機構』に移管せよ!

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昨年11月13日、原子力規制委員会は高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の運営を巡り、保守管理上のミスが続く日本原子力研究開発機構(JAEA)を"能力不足"だとして、別の運営主体を探すよう文部科学省に勧告を行った。

加えて、半年以内にJAEAとは別の運営主体を決定できなければ「もんじゅ」を根本的に見直すべきと、原子力規制委は文科省に注文を付けた。

<勧告の概要>
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(出所:文部科学省「高速増殖炉「もんじゅ」の経緯と現状について」(2015.12.28)

高速炉を扱うことができる専門家集団は、今現在「もんじゅ」の現場にいる職員以外にはいない。そんな状況ではあるが、「もんじゅ」は国のエネルギー基本計画にしっかりとした位置付けがなされていながらにして、原子力規制委は突如として組織改革を求めてきたわけだ。

去る3月15日の参院予算委員会で林幹雄経済産業相は、原子力発電所から出る使用済燃料の再処理事業などの質疑で答弁ができず、審議が何度も中断した。質問した野党議員から「勉強不足という自覚はあるか」と質されると、林氏は「ございます」と認めた。自民党幹部からは「たるんでいる」との指摘が出たようだが、大臣が自ら所掌している政策分野に精通していないことはよくある話。

今国会では、この再処理事業に係る体制を見直すための「再処理等拠出金法案」が提出されており、政府は今国会中の成立を目指している。担当閣僚である経産相がこんな体たらくでは、国民からの信頼が得られるはずもない。

もっとも、首都東京にいる大臣が誰であろうと、その資質がどうであろうと、そこから遠く離れた各々の原子力プラントの現場では、それとは何の関係もなく物事が動いている。「もんじゅ」の今後を考えていくに当たり、これまでの経緯をよくよく考えると、「もんじゅ」の現場に問題が全くなかったとは言えないが、それを差し引いても、国会・監督官庁・マスコミなど現場とかけ離れた場所にいる人たちに翻弄されてきたと強く思う。

特にマスコミ報道は、一方的に過ぎてきた嫌いがある。「もんじゅ」が躓いた発端は、1995年12月のナトリウム漏洩事故だが、これは原子炉の安全性には直接的には関係ない設備での事故。当時、これをナトリウム漏れ現場の映像付きで、それをあたかも大事故であるかの如く針小棒大に論じる"報道合戦"が繰り返された。

以来、「もんじゅ」は一方的に悪者扱いされ続けている。これは偏向報道である。現場に行けばわかるが、決して「もんじゅ」はマスコミが報じるような杜撰な組織ではない。そこには、高速炉に関する成否の経験・知見が積み重なっている。「もんじゅ」が担う事業の頭脳も技術も、東京都心の国会議事堂や首相官邸、霞が関官庁街ではなく、敦賀にある「もんじゅ」プラントの現場に集積している。

私は、行政現場の現実的な視点からも、政府中枢の顔ぶれがどうであろうとも、政治発言やマスコミ報道に左右されないようなプラント現場の独立性を高める事業遂行体制が最善と確信する。政府が敷くべきルールとは、その現場の技術者に安全確保やそれを前提とした事業の遂行に関して、高い責任感と実際の責任を持たせるような制度を整備していくことある。現場主導のルールにしていかないと、いつまで経っても「もんじゅ」は本来行うべき実証事業の再開とその終結に向けて進んでいきようがない。

そうした中、日本がこれまで長年にわたって築いてきた高速増殖炉に係る技術は、突如として大きな危機に瀕してしまった。原子力規制委による先の勧告を受けた文科省では、『「もんじゅ」の在り方に関する検討会』を昨年末に設置し、今月中旬までで既に5回にわたり検討を重ねてきている。現在までのところ、妙案は出てきていないようだ。

原子力規制委が問うているのは、「もんじゅ」の存続の可否ではなく、「もんじゅ」の運営組織の在り方であり、要するに組織改革案を出せと言っている。何らかの新たな組織を提案すべきとなるが、全く新しい組織を一から創るというのは難しい。今の運営主体はJAEAであるが、そこがダメ出しされているのだ。

そうなると、JAEA以外の組織であって「もんじゅ」に親和性の高い組織はどこか、となる。そこで提案したいのが、今国会で提出されている再処理等拠出金法案によって新設される認可法人「使用済燃料再処理機構」に、「もんじゅ」を移管してはどうか、ということだ。この新機構は、停滞している再処理事業に係る体制を改革するためのものだ。

再処理も「もんじゅ」も、それぞれ、国が主導する核燃料サイクル政策において、個別に重要な役割を担うもの。今回の原子力規制委の勧告が、再処理に係る新機構の設立のための法律改正案の国会提出と時を同じにしていることは、何かの縁かもしれない。

そして、「もんじゅ」を新機構に移管するとともに、今後は予算を長期的にダラダラと付け続けるのではなく、例えば「予算は従来の倍にするが、必ず5年で100%出力を達成して基本データを取る」というような即効性のある予算配分を行い、短期で目標達成を図るよう一定の制約を付すべきだ。

もんじゅの建設費は5886億円で、運転維持費が1989〜2015年で4339億円に上る。運転維持費は年額約200億円。短期で目標達成することが、コスト削減に有効であるとは明らかだ。JAEAをただ叩き続ければ良いわけはない。

「もんじゅ」に反省点が多いのは周知のことだが、今まで国が長年にわたって、振興する側としても、規制する側としても、直接関与してきた国家事業であることを再認識する必要がある。この点でも、一番問われるべきは国の行政責任であり、それを果たしていくためにも、「もんじゅ」をJAEAから切り離して新機構に移管し、核燃料サイクル政策を包括的に進めていく新体制を敷くべきだ。

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