人生の岐路では何を基準に進路を決めるのか?

2014年11月08日 22時43分 JST | 更新 2015年01月08日 19時12分 JST

大学では学部の3年生が卒業研究の研究室の希望を提出する時期です。先週の白門祭での研究室公開は、3年生への説明会を兼ねていました。

今週も3年生の学生たちから色々な相談を受けました。

就活でもそうですが、研究室選びでも、概して学生さんたちは自分が学生の頃よりは真面目に悩んでいます。

細かいことは考えずに、直感とノリで瞬時に進路を決めて来た自分からすると、もっと気楽に決めちゃえば良いのに、とも思いますが、修士まで行くのならば3年間の進路なので本人は悩んでしまうのでしょう。

ありもしないデマを流す人も居たりするようなので、情報に振り回されて余計に悩んじゃう部分もあるのでしょうね。

昨日聞いたデマは、「竹内研は先生の指示を受けて駒のように学生は働く」というもの。

あのー、20人以上もメンバーが居るのだから、全員に事細かに私が指示出さなければならないとしたら、地獄です。

できるだけ自分でテーマを考え、自分で研究計画を立てて、自分で論文を書いて発表して欲しい。それが教員にとっては一番楽です。

とはいえ、現実ではそう完璧にできるわけもないので、人それぞれのレベルに合わせて、段階的に教育するのが私の役割です。

研究するプレーヤーは学生の皆さんで、私はコーチのようなもの。プレーヤーがつまずいた時にサポートするのが自分の役割です。

こうして学生たちの進路の相談にのっていると、自分が若い時のことを思い出します。

学部、修士では東大 物理工学科の五神先生にご指導頂き、就職の時には後に東北大に移られた舛岡先生にご指導いただきました。

自分が何を基準に研究室や就職先を決めたかを思い出すと、

「この人と一緒に仕事をしたい」

だけで進路を決めました。

そもそも、研究や仕事の内容など、入ってみるまで全くわからないので、悩んでも仕方ない。

東芝に就職した時の面接も、

「(電子工学科ならば学部で習う)MOSトランジスタって知ってる?」

と聞かれて、

「モスバーガーなら知っています」

でしたからね。

就職では専門が違う分野に飛び込んだので、就職先の研究分野を全く知らなかったのです。今なら、これでは落とされますかね。

さて、いい加減に人生の進路を決めてきたように見えるかもしれませんが、自分なりに一貫してが基準があったような気がします。

それは、「自分が成長できる環境に飛び込むこと」。

研究室選びや就職では一緒に働きたい「人」だけで進路を決めました。

就職した後に、MBAに留学したり、大学に移ったり、進路がコロコロ変わっているように見えるかもしれませんが、

「新しいチャレンジができる、厳しい環境に身を置きたい」

という意味では、一貫しているつもりです。

このポリシーはこれからも同じでしょう。

大学に移って7年余りになり、研究室も安定に運営できている今は、そろそろ自分が変わらなければいけない時期に来ていると自覚しています。

次にどこに向かうかは自分でもわかりませんが、そのうちに直感的に「これだ」と思うことが起こるでしょう。

「これだ」というものが見つかった時には、ほとんど悩みません。

1秒くらいで自分では決めて、念のためかみさんに相談しますが、大概は「やりたいようにすれば」と言ってくれるので、その日中には決まります。

直感で人生を決めてきましたが、今から振り返ると自分の選択は間違ってなかったと思います。

技術など仕事のスキルは陳腐化することはありますが、人から学んだ無形のものや素晴らしい人と一緒に過ごした経験は一生の財産になりますから。

東芝ではフラッシュメモリの立ち上げという貴重な経験をできました。

大学・大学院では、まだ始まったばかりの五神研究室の2期生でした。今では五神研は名門研究室ですが、当時はまだ立ち上げ直後で、設備もあまりありませんでした。

仕方なく博士課程の先輩と駒場の先端研の設備を借りに行って実験をしました。

先生もお若かったので随分と怒られました。先生の力で企業と青色レーザーに関する研究ができました。その時に指導して頂いた先輩は現在、慶應大学で教授をされている斎木先生で、大変ながら濃密で貴重な経験をさせていただきました。

冬に先端研のクリスマスツリーのイルミネーションを斎木先生と見て実験で徹夜したのは、今では良い思い出です(その時は最悪だと思った)。

自分のアイデアを核に産学の協力者を募り、仕事の輪を広げていく、という五神先生のやり方は「大学の先生」というよりは、「ベンチャー起業家」のように見えました。

悪く言えば、「他人のふんどしで相撲をとる」わけですが、大きな仕事をするには絶対に必要なことです。

今の自分も産学連携で研究をしていますが、学生時代に経験した五神先生のやり方をまねしているようなものかもしれません。

・・・

そんなことを考えていたら、なんと、五神先生は東大の総長選挙の候補者なのですね。

日本の大学も変わらなければいけない時期に、ベンチャー経営者のように新しいアイデアを次々に実行していく五神先生は、まさに東大の総長にうってつけだと思います。

先日のNHKニュースの深読み「ノーベル賞受賞 "科学技術立国"ニッポンの未来は?」に私が出演した時に最初に連絡を下さったのも五神先生でした。相変わらずのフットワークの軽さに驚きました。

そして、番組の中でNHKが使っていたポスドク問題の資料は、五神先生が作られたものだったと。見えないところで、色々なことが繋がっているのですね。

・・・

さて、いくら持ち上げても、弟子に利益誘導するようなケチなことは決してしない先生ですので、私も自分の力で頑張ります。

五神先生の学生の間のあだ名は「ゴッド」でした。名付けたのは五神研出身で修士の卒業時に総代になった学生。私は総代のスペアで、当日、総代の学生がこれなくなった時に代理をする役回りでした。

五神先生には、東大総長、「ゴッド」に上り詰めて、広く日本の教育のために獅子奮迅に活躍して頂きたいと思います。

(2014年11月8日「竹内研究室の日記」より転載)