「作新アカデミア・ラボ」の使命 ~越える、つなぐ、つくる~

アカデミア・ラボにより、越えて、つながって行くのは、(作新)学院内だけではありません。

年の瀬も押し詰まり、作新学院では建設中の「アカデミア・ラボ」の足場がはずされ、その全容がようやく見えるようになりました。滑らかなガラスの曲線とリズミカルなルーバーが描く軽やかな躯体が、天空と一体になって伸びやかに羽を広げている姿は壮観で、心に風が吹き渡る気がします。

4月18日の起工式から11カ月余り、様々なアクシデントや度重なる変更にもいつも柔軟に対応して下さり、暑い日も寒い日も風の日も雨の日も黙々と誠実に作業を続けて下さった工事関係者の皆さんのお蔭で、ここまで来ることができました。

本当にありがとうございました。

自分自身、工事現場にこれほど足を運んだのは初めてでしたが、一つのものを多くの人たちと力を合わせて作り上げる苦労や難しさ、それと表裏一体の楽しさや遣り甲斐を身をもって実感させていただく日々でした。日を追うごとに、このプロジェクトに関わっている一人ひとりの気持ちが少しずつ寄り添いつながりあって、少しでも良いものを作りたい、納得の行くものを完成させたいという思いはやがて熱い塊となり、皆の心の中にふつふつと燃えたぎっていくのを感じました。

年明けには完成に向け工事もラストスパートを迎え、3月1日に高校を皮切りにスタートする各設置校の卒業式では、新たな正門となるラボ1階中央の「アカデミア・ゲート(アカ門)」をすべての卒業生が通って、学院から巣立って行ってもらいたいと思っています。

アカデミア・ラボがどういう施設であるか、これまで何度かご紹介してきましたが、その使命は、"超える"、"つなぐ"、"変える"という3つのキーワードに集約されると思います。

日本でも有数の規模と多様性を持つ作新学院には、幼稚園から大学まで様々な年代の子どもたちが集い、多岐にわたる分野で能力や技術、専門性を有した人材が共存しています。けれど残念ながら、そうした子どもたちや教職員が各々の所属を越えて語り合ったり、共同で作業を行ったりする機会はそう多くはありません。

アカデミア・ラボでは社会に存在する様々な問題に対して、作新に関わるすべての人たちが、年代や所属、分野や専門を"越えて"自由な発想やアイディアをぶつけ合い、語り合い、知恵と力を出し合うことで"つながり"、問題解決に向けて行動し世の中を"変えて"行く場を作りたいと構想しています。

そのため、できるだけ室内に固定された壁を作らず、その時そのシーンに応じてパーテーションで空間を仕切ることができるように造作しています。パーテーションや奥の壁面はホワイトボードになっているので、そこにそのまま字や図を描いたり、パワーポイントを映写したりすることもできます。

設置される椅子や机もキャスター付きを多用し、席の位置替えが容易にできるようになっています。机の形も勾玉型や台形などディスカッションしやすくコミュニケーションがとりやすいよう工夫されています。

アカデミア・ラボにより、越えて、つながって行くのは、学院内だけではありません。

これまで隔絶されてしまいがちだった学校と社会、あるいは学校と地域の壁を越えて、学外から講師やアドバイザーを招き入れ特別講義をしていただいたり、地元企業と学院でコラボ商品を開発したりすることによってつながることで、ともに社会や地域コミュニティーを変化させ創造して行きたいと思っています。

さらにはIT技術を駆使することで、学校と世界までもが言語や宗教、環境の違い、あるいは地理的・精神的距離を越えて、互いにつながることが可能です。アカデミア・ラボではそのために、高速大容量のネット環境を全館で整備し、最新のAV機器による語学研修ラボも設置されます。

世界と作新学院がつながった結果として、様々なアイディアや発想が国境を越えて生まれ、協調して行動を起こすきっかけとなり、それがやがて分断が進み紛争が続く世界情勢を変えて行くことになれば本望です。

今月21日に中央教育審議会が、小中高校の学習指導要領の改定を文部科学大臣に答申しました。グローバル化や人工知能(AI)の台頭など社会が大きく変わる中、答申の柱には、「何を学ぶか」だけでなく「どのように学ぶか」を重視し、自ら深く学ぶ力を育成することが掲げられました。問題解決や対話を通じて主体的に学ぶアクティブ・ラーニングやプログラミング教育、新科目「公共」での主権者教育なども導入されるとのことです。

本答申が示した「自ら深く学ぶ」という新たな教育像は、作新学院が130年前から「自学自習」を掲げ営々と実践してきた教育方針そのものであり、また導入される授業内容もアカデミア・ラボで実施予定のプログラムと重なるものが多く、それ自体はとても有り難いことであると思っています。

ただ、新指導要領の実施は小学校で20年度、中学校で21年度、高校は22年度から... 日進月歩で社会が激変する中、お国のスピード感には正直、慨嘆を禁じえません。

世の中の変化に対応した新たな人材を育成し輩出すること、それこそが「作新」の校名にこめられた教育的使命である以上、新たな学習指導要領に掲げられている学びの多くを、私たち作新学院は来年度からアカデミア・ラボで先行実施して参ります。新たな試みで右往左往することばかりとは思いますが、皆様からご指導、ご支援をいただきながら少しずつ前進して行ければ幸いです。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます!

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