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所属企業の「労働のあり方」を強制承認させる披露宴

2013年10月23日 23時11分 JST | 更新 2013年12月23日 19時12分 JST

最近は少し減ってきましたが、毎年、友人や知人、社員の結婚式に呼んでいただきます。

結婚式は、本当にネガティブなものがひとつもない、素晴らしい場だと思います。誰もが笑顔と、時に感動の涙があり、家庭を築かれている二人を祝福する。

私も、(若すぎますが)主賓の挨拶や、友人代表などでスピーチさせていただくことがあります。だいたいが新郎側の立場ですので新婦と新婦側の来賓者と、僕が友人と過ごした時期を知らない新郎の関係者に向けて、エピソードを交えてお話します。

緊張もしますが、後になって親族の方々や、初めてお会いした方々から「よかったよ!」と言われると、一生懸命内容を考えて本当によかったな、と安堵します。

そんななか、時折出くわすスピーチがあります。もちろん、まったく悪気がなく、「ネタ」的な要素も過分に含んでいるのは理解していますが、

新郎の所属企業の「労働のあり方」を新婦に強制承認させるようなスピーチです。

○○君は××という職責を担い、関係企業の評判も良く、今後も引っ張っていってもらいたい、云々。ここらへんはかなりよく聞く部分なのですが、

「当社は、深夜遅くなることや、明け方まで頑張ることもあり、その部分は新婦に理解をしていただき、支えていただきたい」

というものです。繰り返しになりますが、悪気はまったくないと思います。結婚式ですから。

しかし、だいたいが上司や社長だと思うのですが、主賓・来賓として新郎がお願いをした方です。しかも、ハレの日です。誰もがそこで話されたことに、挙手をして意見を言ったり、ましてや新婦がスピーチ内容に、高砂で眉をひそめることなどできません。

にもかかわらず、深夜まで働く。朝まで働く。お付き合いもあり遅くなることもある。それを理解して、支えてほしい、と呼びかけるわけです。

多くの場合、企業の同僚などは笑っています(ネタだからなのかどうかは知りようもありません)。

このような場で、労働環境の悪さ/厳しさに対して、新婦をはじめご家族やご親族の方々は反対も否定もできません。つまり、強制承認という選択肢しかないわけです。

これは新郎側だけではなく、新婦側でも起こりえるのかもしれませんが僕はいまのところ聞いた事がありません。

ネタであれ、新郎がそのような労働環境を心から受入れ、楽しんでいる可能性も否定できません。価値観はそれぞれです。ただ、結婚式という場において、"そのような"スピーチを聴くと、僕は残念な気持ちになりますし、新郎新婦の先行きを、おせっかいながら案じてしまうのです。

ちなみに、この手のスピーチは当然新郎が「貴重」な人材である流れがあります。しかし、その貴重な人材が、不本意に深夜、明け方まで業務をしながら疲弊し、家族と過ごす時間もなかなか取れない(しかも家族として強制承認させられている)とき、その貴重な人材にはいつでも転職されてしまうリスクがある、ということです。

そのようなスピーチを時折聴くと、もう何をどう突っ込んでいいのかわからないまま、唖然としています。

(※この記事は、2013年10月23日の「若者と社会をつなぐ支援NPO/ 育て上げネット理事長工藤啓のBlog」から転載しました)