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クッシーは実在するのか? 幻の怪獣を求め、私は屈斜路湖に飛んだ

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クッシーを目撃した方向を指し示す鈴木一馬さん

「あの辺りをコブが2つ、右から左へ動いていったんだ」

男性は霧立つ湖面を指さした。ここは、北海道東部にある屈斜路(くっしゃろ)湖だ。周囲57km。日本最大のカルデラ湖は、何事もなかったかのように静まり返っていた。

1973年8月、近隣の藻琴山に遠足に来ていた北見市立北中学校の生徒40人が、湖面を泳ぐ謎の物体を目撃した。

マスコミが相次いで報じると、地元の住民から「自分も不思議な物体を見た」という目撃談が相次いだ。やがて「謎の怪獣」はネス湖のネッシーにあやかり、「クッシー」という名付けられた。1974年9月には地元の北海道放送が1カ月を費やしてダイバーを湖水に潜らせるなどの調査を実施したが、確たる存在の証拠は見つからなかった。

1980年代までは、クッシーは断続的に目撃されていた。私は当時小学生だったが、ネッシー、雪男などの未確認生物を扱う書籍でも、クッシーは日本各地の「ご当地ネッシー」の代表格として大きく取り上げられていた。「屈斜路湖には未知の生物がいるに違いない」。そんな確信が子供心に植え付けられ、いつか行ってみたいと思うようになった。

中学生らの目撃情報から、すでに40年以上が経過した。クッシーが話題になることは、ほとんどない。しかし、ハフポスト日本版で新カテゴリー「知られざる世界」を開設を機に、私は現地取材を思い立った。5月12日、連休直後の北海道旅行で寄り道し、屈斜路湖に向かった。


■レストハウスの店員「湖の底で寝ているんじゃないかしら」

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砂湯温泉のレストハウス前にあるクッシーの模型

女満別空港からレンタカーで1時間半。屈斜路湖は霧で覆われていた。湖に浮かぶ「中島」が辛うじて見える程度だった。屈斜路湖の湖畔の弟子屈(てしかが)町には、湖岸の砂を掘ると温泉がわき出る砂湯温泉がある。香港から来たカップルに「ジャパニーズ・モンスターのクッシーを知っていますか?」と声をかけたが「ノー」と一言。

砂湯温泉に併設されたレストハウスの脇には、大きさ5〜6mほどのクッシーの模型が展示されている。ちょっと小ぶりだが、雰囲気は抜群だ。長年展示されていたせいか、首がところどころ痛んでいた。

レストハウスの店内には「クッシーまんじゅう」やクッシーのぬいぐるみ、Tシャツなど関連商品が山盛りだ。1970年代の新聞の切り抜きもあり、クッシー観光で賑わった往時を偲ばせたが、この日は悪天候だったこともあり客は自分だけだった。

従業員の女性に「クッシーの目撃情報を知りたいのですが」と声をかけるが「最近は、あまり聞かないですね。湖の底で寝ているんじゃないかしら」と苦笑していた。

これでは収穫もなさそうだ。幼少期の思い出を汚すまいと立ち去ろうと思ったが、店内の木彫り店の店主にダメ元で話しかけてみた。「あ、クッシーなら見たことあるよ」。あっさり目撃者が見つかった。


■目撃者の男性「生き物だということは間違いない」

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クッシーを目撃したと告白する鈴木一馬さん

彼は弟子屈町に住む鈴木一馬さん(71)。民芸品店で手彫りのクマなどの彫刻を制作しながら、「屈斜路湖クッシーを守る会」の会長を務めている。店の外にあるクッシーの模型も、20年近く前に鈴木さんが業者に発注して作ったものだという。鈴木さんは次のように話した。

「今から17年くらい前、同じ年に2回見たことがある。たまたまこの店の外に出たら50〜70m先くらいに、少し離れてコブが2つ出ていた。同じスピードで移動していた。びっくりして、手こぎボートで追いかけたが、見えなくなってしまった。2回目はもう少し沖合で10mくらいの幅で噴水のように泡だっていた。やたらでかいな!と思ったよ」

この年は計4回ほど、クッシーの目撃情報があったらしい。「正体は何だと思いますか?」と尋ねたところ「さっぱり分からない。生き物だということは間違いないと思う」と答えた。

気になる最近の目撃情報についても聞いてみたが、鈴木さんは「最後に見た人から5〜6年たっている」と首を振った。

「急にいなくなってしまった。それまでは年に1人や2人は、それらしきものを見た人がいて『丸太のようなものだった』とか『首を持ち上げているところを見た』と言われていたんだが...」


■クッシーの正体は謎のまま

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レストハウスの閉店時間に伴い店内に収納されたクッシーの模型。首は取り外してある

もともと屈斜路湖は近隣の温泉から強酸性の水が流入しているため、湖水が酸性になっており魚類は乏しい。1938年の屈斜路湖地震では、湖底から硫酸塩が噴出したとみられ魚類はほぼ全滅した。

現在は酸性の水に強いウグイのほか、放流されたニジマスやヒメマスはいるものの、「巨大な水生生物が生息する可能性は低い」と指摘する声もある。

クッシーが、厳しい自然環境に耐え抜いた未知の巨大生物なのか。それとも何かの見間違いが、観光資源としての「ご当地怪獣」としてブームになっただけなのか......。目撃者の男性の言葉に嘘は感じられなかったが、真相は不明だ。

謎は謎のままにしとくのがいいさ――。ハリボテのクッシーが、そうつぶやいたような気がした。

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