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竹内健 Headshot

社長が交代しても東芝の明日が見えない

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東芝が6月に社長を交代すると発表しました。

室町社長が特別顧問という不思議なポスト(何が特別なんだろうか?)に退き、新社長に医療畑の綱川さん、新会長に原発畑の志賀さんがなられるようです。

まず室町さんは何をやってもやらなくても叩かれるつらい立場でお気の毒でした。社長とはいえ、土下座要員ですからね。

新社長・新会長はご本人の力量で選ばれたのかもしれませんが、ご本人を存じ上げない立場、傍から見ると、あまり不正会計に関係なさそうな医療関係の方を社長にした無難な選択だったようにも見れます。

まあ、社長が記者会見をするたびに、過去の不正会計への関与をメディアから問い詰められたらやってられないでしょうから。

でも、ご自身が社長をされていた「東芝メディカル」を予想以上に高値で売却した「功績」で昇進などとも報道されていますが、これは「功績」なんでしょうかね。

自分がやっていた事業が消滅することほど、悲しいことは無いでしょうから。

驚いたのは、新会長にウェスティングハウスの会計問題、いわゆるのれん代の減損処理で取りざたされている方がなったこと。

ひょっとしたら、会長は業績説明などの記者会見には出ないから(?)、メディアから叩かれることもないだろう、ということでしょうかね。

穿った見方をすると、「風よけ」に医療の方が社長になったように見えなくもありません。

さて、そんな中、一本足打法などと言われながらも、東芝を支え続ける半導体関係者はトップ2に入りませんでした。

この人事からは、半導体は儲からなくなったらリストラされるような微妙な立場だけど、原発は何が何でも続ける、というメッセージを感じましたね。

相変わらずの半導体軽視というか、傍流扱いだなと。

残念だったのは、この布陣や今までの説明から東芝の明日が見えないこと。

どうやって儲けていくか、差別化していくか、の説明が相変わらずない。

自分がやっていたメディカルを売却してしまった新社長さんには、将来を説得力を持って語れるネタがないとすると、何とも皮肉なものです。

また、原発事業はよく報道されているように(例えば日経ビジネス:東芝、ついに原発減損。それでも続く嘘と先送り)、2029年までに原発を
64基、新規受注するというバラ色の計画をもとになっているようです。

今まで日本に作られた全ての原発が54基にもかかわらず・・・

また、半導体はどうやって3次元メモリで先行する三星やマイクロンに追いつき、勝ち残るのか。

ずいぶん前から開発している、DRAMのように高速でフラッシュメモリに近いほど大容量で不揮発(電源を切ってもデータを保持できる)な新
メモリはどうなったのか?

多少先の話でも良いから、「東芝は復活するな」と思わせるストーリーが欲しいものです。

今でも優秀な技術者は残ってますし、技術力は非常に高く、きっと新事業のネタは社内に眠っているでしょうから。

このように東芝に厳しいことを言うのも、OBの一人として東芝には復活して欲しいですし、教え子たちがかなりの人数、入社しているので、(卒業生に限りませんが)優秀な人材をうまく使いこなして欲しい、という思いから。

ところで、そんな東芝でも、「良い方向に変わった」と思える、きざしのようなものが見えました。

来週、パリで開催されるIEEE IMW(International Memory Workshop)では、3月に私の研究室を卒業して4月に東芝に入社した卒業生が発表します。

国際会議では論文を投稿してから発表までに半年くらい時間がかかりますので、このように論文投稿時は大学に在籍していても、発表時は就職していた、ということが良く起こるのです。

ほとんどの日本企業では、新卒の研修の時期は「旅費は大学の研究室が負担」と言っても、学会参加を認めてもらえません。

東芝もかつて、卒業生の国際会議への参加をお願いしても却下されたことがあります。

それがダメもとでお願いしたら「是非、行かせて欲しい」ということになりました。

新入社員が全員受ける研修と、国際会議で世界トップクラスのエンジニアに対して英語で論文を発表することのどちらが教育効果が高いかは、自明だと思います。

そもそも、企業の社員だって、どれだけの人がそのような経験ができるのか。

それが無料で新人ができるのでしたら、断る理由なんてないと思いますけどね。

ちなみに、学生が海外の企業に就職した場合は、たいてい参加OKです。

その一方、日本企業はたいてい参加NGというのは、日本企業の不合理さを象徴しているな、とかねてから感じていました。

ですから今回、東芝が突然、OKを出してきたのは、正直なところ驚きました。

経費節減のために社員に出張旅費を出せないとか、色々な理由があるのかもしれませんが、この調子で直すべきことを前例にとらわれずに、どんどん変えていって下さい。

以上で書いた事例は、経営改革、組織改革などにもならない、ちっぽけな変化でしょう。

ただ、組織というものは、こういう小さな変化を積み重ねて、大きな変革につながるものではないかと思います。

経営危機という災いが転じて福となることを祈っています。

(2016年5月7日「竹内研究室の日記」より転載)