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封印されたご当地キャラ「かつ江さん」の取材で思ったこと【編集ノート】

2014年12月27日 20時17分 JST | 更新 2015年02月26日 19時12分 JST
安藤健二

鳥取駅に降りると、うだるような暑さが体中を覆った。東京駅から新幹線と特急を乗り継ぎ、約5時間。鳥取市に来るのは、生まれて初めてだった。8月1日は猛暑の真っ盛りで、日本海側だというのに34度近かかった。

この日、私が鳥取まで取材に来たのは、鳥取城のPRのためにデザインされた「かつ江さん」というご当地キャラが公開中止になったためだ。かつて、私は封印された作品に関するルポを書いたこともあったので、新たなる封印作品の登場が気になり、休日を利用して個人的に取材に来たのだった。

そのときの取材の顛末は、『「かつ江さん」鳥取城のマスコットが3日間で公開停止 作者の思いは?』に書いてあるので詳しくはそこを見て欲しい。今回は、そのときには書けなかった私個人の思いなどをチョロチョロと書いていきたい。

■「ふさわしくない」否定的な地元住民ら

「かつ江さん」は、ツギハギだらけの着物を着た、血色の悪い顔をしたやせ細った女性。鳥取城で実際に起きた「鳥取の渇え(かつえ)殺し」をモチーフにしたキャラクターだ。16世紀に豊臣秀吉が、この城を攻めたときに食料補給をシャットアウトし、城の中では死肉を食い荒らそう地獄絵図となっていた。「かつ江さん」は、その負の歴史を思い起こさせる物だった。その結果、市役所には「飢餓をちゃかしている」や「不愉快だ」といった内容の苦情が殺到。わずか3日で公開停止となった。

正直に言ってしまうと、「かつ江さん」を最初に見たときは「これは封印されてもしょうがないかな」という感想を持ったのも確かだ。餓死寸前となった「かつ江さん」は、ひいき目に見ても可愛らしいとは言いがたいものだったからだ。

鳥取城跡で地元の人々や観光客に聞いたときも、8割方は否定的だった。「勇猛な武将のキャラクターならいいんだけど、ちょっと鳥取城のイメージキャラとしてふさわしくない気がする」「あまりイメージが良くない気がする」などなど。わずかに城跡をランニングしていた20代の若い会社員の男性が「こういった歴史があったのは事実だし、鳥取市として重大なこととして受け止めていくことが必要だ」と怒りを露わにしてたくらいだった。

地元では封印を惜しむ声が少なかったので、少しがっかりしたが、あの造形ではやむを得ないかという気にもなっていた。山城の鳥取城で聞き込みを続けていると、革靴の底はボロボロとなり、暑さでアンダーシャツは、ぐしょぬれになった。

■作者「あえて自虐的なキャラで勝負した」

当日の夜に「かつ江さん」の作者の鳥取市在住の男性にインタビューができた。通常、封印された作品の作者は取材拒否するケースが多いのに、市役所を通して、すんなりと取材許可が下りたことも意外だったが、彼の言葉にはもっと驚かされた。

「一見するとインパクトが強いですけど、よく見ると親しみがわいてくるキャラクターにしました。『立体化も視野に入れてください』と募集要項に書いてあったので、着ぐるみやストラップにしてもいいように描きました。ピンク色の着物も可愛らしさをイメージしたんです」

男性は心底「かつ江さん」の造形が気に入っているようだった。あえてエグいデザインにしたのかと思いきや、そうでもなかった。本人は、郷土の負の歴史を「ご当地キャラ」という形で自虐的に表現した。公募を通るのは難しいだろうと思っていたら次点に選ばれ、「鳥取市もやるな」と思っていた矢先の封印だったという。

「鳥取って、風土的にはどうしても保守的で冒険しないところがあるんですよ。そういうイメージを変えるためにも、あえて自虐的なキャラで勝負したんですけどね」

男性は快活に笑いながら、そう言った。キャラクターは封印されたものの、そのことで全国的なニュースになり、テレビや新聞でも取り上げられて「かつ江さん」の知名度は飛躍的に向上した。鳥取城の負の歴史を、日本全国に広げるという「かつ江さん」の目的は十二分に果たされた面もあったのかもしれない。

翌日、観光がてら鳥取砂丘に寄った。広大な砂丘の光景に圧倒されていると、社員旅行で来たらしいサラリーマンっぽい男性のグループの雑談が耳に入った。

「鳥取城にも行ってみたいんだよな。そうそう、あの、かつ江さんとかいうキャラが話題になった例のところ......」

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