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クリスマスツリーを飾る日も来る?"寺離れ"時代を生きる僧侶たちの工夫

映画上映会『テ・ラ・ランド』を企画

2017年11月24日 14時27分 JST | 更新 2017年11月24日 14時28分 JST
abemaTIMES

 浄土宗の調査によると、ここ20年間で檀家数が減ったと答えたお寺が60%、1913年には約100万カ所だった墓地の数も、2013年には約86万カ所まで減っている。

 「実際のところ、土地だけあって建物がないお寺を青空寺院というが、そういう単語ができるくらいの事態だ。(青空寺院は)まだ僅かだが今、住職をできない、住職になってもそこのお寺だけではやっていけないので、住職のなり手がないというところは増えている」と、宗教の専門新聞「中外日報」の記者で、日蓮宗や浄土宗などを担当してきた有吉英治氏は話す。

 そんな中、最近、「兼業」をするお坊さんが増えているという。その実態を探るため、2人の若手僧侶を取材した。

映画上映会『テ・ラ・ランド』を企画

 「東京生活にもだいぶ慣れた」とスーツ姿で歩く男性、稲田瑞規さん(25)は、サラリーマンと僧侶の二足のわらじを履く"兼業僧侶"だ。実家は京都府久御山町にある浄土宗称名寺。檀家は100軒に満たない小さな寺だという。大きな行事があるときは京都で僧侶、それ以外の日はサラリーマンという生活を送っている。勤務先は、都内のIT企業。

寺に人を呼ぶためにマーケティングの手法を学んでいる。いわば修行だ。「檀家がそこまで多くない寺の生まれで、将来役に立てられるよう、この仕事を選んだ。お寺のことだけやっていると視野が狭くなってしまうので、それをもうちょっと広げるために、今のサラリーマンの仕事も全く無駄になっていない。むしろ、活きるのではないか」。

 10月には、檀家に制限されないゆるやかなコミュニティを作って行けたらと、大好きな音楽を活かしたイベントを企画した。その名も『テ・ラ・ランド』。寺で映画を作り、披露する「映画祭」だ。住職の父・泰雄さんは、息子が独断で決めたこの企画について「構想が膨らんでいって、私の想像外のイベントになってきたな。ワクワクもあるけど不安もあるかな。(瑞規さんは)私に似合わず、すごい奴やなと」と感心する。

 当日、会場には100人以上が集まり、まさにすし詰め状態。映画は寺を継ぐことに葛藤する若い僧侶が主人公で、住職の父と対立する姿を描いた。演じるのは稲田さんと父・泰雄さんだ。クライマックスは親子が繰り広げるバトルだ。SNSで開催を知ったという参加者は「もっと学芸会みたいな映画だと思っていたが、自主制作映画っぽくない(高いレベル)」「本当に地元の人たちに(称名寺が)愛されているっていうのがすごく伝わってきた」とコメント。評判は上々のようだ。

 「ネットでめちゃくちゃバズったという感じ。実際に来ていただくと、田舎の寺の良さであったり、仏教ならではの許された空間というものを感じ取ってもらえたみたいだ。ただのエンタメで終わらなかったというのがすごく嬉しかった」。イベントは大成功し、稲田さん親子も笑顔だ。

 当初「何をするの?」という感じだった檀家に対しては、「僕と父母で一軒ずつ回って、ポスターを配りながら話して、理解していただいて。喜んで来ていただいた」。訪れた檀家の一人はイベント終了後、「人が集まるのは非常に素晴らしく、ありがたい。阿弥陀さんも喜んでるかなと思って」と語った。

 実は父の泰雄さんも、平日は兼業して寺を守っている。称名寺の宗派・浄土宗の調査では兼業住職は21%、過去の経験も加えると半数が兼業だ。また、年収300万円以下の寺が43%と、人々に生きる道を説く僧侶たち自身が生活に苦しんでいる実態も見え隠れする。稲田さんも「坊主丸儲けとよく言われるが、そうでもないことを知ってもらえたらありがたい」と話す。実際は想像以上に厳しいようだ。それでも稲田さんは前向きだ。

