"サクラ咲く" ~別れが気づかせてくれたこと

生きとし生けるものすべてが、みんなそれぞれに歯を食いしばり精一杯がんばって、今この瞬間を生きているのでしょう。

満開の桜の下、新年度がスタートしました。

愛犬タンタンのフォトフレームと、彼が首にしていたストラップを携えて外出する―そんな生活にも、もう随分と慣れてきました。

3・11の訃報には、沢山のお見舞いとお悔み、そして励ましのコメントをありがとうございました。アクセスは遂に1万件を超え、あらためてタンタンの犬徳(?)と親孝行ぶりに感心させられた次第です。

タンタンとの別れは、私に多くの"気づき"をもたらしてくれました。

そして、その気づきのお蔭で、前よりも少しだけ心を柔らかく保てるようになった気がします。

ほころび始めた花々やさんざめく鳥たち、見慣れた街並みや車窓からの風景、日頃職場で顔をあわせている人々、そしていつもそばにいてくれる家族。

そうした何気ない人々や物事が、本当はどれだけ愛おしく、慈しむべき存在であったのか。

最も愛するタンタンを突然に失って、やっと気づけた気がします。

どうでもいいことに腹を立てたり、どうでもいいことに意地を張ったりしてる間に、何より大切なものを失ってしまった自分。

目先の意地やプライドや立場や義理など、どうでも良いことにかかずりあっている内に、一番大切なものを失ってしまった自分。

次の瞬間、すべては消えてしまうかもしれないとわかっていたなら、先のことなど思い煩わず、もっとタンタンと一緒にいてあげればよかった。

もっと笑顔を見せて、もっとキスをして、もっと抱きしめてあげればよかった。

でももう今となっては、何をどれだけ後悔しても、あの幸せな時間は戻ってこない。

そうであるなら、今、自分の目の前にあるすべてを精一杯愛(いつく)しみ、今こうしてあることに心から感謝して、一瞬一瞬を大切に生きよう。

素直にそう思えるようになりました。

すると不思議なことに、周囲の様々なことがサラサラと水が流れるように、順調にはかどるようになりました。

創立から131年目の作新学院は、昨年度より200名増の1,549名の新入生を迎え、新たな歴史の一歩を踏み出させて頂くこととなりました。

大学進学も、東工大3名、東北大3名の現役合格を筆頭に、東京芸大、筑波大2名、横浜国大2名など国公立大学に90名が合格。また、医大医学部をはじめ各難関私立大学にも多数合格することができました。

そして、この夏に迫ったリオ五輪。その選考会を兼ねた昨日の日本水泳選手権で、萩野公介選手と清水咲子選手という作新高校卒の二人がともに出場を決めてくれました。

肘の骨折により長期間泳げなかった萩野選手は、天が与えてくれた試練から見事に復活。400mと200m個人メドレー、200m自由型の3種目出場を目指していますが、オリンピックでは個人メドレーでの2つの金メダルと、自由形でのメダルを目標としています。

「地獄を見た君ならばこその極限まで追い込んだ泳ぎ。心から期待しています!」

と萩野選手にメールしたところ、いつもながらのクイックレスポンスで、

「ありがとうございます。期待に応えられるような泳ぎをしたいと思います。」

と冷静で頼もしい答えが返ってきました。

作新の一人ひとりが、みんな自分なりに歯を食いしばり精一杯がんばって今を生きているように、この地球上で様々な環境に置かれた人々、生きとし生けるものすべてが、みんなそれぞれに歯を食いしばり精一杯がんばって、今この瞬間を生きているのでしょう。

そして、そんな一人ひとりの一瞬一瞬が、つながることで社会が形作られて行き、積み重なることで歴史が築かれて行きます。

形ある者も、形を捨て去った者も、すべてが存在し作用しあって、この世を動かしているという真実。

すべては、"気づき"。

慈しむべきものの存在にどれだけ気付けたか―それが、その人の人生を何よりも豊かにし、平穏にし、そして強くしてくれる。

前よりも、ずっと傍にいてくれるタンタンの存在を確かに感じながら、いま心からそう思います。

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