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"再エネ大国"ドイツと、『原子力大国』フランスの比較(その1) 〜 ドイツの電気料金は、フランスの2倍

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世界では今、太陽光や風力などの「再生可能エネルギー」の導入が急速に進められている。世界で最も先行しているのは"再エネ大国"ドイツだ。

日本の再エネ政策は、ドイツを参考にしつつ進められてきた。ドイツの再エネ政策が素晴らしいものであると日本で受け止められてきたからに他ならない。

しかし、実際はそうでもない。再エネ導入に伴う電気料金の上昇は、ドイツのエネルギー政策上の大問題の一つになっている。

私は昨年3月にドイツを訪問し、連邦政府5ヶ所・州政府2ヶ所・産業団体・消費者団体など計10ヶ所でヒアリング調査を行った。
  ・報告書全文:http://iigssp.org/activity/report_150321_01.pdf
  ・報告書要約:http://iigssp.org/activity/report_150321_02.pdf

この報告書にも書いたが、ドイツのエネルギー政策は、多くの日本人が信じ込んでいるようなバラ色のものでは決してないということを改めて知った。

ドイツの隣国フランスは、世界有数の『原子力大国』。原子力と再エネは、CO2を排出しないクリーンエネルギーであるという点で共通している。

私は上記のドイツ出張の後、フランスから見たドイツの再エネ政策の成否について、フランス在住の専門家に見解を伺ってみたいと思うようになった。

そして先だって、フランスで同国内の電気・ガス料金比較サービスを手掛けるSelectra社(http://selectra.jp/)の創業者であるXavier Pinon氏と懇談する機会を得た。

その際、次の2点で意見が一致した。

(1)ドイツは、2000年に"脱原子力"を宣言し、2022年までに完了することを決めている。そうした取組みを推進する中で、ドイツは"環境大国"としての国際的な地位・名声を高めてきた。近年、ドイツ経済は好調であり、欧州を牽引し続けている。ドイツのエネルギー政策に世界からの注目が集まる理由はここにある。

(2)ところが、実態はそれほど単純なものではない。ドイツは経済的には欧州のリーダー格になっているが、原子力から再エネへのエネルギー転換は、その開始時点から一貫して企業の競争力低下を招いている。さらに、国が原子力を放棄し、再エネの利用を促進する方針を打ち出すことは、必ずしも"環境大国"へと直結するものではない。ドイツ電力システムの現状は、その理想からは程遠い。

以下では、Selectra社の2人と私の共通認識として、フランスとドイツの電力コスト差に関して述べていきたい。

1)ドイツの電気料金は、フランスの2倍

フランスもドイツも、近年の電気料金推移は同じ傾向にある(資料1、資料2)。両国とも、電気料金は徐々に上昇しつつある。

<資料1:家庭用(年間消費量5〜15MWh)の電気料金推移>
2016-07-06-1467814995-8085284-2016070623.21.54.png
出所:Eurostat

<資料2:産業用(年間消費量500〜2000MWh)の電気料金推移>
2016-07-06-1467815032-6612474-2016070623.22.09.png
出所:Eurostat

ドイツの電気料金は、家庭用・産業用ともに、フランスの約2倍の水準。2015年で見ると、①ドイツの家庭用電気料金は、1kWh当たり0.28ユーロであるのに対し、フランスでは同0.15ユーロ、②ドイツの産業用電気料金は、1kWh当たり0.20ユーロであるのに対し、フランスでは同0.11ユーロ。

再エネの普及を促進するため、ドイツやフランスも含めた多くの国では、再エネの固定価格買取制度(FIT)に基づく「再エネ賦課金」を消費者から徴収している。

エネルギーを大量に消費する事業者の競争力を削がないために、ドイツ企業には再エネ賦課金の減免措置があるが、それでも再エネ賦課金を含む高い電気料金はドイツ企業の経営を圧迫している。

フランス企業は、そうではない。他の欧州諸国と比較して電気料金が低いことがフランス産業界の強みとなっている。これは、フランス産業界における生産コストを下げ、投資能力を高めている。

産業用の電力消費量は、フランスの総電力消費量の16%を占めており、家庭用、交通用に次出3番目。自動車(ルノー、PSA)、建設(Lafarge-Holcim, ブイグ)、航空(エアバス、タレス、スネクマ)、鉄鋼(アルセロールミタル)といった様々な業種で示、フランス企業は強い競争力を備えている。

エネルギー多消費型産業においては特に、電気料金が経営を左右する大きな要素の一つ。安い電気を調達できるということが企業の国際競争力の維持・向上にとって重要であることは間違いない。

2)ドイツとフランスの電気料金の大差の理由は何か?

ドイツの電気料金が高いことの大きな理由は、再エネ賦課金が相当高いことで概ね説明される。

ドイツの再エネ賦課金は、例えば0.0205ユーロ/kWh(2010年)から0.06354ユーロ/kWh(2016年)に上昇している。これは、1kWh当たりの小売価格の2割以上を占めていることになる。

フランス監査院は、2013年のレポートで、原子力の発電コストは49.5ユーロ/MWhで、あらゆる発電形態の中で最安値の部類に属すると推定。水力の発電コストは15〜20ユーロ/MWhと、原子力よりも安いとされている。

その他では、陸上風力の発電コストは82ユーロ/MWh、洋上風力は同220 ユーロ/MWh以上、化石燃料は同70〜100ユーロ/MWh、太陽光発電は同230〜370 ユーロ/MWhとされている。
 
フランスでは、原子力と水力で総発電電力量の87%以上(2015年)を占めている。

ドイツとフランスの電気料金に大差があるのは、こうした事情による。