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若年無業者に社会参加補助金。ソウル市の新たな若者支援。

2015年11月06日 17時57分 JST | 更新 2016年11月05日 18時12分 JST
JUNG YEON-JE via Getty Images
Pedestrians cross an intersection in the business district in Seoul on January 14, 2015. South Korea's jobless rate rose in December from a month earlier, with unemployment among young people hitting a 15-year high, government data showed. AFP PHOTO / JUNG YEON-JE (Photo credit should read JUNG YEON-JE/AFP/Getty Images)

韓国では、仕事、教育、職業訓練から離れている若者が急増している。

韓国でニート急増、8年で2倍以上に=「ますます日本化する」「働かざる者食うべからず!」―韓国ネット

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韓国保健社会研究院の調査によると、現在、経済活動をしていない人のうち、働く気がないか求職をあきらめた人が、2005年の14%から2013年には30.5%と2倍以上に増えた。さらに、この中の3分の1は、最も経済活動が活発な35歳~55歳の年代だ。

出典:YAHOO!JAPANニュース

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ここ5年ほど韓国から日本の若者支援団体への視察などが増え、日本と近似する若年無業者の問題に対して、政府や行政、NPOなどがどのように解決に取り組んできたかが注目されてきた。しかしながら、今夏、横浜で開催された日韓若者フォーラムで登壇したyoojasalonのアキ氏は、そのような若者を「無重力」状態と表現し社会、地域、家族などどこにも根っこがつながらず、浮遊した状態で自己責任論などを突きつけられ、しかもそれを過度に内面化してしまい孤立を強めていく。自傷行為や自殺企図などを含め、日本以上に厳しい状況にあるのではないかと問題提起をした。

社会から離れ浮遊する若者が社会に(再)参入する一手としてソウル市が政策決定したのが、低所得で未就業の若者3,000人に対し、社会参加活動にかかる費用を補助金として支給するというものだ。

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ソウル市は2020年まで5年間、計7136億ウォンの予算を同事業に投入する。仕事をもたず、仕事をする意思をもたない無職の若者、いわゆる"ニート族"を含む未就業の若者の社会参加活動を助ける活動支援事業であり、来年下半期から実施する予定。

また、定期的な収入がない未就業者の中で、活動意思をもつ若者へ最低2か月から最大6か月間、教育費・交通費・食費など月平均50万ウォン(約5万円)ずつ補助する事業だ。

出典:YAHOO!JAPANニュース

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低所得者にとって社会参加へのハードルのひとつがコストである。低所得または無収入であると、いわゆる「実費負担の原則」が高い壁となってしまう。特に一回限りで終わらない場合、積み重なるコストが重く、結果として社会リソースへのアクセスを断念する。

育て上げネットでは、低所得または無収入の若者に向け、個人や企業より寄付などの協力を得て無償枠を設置している。しかしながら、無償であっても日々の交通費が出せないという声が他方からあがり、交通費等の実費も負担する取り組みを行った。結果として、30名ほどの利用枠は埋まり、その多くはひとり親家庭や無収入で、かつ、生活保護などの制度を利用していない若者たちばかりであった。

日経ビジネス:西友の「5日間の就労支援」が変えたある人生

若者に限らず、就労に限らない、社会参加に対しての「実費負担の原則」は予想以上に、当事者にとって重いものである。ある男性は交通費を捻出していたが、その代わりに食費をギリギリまで削らざるを得なかった。彼には他に削るものがもう残っていなかったのだ。また、上記西友のプログラムを利用して就業した女性は、「私の家が経済的に苦しくて、なかなかそういうとこ(交通費)にお金が回せなかった」と参加のきっかけが交通費給付であったことを話している。

確かに、自宅から出ることができない状態のなかで外部からのアウトリーチが必要なケースはある。その一方、経済的な事情でアクセスをしたいけれどもできないひとたちがかなりの割合で存在するのではないだろうか。首都圏でも電車の往復が重なればそれなりのコストになり、車での移動が前提の地域では運転免許所および車の維持、ガソリン代なども必要になる。

先日、一億総国民活躍国民会議が開催され、そこで私も意見書を提出させていただいた。そこでもさまざまな社会リソースにアクセスするコストをカバーするものを提案させていただいている。これまで社会リソースが無償であっても「来ない」若者はそれを選択している、または、何らかの事情で来られないのでアウトリーチ(家庭訪問)が必要である、という認識が一般的であった。

むろん、社会リソースへのアクセスは交通費などに限定されず、情報アクセスとしてのネット環境の有無、ルーツが外国にある子どもたちや保護者など日本語でのみ対応される言語アクセスなども越えていかなければならない壁だ。

今回のソウル市の新たな取り組みはこれからであるが、社会に参加していくにあたってのさまざまなコストを給付することによってどのような変化が起こるのかなど引き続き注視していきたい。

余談として、私たちがJ.P.モルガン社と共同しているYouth Driveにおいて、英国の担当者とプロジェクト設計をしていた。その際、交通費など実費負担を行えるようにしたいのだが、「家庭所得」ラインをどう考えるかを聞いた。するとその担当者は、対象となる若者にとって所属する家庭の所得が何か関係あるのですか?と聞かれ戸惑った。そんなことを言われたことがなかったからだ。彼女は続けて、例えばその若者の親が非常に裕福であったとしても、対象となる若者が家庭の支援を受けられるかどうかはわからない。ゆえに、このプロジェクトにおいては、すべての困っている若者が対象だ、という言葉に随分と驚かされた。