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アカデミア・ラボ通信 ~使命は「未来開拓力」育成

2017年08月02日 15時14分 JST

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今春からスタートしているアカデミア・ラボで開講した「未来デザイン講座」については前回のブログでご紹介しましたが、今回はこの講座の中で実験的に行っている「ラボ・ゼミ」についてお話します。

「ラボ・ゼミ」は、文字通りゼミ形式で行う少人数・双方向型の演習。

教員の講義を一方的に聞く講義に対し、テーマを設定しそれについて少人数で文献を講読、討論、報告などを行うのがゼミです。

ラボ・ゼミでは、まず私からテーマについて概要をレクチャーし参考文献を一緒に講読した後、生徒各々が自分で調査研究をおこない、その結果を発表して質疑応答を行います。

またそうした過程で生まれる新たな小テーマについて、さらにディスカッションを行い、対立軸が生まれた場合はディベートも行います。

さて、そのゼミの内容について話を始める前に、私がなぜ「未来デザイン講座」を開講したのか、そもそもなぜ「アカデミア・ラボ」といった新たな教育機関をつくるに至ったのかについて、少しお話ししたいと思います。

「未来デザイン講座」を受講する生徒たちに、冒頭で私が示している3つの教育指針があります。

1. 常識の枠にとらわれるな。

発想の翼をできるだけ自由に羽ばたかせることが一番大事。

2. "正解"を大人に教えてもらおうとするな。

答えは君の中にしかない。徹底的に調べ考え、自分自身で導き出せ。

3. 沈黙は存在しないも同然。

論理的に発言し、主体的に行動せよ。

一般的にいまどきの中高生は、一時代前の日本人以上に人前で自分の考えを口にしません。ネット社会の影響が大きいのかもしれませんが、日本人特有の無言の同調圧力は、以前にも増して強くなっている気がします。

中でも一番私が気になるのは、「あなたはどう思いますか?あなた自身の考えはどうですか?」と質問すると、まず答えが返ってこないという事実。授業で習ったことや社会常識についての質問であればスラスラ答えられる優等生も、自分の考えや感想を述べるとなると一様に押し黙ってしまいます。

きっと頭や心の中では色々思っていることあるのでしょうが、皆それを口にしようとしない。自分の考えや思いではなく、学校であるいは世の中で「正解」とされる答えを探そうと、私の顔色や周囲の空気を必死になって読んでしまう子どもたちがとても多いのです。

あらかじめ決められた"正解"を答えるのではなく、自分なりの"考え"や自分自身の"意見"を論理的に発表するというトレーニングが、現在の日本の教育では完全に欠落していることを痛感します。

高度な単語や公式、化学式を諳(そら)んじ、世界情勢についても大人顔負けの解説ができる子どもたちが、自分自身のオリジナルな価値観や幸福論についてコメントを求められると一言も発せられなくなってしまう。

自己と対峙し、人間存在や人生の意味について深く掘り下げるような機会や時間的・精神的余裕が、ネット社会となり圧倒的に不足しているように思われます。

残念ながら、従来の学校教育は、こうした状況に対応し切れていない。

もともと論理的に自己主張したり、独創的な発想や創造をすることが不得手だった国民性が、ネットによる同調圧力により更に強化されている。そんな状況の中、日本の子どもたちはグローバル化やAI(人工知能)がさらに進展する近未来を、本当に生き抜いていけるのか。

従来型の学校教育だけを受けて大人になった日本の子どもたちは、未曽有の財政赤字の中で超・少子高齢化を迎える日本の未来や、地球温暖化や難民問題、テロやポピュリズムといった難題に立ち向かう世界の未来を、本当に切り拓いて行けるのか。

近未来に待ち受ける数々の課題を解決し、困難を乗り越えて、自分たちの未来を自分たちで切り拓いて行くための力、「未来開拓力」を養成する新たな教育機関を作らなければ。

そんな切迫した思いから誕生したのが、「アカデミア・ラボ」でした。

未来を拓くには、主に次の3つのステップと力が必要です。

まずは、学習した知識をツールとして社会や世界について考察することで、課題を見つけ出す力(課題設定力)。

さらにそれぞれの課題について思考をめぐらし、自分なりの発想力を持って各課題の解決策を導き出す力(課題解決力)。

さらに、その解決策を実行に移し、実現して行く力(行動力、実行力、実現力)。

ただ、実現のためには他者とのコミュニケーションが欠かせません(コミュニケーション力)。自分の考えや発想を論理的あるいは可視化して他者に伝える力や、多くの人たちから理解され協力してもらえる力(統率力、リーダーシップ)がなければ、どんなに的を射た解決策も、"絵に描いた餅"で終わってしまいます。

アカデミア・ラボでは、こうした未来を切り拓いてゆくために必要な様々な力=「未来開拓力」を身につけるため、ディスカッションやプレゼンテーションをはじめとしたアクティブ・ラーニングを中心に、各分野の専門家を外部講師に迎え、社会に開かれた学びを実践していきます。

さて、話をゼミに戻しますと、現在のゼミ生は13名。

3名の帰国子女を含む彼らは、既に未来開拓力を一定以上備えた精鋭揃い。全員高校1年生から選抜されています。

テーマは、ポピュリズムが台頭する世界情勢や、強行採決などが横行する日本の政治状況を勘案して、「民主主義を健全に機能させるための方策」について議論しています。

ゼミを行う準備として文献を調べ始めると、ポピュリズムや"多数の専制"といった現代的な政治課題が、実は民主主義が宿命として持ち合わせている影の部分であることがわかります。

ゼミではまず、トランプ大統領を生んだ米国の大統領選や、欧州でのポピュリズム政党の躍進といった新聞記事を全員で読み、現在の世界情勢についてゼミ生の共通認識を構築しました。

その上で、フランスの政治思想家・アレクシ・ド・トクヴィルの『アメリカのデモクラシー』に関する論考を読んで、少数の良識派の意見が多数の自己中心的な意見によって蹂躙・封殺されてしまう民主主義のウイークポイントについて認識を深めました。

その際、こうした民主主義の暗部を巧妙に利用してナチ政権を生み、「大統領による非常事態宣言」という謂わばワイマール憲法の"バグ"をついて憲法自体を形骸化させていったヒトラーについても言及し、現在進められている日本での憲法改正についても、緊急事態条項のあり方については十分な議論が必要であることを説明しました。

そうした私からのレクチャーと参考資料の読み合わせを受けて、「民主主義を正しく機能させるために」生徒たちから出された意見についてですが、今回のブログもだいぶ長くなってしまったので、次回に必ず紹介させていただきます。

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