パパ、スーパー戦隊は仕事なの?「スーパー戦隊と資金調達」

「スーパー戦隊と資金調達」を考えるにあたり、非営利組織の資金調達に詳しい「一般財団法人ジャパンギビング」代表理事の佐藤大吾氏にお話を伺ってきました。

将来、「動物戦隊ジュウオウジャー」になるため、日々、修行に励む息子(4歳)からの質問、「パパ、ジュウオウジャーはお仕事なの?」に応えるべく、その公益性について専門家に意見を聞きました。

そのなかで「受益者を選ばない」などの観点から公共性が認められました。そして、突如現れた敵に対峙しながら迅速に法人格取得をする"緊急性"の視点から「一般社団法人」化が示唆されました。

しかしながら、スーパー戦隊の活動が法人化されたとしても、すぐに仕事として成立するわけではありません。 "仕事としてのスーパー戦隊"にするためには、給与はもちろんのこと、事業費や管理費を捻出しなければなりません。そのために考えなければならないのが「資金調達/ファンドレイジング」です。

今回、「スーパー戦隊と資金調達」を考えるにあたり、非営利組織の資金調達に詳しい「一般財団法人ジャパンギビング」代表理事の佐藤大吾氏(以下、佐藤さん)にお話を伺ってきました。

工藤:お世話になります。お忙しいなかありがとうございます。先日の「スーパー戦隊と公共性」も読んでくださったということで、まずは率直なご意見をいただけますか。

佐藤さん:スーパー戦隊の活動には、戦う人や後方支援などの専従職員、そしてボランティア、プロボノ、アルバイト、寄付者など非専従職員がいると思います。これら地球を守る職員の身分確定と身分保証、そしてオフィス契約や委託契約などの際の契約主体と責任範囲を明確にしなければなりません。法人化の必要性は大きくこの二点のために検討する必要があります。

工藤:法人格はさまざまにありますが、前回は「一般社団法人」が適当ではないかという議論になりました。法人格の選択についてはどう思われましたか。

佐藤さん:法人格は、株式会社、NPO法人、一般社団法人、一般財団法人、その他いろいろあります。またガバナンスと税制の観点からNPOであれば認定法人化、社団や財団は公益社団、公益財団を目指すといった選択肢が生まれます。

工藤:今回、スーパー戦隊が法人化を目指すうえで、佐藤さんならどんなことを考えられますか。

佐藤さん:まず、株式会社は営利の観点からそぐわないと思います。サービス対価を支払えるひとのためだけに動くのがスーパー戦隊ではないからです。NPO法人も難しい。ガバナンスが弱いからです。NPO法人は「フリーイン・フリーアウト」です。原則として誰でも正会員になれる。もし、妖怪でも、怪人でも、敵が正会員になりたいと言った場合断れません。一般財団も考えたのですが、特定少数の資金で運営することが特徴です。誰かの財産に依存しやすいため、「みんなで支える」という観点から一般社団法人が適当だと思いますね。

工藤:前回はどちらかというとスピード感を重視しての一般社団法人でしたが、佐藤さんはそれぞれの法人格の原理原則からの観点ですね。

佐藤さん:スピード重視以上に、ガバナンスや税制など各法人格の原理原則をよく議論した方がいいと思います。スピードを重視するならどの法人格であれ、「**法人なんとかジャー(設立準備中)」としておけばいいです。

工藤:今回のテーマは資金調達です。そうはいっても資金調達の方法は多様にあります。まずは非営利活動における資金調達の基本について説明していただけますか。

佐藤さん:ここでは一般社団法人の「非営利徹底型」を前提にします。収益源としてはグッズ販売や研修事業、テレビ放映権の販売などの収益事業も考えられますが、ここでは本来事業(非営利事業)に特化して話をします。

基本的な考え方として非営利活動にはサポート対象である「第一の顧客」と、寄付者やボランティアなどの協力的な「第二の顧客」が存在することをおさえてください。もし第一の顧客から「サービス代金」として直接費用を回収できるなら株式会社を選ぶのがいいと思います。

スーパー戦隊の活動で言えば、第一の顧客とは「地球や人類」ということになります。サポート対象が広範囲であり、あいまいなので、誰にサービス対価を支払ってもらうべきかよくわかりません。言い換えると、第一の顧客から「サービス代金」として費用を回収することが難しいので、非営利法人として、寄付やボランティアなど第二の顧客から協力を得て運営するのが現実的ではないでしょうか。

