ニッポン一億総活躍プラン(案)における「若者の雇用安定・待遇改善」について

当初「ニート」となっていた言葉が「若年無業者」になり、さらに「求職型」「非求職型」「非希望型」とわけられることに…

2015年10月から始まった「一億総活躍国民会議」が閉会しました。そのような会議が開催されるような情報は流れていましたが、まさか自分が会議の場に座ることなどまったく予想してなく、内閣府担当者からの電話で驚いたのがもう8カ月前のことです。

この間、政治や行政の関係者、営利・非営利問わない組織の方からさまざまなご意見をいただき、面識のない団体、個人からお手紙やメールをいただくなど、当会議の社会的位置づけの大きさを痛感することになりました。

そして昨日早朝の会議において、「ニッポン一億総活躍プラン(案)」が完成しました。月内の閣議決定のための調整がまさに行われているところだと思います。

各会議で民間委員や各大臣等からさまざまな提案が出されました。提出資料は「一億総活躍国民会議」サイトで即座に公開され、口頭での内容も続いてアップされています。

プラン(案)では、P26以降「今後の対応の方向性」「具体的な施策」「ロードマップと指標」などが各テーマごとにまとめられています。ここに記載されている内容を中心に政府や関係省庁が議論し、形にしていきます。この部分に置いて若者をテーマにしたページがトップになっています。私自身、さまざまなアジェンダが散りばめられる政府資料で若い世代のことがトップ掲載されている資料に触れたことはほとんどありません。

ここで「希望出生率1.8」のテーマのなかにあるP27「若者の雇用安定・待遇改善(その1)」、P28「若者雇用安定・待遇改善(その2)」を見ていきたいと思います。

プラン(案)策定プロセスでの議論になったことものもありますが、「社会生活を円滑に営む上での困難を有する子供・若者」が誰であるのかという一例として「不登校の児童生徒、高校中退者、若年無業者、ひきこもり、発達障害者など」とあります。当初、「若年無業者」の部分は「ニート」になっていました。

記載名称は政策の対象者について少なからず影響があります。若年無業者は「求職型」「非求職型」「非希望型」で分けられます。このうち「求職型」は失業者とほぼ同義になります。一方、「非求職型」と「非希望型」は求職行動を具体的に起こしていないひとで、「ニート」という枠組みで政策化されることが多いです。15歳から39歳での失業者が140万人前後、「非求職型」と「非希望型」で80万人前後です。今回、若年無業者という言葉になったことは対象者の範囲に大きな影響を与えるものと考えます。

ひとつ気になるのは、この部分に「ひきこもり」という言葉が入ったことです。確かに、若い世代でひきこもり状態となる方はいますが、昨今叫ばれているのはその高齢化であり、その定義においては年齢の定めはなく、現実と政策対象年齢がかい離する可能性があります。この部分については引き続き丁寧な議論が必要です。

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「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態」を「ひきこもり」と呼んでいます。

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P28では、内閣府・厚労省・文部科学省の3府省が連携し、地域の事情を踏まえつつ「地域における子供・若者伴走型支援パッケージ」を全国で推進していくと書かれています。

「1」では、「各地域において切れ目なく伴走型で、行政、専門機関、NPO等が連携して支援する体制を整備」とありますが、初見では「NPO」の記載がありませんでした。もともと「等」がありますので、NPOに限らず、さまざまなステークスホルダーを総動員して体制を整備できるのですが、いまや行政が事業などを行う際、特に対人サービス面でNPOは外し得ない協働先です。ただ、このような資料に名称がないと、「等」の範囲が担当者によって異なってしまうため、しっかりと「NPO」が記載されたことには大きな意味があります。

その他、「5」にあるよう、学生の段階から労働関係法令の知識を学ぶ機会の提供も入りました。これまでの動きに加え、今回のプラン(案)において、具体的な施策として明記されたことは、これからアルバイトや仕事をする、または、既にアルバイトなどをしている学生にとって重要な知識獲得の機会となります。今後、どの機関が学習プログラムを作成、提供するのか。複数あれば学校の先生などがどこに依頼し、どのようなコンテンツを導入するのかが注目されます。

当プラン(案)は、これから実行フェーズに入ります。関係省庁の皆様におかれましては、ぜひ、広く若者分野にかかる方々とコミュニケーションを取っていただき、より実効性の高い取り組みをお願い申し上げます。逆に、若者分野に関わる方も積極的にコミットしていく必要があります。

ロードマップと指標に関してもプラン(案)に記載しておりますが、総理より、「フォローアップ会合」というものが設置され、毎年の進捗状況を確認するということへの言及がありました。

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