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第三者の関わる生殖補助医療とセクシュアル・マイノリティ(1)

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以前から、第三者の関わる生殖補助医療について、フェミニズムやリプロダクティブ・ヘルス/ライツ、生命倫理に関わる人たちの間で語られてきたことと、セクシュアル・マイノリティの生殖補助医療利用の話を、きちんと接続して、平易な言葉で語る人が多くないことに危惧を覚えていた。

それは、セクシュアル・マイノリティ以前に、ヘテロ夫婦の不妊治療が、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの文脈から切り離され、少子化対策や医療の枠組みで語られがちなこととも関係がある。

2016年1月19日に都内で行われた、「ゲイのための代理出産と卵子提供セミナー 〜子どものいる家族をつくろう〜」に知人と参加して、危機感が少し大きくなった。本当はもっと早くこれについてかきたいとおもっていたのだが、その後、色々な展開があったこともあり、まとめるのに時間がかかってしまった。

しかし、現実が早い速度で展開している以上、「まとめる」ことには限界がある。

見切り発車ではあるけれども、ここでは現時点での考察として、数回に分け、当該セミナーの話と、そこから少し広げて「新しい家族」と呼ばれるものと生殖補助技術がどう関わっているのか、果たして私たちは技術によって「新しい家族」を手に入れることができるのだろうかということについて考えてみたい。

(1)セミナーの主催者は誰か


さて、セミナーの話に戻る。

「誰」を対象とするのであれ、日本で代理出産の実施をうたうセミナーが広く広報され、注目を集める形で開かれるのは極めて珍しい。同セミナーの「参加対象者」には、「主にゲイの方が対象ですが、アメリカでの生殖医療プログラムに興味がある方であればセクシュアリティを問いません」と書いてあったが、報道陣の他に私のように興味があってきたという人たちも何人かいたようだ。

このセミナーを語る時に、まず注意しておかなければならないことがある。今回のセミナー直後から、インターネット上でセミナーを運営した株式会社トロワ・クルールと、その取締役の一人である東小雪さんを非難する声があがっていた。中には、トロワ・クルールを代理出産ビジネスの主催者と同一視しているものもあったが、そのような見方は全く当たらない。

トロワ・クルールは、今回のセミナーにおいて、「報道機関窓口」となっている。東小雪さんの個人ブログや無料公開のnoteにも、コーディネート・PRを担当としたあり、ご自分たちの事業ではないと強調されている。つまり、トロワ・クルールは、アメリカのエージェンシーの広報担当、広告会社としての役割を担ったということになる。

セミナー自体の情報や報告は、東さんの有料のnote以外にも、無料のnote記事告知記事ブログに書かれているので、ご興味のある方は確認していただきたい。

このセミナー自体を考える際には、その後の、また他の場所での東さんたちの活動とは切り離して、アメリカ国内の本当の窓口会社、生殖医療クリニック、代理出産エージェント、カルフォルニアの法律事務所がセットになった、アメリカの生殖技術ビジネス複合体が、日本の市場への進出を、トロワ・クルールが広告会社として手助けしたと見なければならない。

実際に代理出産を行う場合の本当の窓口は、「アメリカ人ゲイ男性と日本人ゲイ男性とのカップル」が設立したと、セミナーで語られていたJ-babyというアメリカの会社である。すでに、日本のヘテロ・セクシュアルの夫婦の代理出産をかなり扱っているとのことだった。

設立から2年半の新しい会社とのことなので、おそらく会社としては、市場開拓が重要になってくのではないか。

ゲイ向けのサービスは主に、ヘテロ夫婦向けとは子どもの身分に関する法的な側面で大きく異なるところがあり、日本からの仲介をしているところも少ない(女性同士のカップルの場合はまた少し違う)。したがって、そこがクリアできれば、会社にとっては新しい市場が開けることになる。

これは、意外と重要な点であるように思う。アメリカの生殖補助医療エージェンシーが日本で顧客獲得のセミナーを開きました、というのと、「LGBTの権利に取り組んできた」人たちの会社であるトロワ・クルールが代理出産の情報を広めますというのは、かなり受け手の印象が違うだろう。

結果として、有名人である東小雪さんが所属するトロワ・クルールが、広報会社であるにもかかわらず、矢面に立ってしまった/立たされてしまった感がある。

しかし、トロワ・クルールは広報担当なのだから、ある意味、このセミナーやセミナーで紹介されたビジネスをきっかけに何が起きても責任は取れない。

繰り返しになるが、そう考えるとこのセミナーを考える上では、まず「アメリカの生殖補助医療エージェンシーが開いた、日本での顧客獲得のセミナー」としてみたときに、どんな問題があるのかという議論がなされなければならない。

(続く)