工藤:例えば、ホームレス支援のNPOでは、ホームレスの方からお金をいただくことは難しいですね。私は若者や子どもの支援をしていますが、経済状況が厳しい個人、家族からお金はいただけません。子どもの貧困問題もそれにあたります。

佐藤さん:そうです。そして直接困っているひとからお金をいただくのが難しいとき、「俺も手伝うよ」というひとたちの協力を取り付けるのが非営利活動の本質です。株式会社では、基本的にサービス提供に必要な費用はすべて受益者が「サービス代金」として負担しますが、この「受益者負担の原則」が成立しない分野にこそ非営利団体の活躍の場があるといえます。もし、第一の顧客からサービスに伴う費用のすべてを回収しようと考えるのであれば、サービス代金を払ってくれた人だけを助ける株式会社を設立するのがいいのではないでしょうか。

工藤:そういう非営利活動の資金調達についてずっとご活動されてきたのが佐藤さんですが、この第二の顧客を見つけることについて少し突っ込んだ話を伺いたいです。

佐藤さん:非営利活動の主な収入源として、「会費」「寄付」「助成金・補助金」「委託事業」「自主事業」などがありますが、ここからは寄付に絞って話をします。寄付を集めるにあたって一番重要なのは共感です。共感なきところに寄付は集まりません。共感していただくための最上の方法は現場に連れて行くことです。活動の現場を見れば共感してくれて「寄付するよ」という人が出てきます。もちろんわざわざ非営利活動の現場にまでやって来る人は多くありません。工藤さんは少年院にいる子どもたちを支援されていますが、そういう現場ですと行きたいなと思ってもなかなか見せてもらえないでしょう。

工藤:そうですね。まったく機会がないわけではありませんが、すぐに現場を見ようと思って見られるという場所ではないと思います。

佐藤さん:スーパー戦隊の活動現場にはおそらく行けません。危な過ぎますから。戦隊側も招待したくないでしょう。足手まといになりますから。そうなると何か他の方法で現場感を伝える方法を考えなければなりません。リアリティを伝え、共感してもらうため、現場に来てもらうことに準じるいい方法としては「動画配信」です。即時性のある情報を流すのは極めて重要です。それをメディアやSNSなどで拡散していただき、現場のリアルを届けていく。

工藤:一番は現場に来てもらうこと。それができない場合には動画配信など「発信」が極めて有効であると。

佐藤さん:発信は本当に重要です。例えば、戦争だと戦場カメラマン、ジャーナリストがそれを担っています。とにかく現場感です。現場の雰囲気を届けることです。

工藤:しかし、スーパー戦隊の現場は危険ですし、誰が発信をするのかという課題を解決しなければなりません。

佐藤さん:私の提案は、戦隊員のうちひとりを情報発信担当にすることです。他の隊員が命を懸けて戦っているところを、同じく命を懸けて動画や画像を撮影し、文章を書いて配信するんです。

工藤:それでは戦闘力が落ちませんか。戦闘に負けると人類滅亡なんですが。

佐藤さん:確かに戦闘力は削減されます。しかし、こう考えてみてはいかがでしょうか。戦力をひとり割いてでも情報発信を強化することは、戦力の「一人減」ではなく、そのひとりの発信が一万人の応援団とたくさんの寄付を集めてくれる可能性がある。これは非常に効果的なアイディアだと思います。その動画をソーシャルメディアに乗せて広げていく。それをみたスーパー戦隊と同等の能力を持つ人たちが世界中から活動に参画してくれるかもしれません。

工藤:前回、関口さんが「幹部やボスは後にならないと出てきません。週を追うごとに強さがインフレしていく。いきなり100%で攻めてこられると厳しいですが、徐々に強くなっていくということであれば、こちら側も組織化などを進める時間があります。」とおっしゃっていました。敵の強さが右肩上がりのインフレ型であるとするならば、特に戦い始めの段階で戦力を情報発信に割くことは、低リスクで高い投資効果を見込めそうです。もし発信担当の隊員から助言を求められたらどうされますか。

佐藤さん:どのような映像を流したらいいか迷われるかもしれませんので、まず基本的な話をします。ジャパンギビングでも、建物写真より人物写真のほうが、より多くの共感と寄付を集めています。そして人物写真の中でも、泣いている子どもの映像や、悲惨さを伝えるショッキングな写真は多くの人の衝動を一瞬で喚起するため、短期間で寄付を集めることに適しています。

