六ヶ所村・核燃料再処理施設 〜 原子力規制委員会と日本原燃のどちらが信用できるのか?

5月16日付け東奥日報では、同15日に行われた原子力規制委員会の様子が報じられている。この審査会合は、日本原燃・六ケ所再処理工場に対するもので、再処理施設などへの「火山の影響評価」が議題。

今月16日付け東奥日報では、同15日に行われた原子力規制委員会(第56回核燃料施設等の新規制基準適合性に係る審査会合)の様子が報じられている。

この審査会合は、日本原燃・六ケ所再処理工場(青森県六ケ所村)に対するもので、再処理施設などへの「火山の影響評価」が議題。ここでの「火山」とは、噴火時に火砕流が工場敷地近くに到達する恐れのある十和田と八甲田の二つ。

記事によると、原燃と規制委の主張の概要はそれぞれ次のようなもの。

◎原燃担当者:十和田火山は「大規模噴火が起きるとしても数万年先」、八甲田火山は「長期的には活動が終息に向かっている」との見方を示した。

◎規制委の石渡明委員:「長期的には一定の割合でマグマが噴いているように見える。研究者の(見解の)引用ならいいが、根拠があまりないなら言わない方がいい」と指摘。

結局、規制委(とその事務局である原子力規制庁)は、原燃の判断根拠が不十分だとして、地殻変動などに関するデータの追加提出を求めた。

この審査会合の模様は、規制委のホームページで公開されている。その動画を見たところ、石渡委員は「研究者が言っていることを引用するのだったら良いですけれど、根拠がないのであれば、こういうことは言わない方がいい」と発言している。

これは一見ごもっともな発言と思われる。しかし本件を詳細に追っている私にしてみると、これは甚だ奇妙な話にしか聞こえない。

今月18日付け拙稿「「敦賀」と「東通」の次の生け贄は「志賀」か? 〜 "活断層である可能性を否定できない"という悪魔の囁き・・・」で述べたことだが、今月13日、北陸電力志賀原子力発電所の敷地内にある断層について、石渡明委員は「後期更新世(約12万〜13万年前)以降に明らかにずれ動いたような証拠は有識者会合としては確認できなかった」としながらも、"活断層"の存在を認定している。(注:有識者会合は、規制委・規制庁が選任した学者・有識者で構成される。)

また、別な寄稿で書いたことだが、今年3月25日、日本原子力発電敦賀原発の敷地内破砕帯について、規制委・規制庁は、具体的な根拠を一切示さずに「K断層は、D--1破砕帯等、原子炉建屋直下を通過する破砕帯のいずれかと一連の構造である可能性が否定できない」との結論を出した。その根拠を問われた石渡委員は、「細かな点については今それを言うのは差し控えたい」と述べている。

これらのことから察するに、"根拠があろうがなかろうが、研究者の言うことは信用するが、事業者の言うことは信用しない"というのが規制委・規制庁の方針なのではないだろうか?有識者会合のメンバーである"・・教授"など、権威のある人の意見は正しいが、事業者の意見が正しくない、ということなのだろうか?

ところが、そもそも地震・津波や火山噴火に係る審査については、事業者が調査したデータを基に議論が行われている。はなっから事業者を信用しないのであれば、地震・津波や火山噴火に関するデータは、規制委・規制庁が準備すべきではないのか?

規制委の組織理念にある「何ものにもとらわれず、科学的・技術的な見地から、 独立して意思決定を行う」というを、規制委・規制庁自身が完全に履き違えていると思うのは、筆者だけではないだろう。

規制する側(規制委・規制庁)と規制される側(事業者)が対等な立場で、真に科学的・技術的な議論を交わし合うことが原子力に係る安全性の向上に資するということを、規制委・規制庁は再認識すべきである。そして、それを最も理解しなければならないは、規制委の人事権を握っている安倍首相自身である。

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