 「情報発信することで、所縁がない人たちがお寺の良さを知ってくれて、寺を中心としたゆるいコミュニティが可能になってきたのではないか。別の分野の領域も知ることで、今の仏教のあり方がわかってくる。釈尊がお釈迦様の対機説法といって、その当時の時代とか人に合わせて教えを変えていったのと同じように、この時代にあった教え方、仏教のあり方があると思っている。なので、それを他の領域で学びながら今の時代に合わせた仏教を広めていけたら」(稲田さん)

「人を楽しませるための行事」寺にクリスマスツリーも

 兼業僧侶の中でも稀有な存在だというのが、大阪府富田林市にある団地の中に美容室を構える木全剛司さん(42)。県境を跨いだ和歌山県橋本市にある浄土真宗大谷派・徳明寺の副住職で、こちらも檀家は100軒に満たないという。住職で母の満知子さんには「若」と呼ばれている。

 19歳で美容師になった木全さんには、寺を継ぐつもりは全くなかったという。「うちの親はこんな黒い衣を着て、近所をうろうろしてニートだと思っていた。働いてない人だと思っていた。そういう生活がイヤで」。

 ところが20代後半のあるお盆の日に転機が訪れた。「80歳を超えている祖父が、炎天下でフラフラというかヨレヨレで歩いていた。老いた祖父が檀家回りをしているというのに、若くて元気な僕がそれを手伝わずしてゴロゴロしているのは良くないという感情で。(僧侶になるのは)生まれる時からやったと思う。それがよくいう『運命』」。

 「感じのいい人だと思ってきている。パーマが上手」「お仏壇の話とか相談に乗ってくれる」と、お客さんからの人気は高い。「僧侶は聞くのも仕事なので、お客さんの話を聞くように心がけている。美容室はきれいになって頂くのは当たり前。帰り際に、『今日は楽しかった』と言って帰っていくのが何よりうれしい」。寺の法要などが重なると、週の半分も店に顔を出せなくなることもあるというが、それでも店は繁盛を続けている。

 「『衣マジック』と呼んでいるが、衣を着ると(僧侶の)スイッチが入る。やはり違う、ピリッとするというか。美容室では美容師としてピリッとする感覚がある」。

 木全さんは、お坊さんの生計の建て方について「収益を得て成り立っていくもの。商売と言ったら怒られるかもしれないが、寺だけで食べていけると言ったらおかしいが、そこに踏みこんでいくべきかなと。僕は商売人なのでそう思う」と話す。「子どもたちが寺を支えていけるようなシステム作りをしていきたい。寺に行くとすごく楽しいものが待っていると子どものうちに刷り込むというような。ちょっとズルい考えではあるけど」。

 実現のため、「宗派とは関係なく、寺が人を楽しませるための行事として捉えればいいと思う」として、クリスマスツリーを飾ってもいいくらいの気持ちだ。母・満知子さんもこれには「クリスマスツリーとかはちょっと微妙かな。まずは阿弥陀さんの紹介をしたい」と話すが、寺に人を集めたいとの思いは同じのようだ。

 「それぞれ皆さん仏様を信じている。多いというと言い過ぎだが、他の宗教と仲良くやっていこうという方は多いと思う。超宗派でいろんな催し物をやったりとか、話し合いの機会を持ったりということは多い。必ずしもキリスト教だから、うちの寺にツリーがあってはいけないという頑なな人は減っていると思う」(有吉氏)

 「今、世間一般に(寺の収入源と)言われているのが納骨堂。それだけなら寺は衰退していくと思う。一つ一つ発信をして、それを受け止める人が来てくださることで経営が成り立つのかなと」(木全さん)

 "寺離れ"時代、僧侶たちの模索は続く。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

(2017年11月23日「AbemaTIMES」より掲載)

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