ただし、持続しません。多くの人は見たくないものから遠ざかる傾向があるからです。その意味では、長期的に寄付を集めるためには、笑顔の子どもの映像などハッピーな雰囲気、人が思わず微笑んでしまうコンテンツのほうが共感持を続性する上で重要だと言えます。

工藤:ネガティブな映像は即効性を持ち、ポジティブ/ハッピーな映像は持続性が高いとなると、スーパー戦隊に救ってもらったひとたちのインタビューなどがいいということでしょうか。

佐藤さん:そうですね。実際にはネガティブな映像でも、ポジティブな映像でもどちらでもいいと思っています。平時を支える寄付を長期にわたって集めることと、戦闘が始まった時に緊急で寄付を集めることはともに必要で、用途によって使い分けることが必要だと思います。

工藤:「敵が現れた、戦うぞ!」となったら、初回から全力で動画配信ですね。

佐藤さん:ちょっと待ってください!明らかに対象が火を吹き、建物を壊すなど危害を加えている状況なら、すぐさま防衛活動、人道支援活動、および寄付募集活動を開始すればいいと思いますが、その前に少し考えるべきことがあるかもしれません。目の前に現れた生き物は見た目はグロテスクで「怪物」や「妖怪」と言えるものかもしれませんが、本当に敵かどうかはまだわからない場合もあります。また、彼らには彼らなりの事情があるかもしれません。人類とは異なる容貌の対象だからといってスーパー戦隊が無条件に攻撃を仕掛けるのも時期尚早です。対象が本当に敵なのか確認する必要があります。

工藤:稚拙な発言申し訳ありませんでした。確かに、敵どころか、ともに未来を創る盟友になれる存在かもしれません。見た目や印象ではなく、しっかりとコミュニケーションを取ることの大切さを改めて認識しました。さて、実際の戦闘シーンを動画配信するなどは有事の資金調達だと思うのですが、平時の資金調達についてもお聞かせ願えますか。

佐藤さん:非営利活動の本質は「ここに問題がある。この問題を解決したい」ということを多くの人に広く伝えていくことにあります。「WHAT=何が問題なのか」と「HOW=どうやって解決するのか」が大切です。スーパー戦隊にとってのWHATは「地球平和の維持」などでしょうか。「対象と戦う」はHOWのひとつです。

例えば、オリンピックにおけるWHATは「平和の祭典」であり、スポーツ大会ではないですね。スポーツ大会は平和を守るためのHOWです。WHATである「地球平和」を実現するためのHOWは「戦う」こと以外にもあると思います。本当に敵が敵なのか。なぜ私たちを襲うのか。その目的は何なのかを明らかにするために常日頃から彼らとコミュニケーションを取る努力をすることもHOWですね。もしかしたら、彼らと分かり合えることがあるかもしれません。

戦闘になれば協力者はたくさん出てくると思いますが、戦闘以外の活動を支えてくれるファンや協力者を普段から増やす努力をしなければなりません。

工藤:ファンを増やす、寄付者になってもらうという意味では、各地で開催されているヒーローショーのようなものも啓発活動を言えるでしょうか。

佐藤さん:先ほど言ったとおり現場感は寄付者開拓の上でとても重要ですから、たとえ疑似的であっても現場を体験していただくことは有効です。ヒーローショーに限らず、これまでに戦った敵の遺留物や写真の展示会であったり、出版や物販もいいと思います。また学校への出張授業などを通じて、子どもたちに教育啓発を行うこともいいですね。「将来なりたい職業ランキング」の上位にスーパー戦隊が入るかもしれません。非営利経営における最大のテーマは共感です。共感喚起のために何でもすることです。

工藤:日常から絶え間なくコミュニケーションを行い、ステークスホルダーを巻き込んでいくことが大切であるということはわかりました。ただ、ステークスホルダーも多様です。

佐藤さん:ここではステークスホルダーを第二の顧客と置き換えましょう。代表的なものとしては一般ボランティア、専門職プロボノ、寄付者などが想定されます。企業も第二顧客になり得ます。立法や政策提案、予算付けという観点から政治や行政とのコミュニケーションも忘れてはいけません。

工藤:政治や行政も第二の顧客なんですね。

佐藤さん:もちろんです。例えば、震災支援などでも支援現場で邪魔になる法律はたくさんあります。たとえば、地震が起こり、救助にかけつけた自衛隊が誰かの私有地に入らなければならない。しかし、法律が邪魔をする。ほとんどの法律は平時を想定されています。急場の際に違法になることはいくらでもある。

そのため国が指定した妖怪や怪獣が現れたとき、スーパー戦隊には特別に超法規的権限を与える法律が必要になるかもしれません。法律を作るのは議員の仕事であり、法律を運用するのは行政の仕事です。必要な資金は国家予算に組み込んでおかないと対応できません。何か想定外のことが起きれば補正予算も必要になります。

工藤:非営利活動であっても、当然、その社会のルールに則って活動しなければなりません。もし既存のルールが制約になるのであればそれを変える。ルールがないなら作る。

佐藤さん:その他、平時から各方面との事前合意の形成にも取り組むべきです。例えば、有事の際、ボランティアが助けに入ろうと思っても自治体がストップをかけることもあります。スーパー戦隊もただの民間団体なので現場に入れてもらえないかもしれない。平時から合同防災訓練などを通じて信頼関係を作り、急場でも自治体とのスムーズな連携によって現場に入れるようにしておかなければなりません。

工藤:資金調達面ではどうでしょうか。

佐藤さん:資金調達のルートは大きく「法人」「大口個人」「個人」にわかれます。法人と大口個人の獲得は営業活動が必要です。一方、小口の寄付をたくさんの個人から募るのであればインターネットの活用が有効です。平時からの寄付は使途不問の一般寄付として集めたいですね。最初は単発寄付でも、そのうち継続寄付者になっていただけるように努力したいところです。

臨時で寄付が必要になるときは「このことに使って下さい」という目的指定寄付になることが多いですから、クラウドファンディングを立ち上げたり、キャンペーンを行うことがいいのではないでしょうか。

工藤:佐藤さんは非営利組織向けのクラウドファンディングである「ジャパンギビング」や、誰でも使える「シューティングスター」を提供されています。

佐藤さん:ノーベル賞を受賞された京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞研究のためにジャパンギビングで「京都大学iPS細胞研究基金」を活用くださってますが、累計で5,000万円を超えました。

残念ながら、これまでスーパー戦隊のみなさまにジャパンギビングをご利用いただいた実績はないですね。(笑)ジャパンギビングでは平均的に30日間で100~200万円の寄付が集まることが多いです。しかし、スーパー戦隊の活動としては全然足りない。もっと多くのひとに共感をしてもらわないと大きな金額は集まりません。

工藤:いま、大阪マラソンチャリティランナーとしての寄付のお願いに、私もジャパンギビングを利用させていただいています。

スーパー戦隊がクラウドファンディングで資金調達を始める際はどうしたらいいでしょうか。

佐藤さん:まずは、なぜお金が必要なのか。そしていくら必要なのかを考えることです。特に有事の際の出動では、寄付が集まってから動くのでは遅すぎるので、まずは自らの資金を持ち出すことになります。そして、活動をPRすることで、あとから寄付が集まってきて先行支出分を補填していくことになります。

よっぽどの資金がなければすぐに資金が枯渇します。それでは戦えませんし、二回、三回と敵が来襲してきたら対応できません。ですから正直に、「俺たちはまず自己資金を持ち出して出動する!でも、それだけでは足りない。みんな一緒に戦おう!!」と呼びかけるべきですね。

工藤:寄付の用途は想像ができても、いくらかかるのか試算するのは難しいのではないでしょうか。

佐藤さん:クラウドファンディングは目標金額に到達したら資金を受け取る「All or Nothing」と呼ばれる方式のものが多いです。設定した目標金額に届かなかったらゼロになってしまいます。ジャパンギビングは目標金額を設定してもいいし、しなくてもいい。とにかく「一緒に戦ってくれる仲間、集まってくれ!」で寄付集めをスタートできます。

スーパー戦隊がクラウドファンディングを利用するのはAll or Nothing型は向いてない。資金はいくらあっても足りない。来週また敵が襲ってくることが予想されるので、それに備えるべく資金をプールしておきたい。その代り、会計報告をきっちりする。万が一今回の戦闘で余剰資金が生まれたときには、次回の戦いのために留保したり、啓発活動に活用させていただいたりすればいいんです。但し、クラウドファンディングを行う際に初めからそう記載しておきましょう。

工藤:クラウドファンディングにはギフト設定、いくら寄付してくれたらこういう特典がつきますよ、というのがありますよね。

佐藤さん:スーパー戦隊が戦闘中に行うクラウドファンディングでは、寄付に対する返礼品(ギフト)の設定は重要ではありません。平時はともかく、有事にギフトは向いていません。それよりも資金調達担当の隊員が発信を頑張ることです。細かいですが、動画配信のときはわかりやすいところに「寄付はこちら」というボタンをつけておきましょう。その場で簡単に寄付ができないと機会損失になりますから。

工藤:ありがとうございます。そろそろ時間もなくなってきました。寄付を集めるにあたって佐藤さんが大切にしていることはありますか。

佐藤さん:応援してくれたひと、寄付者への感謝です。感謝をしないと寄付は持続しません。図で言えば、「1」の単発寄付から、いかに「2」の会員/継続寄付者になっていただけるか。この移行が重要です。支援の実感、寄付してよかったという気持ちが育まれれば、会員や継続寄付者になっていただけるはずです。

工藤:御礼はどの程度、何をすればいいものでしょうか。

佐藤さん:世界最大のファンドレイジング支援団体である全米ファンドレイジング協会によると「1度の寄付に対して7回感謝を伝えましょう。そうすれば次回も寄付をしてくれます」だそうです。寄付してもらったらその直後に感謝の言葉を伝える、寄付者の誕生日に感謝を綴ったバースデーカードを送る、非営利組織の創立記念日にレターを送付するなど、ことあるごとにコミュニケーションを取り、信頼を獲得することが大切です。

工藤:大変勉強になりました。本日はお忙しいなかお時間をくださりありがとうございました。最後にスーパー戦隊の資金調達について何か一言いただけますか。

佐藤さん:資金調達をする側の観点から話をしましたが、寄付者にも非営利活動についていま以上に関心を持ってもらいたいです。緊急時は調べる余裕がないかもしれませんが、日常生活のなかで気になった団体があれば、ぜひ、ホームページなどでそのビジョンやミッション、何に価値を置き、どのようなことを大切にして活動しているのかを確認してみてください。

スーパー戦隊の活動を法人化、隊員の活動を仕事にしていくためには、理想や理念と並行して資金調達が重要な活動になります。やもすれば、やみくもに寄付を依頼し、助成金などの申請書を出し続けてしまいそうになりますが、佐藤さんの言う「共感なきところに寄付はない」「現場に連れて行く」「御礼をする」といった原理原則と資金調達プロセスを回し続ける、地道な活動の積み重ねことが大切であると強く認識しました。

さらに、非営利活動の本質である「第二の顧客」論においては、寄付者のみならず、多くのステークスホルダーを活動に巻き込み、課題解決への大きな力、うねりを創り出すことの重要性を学びました。スーパー戦隊の活動は、敵が人類の脅威である限りにおいて、私たちに取ってなくてはならないライフラインです。彼らの立場に立てば、地球平和などその使命を持って問題解決にあたる。それは必ずしも戦闘ではない。

いや、むしろもっとも回避すべきことかもしれない。だからと言って、最悪の自体は想定しなければならず、平時の活動から有事に備え、有事にいたらないよう平時の活動を大切にしていかなければならない。これは組織としても隊員や関係者にとっても切り替えの速さとバランス感覚を求められます。

一方、私たちはどうでしょうか。

有事は有事になってからしかその重要性を認識することが難しい。それが故に、平時から地道な活動を応援するというのは、かなり意識的にさまざまな非営利活動などを見ておかなければなりません。これはとても負担の大きいものです。佐藤さんからは、「それほど身構えている必要はなく、気になる社会問題や非営利活動が目に入った時、ほんの少しだけ時間を使って、その問題や活動を見てみればいいと」おっしゃいました。

ウェブサイトなどを通じて、それぞれの組織の使命、ミッション、大切にしている価値観などを見て、この活動は気になる!応援したい!共感した!ということであれば、ソーシャルメディアでの拡散や、書籍を手に取ってみる、寄付をするなど、できることを各個人がしていけばいいのではないでしょうか。

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佐藤大吾

一般財団法人ジャパンギビング代表理事、NPO 法人ドット ジェイピー 理事長

73年大阪生まれ。大阪大学法学部在学中に起業、その後中退。98年、若年投票率の向上を目的にNPO法人ドットジェイピーを設立。議員事務所、大使館、NPOなどでのインターンシッププログラムを運営。これまでに2万人を超える学生が参加。10年、英国発世界最大の寄付サイト「JustGiving」の日本版を立ち上げ、国内最大の寄付サイトへ成長(15年、ジャパンギビングへ改称)。日本における寄付文化創造にも尽力。

【著書】「NPOの教科書」(2015年、日経BP)ほか

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