BLOG

アナ雪DVDの無料上映会に対してディズニーは何ができるのか

2014年08月28日 00時12分 JST | 更新 2014年08月28日 00時15分 JST
Henry S. Dziekan III via Getty Images
NEW YORK, NY - NOVEMBER 02: Actress Kelly Rutherford with son Herms Gustaf Daniel (L), daughter Helena Grace Rutherford (2nd L) and guests attend the Disney & The Cinema Society screening of 'Frozen' at Tribeca Grand Hotel on November 2, 2013 in New York City. (Photo by Henry S. Dziekan III/WireImage)

神戸新聞のサイトに「アナ雪ロングランの陰で...市民向け上映会が中止」なんて記事が載ってます。「アナと雪の女王」の市民向け上映会が配給元からの求めで中止に追い込まれているらしいです(上映を行なってしまった自治体もあり混乱が続いているそうです)。

しかし、そもそも、日本の著作権法の規定では、非営利・入場無料・無報酬という条件であれば、自由に上映できます(上演・演奏の場合と同様です)。

第38条1項 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。

地方自治体等が市民のために行なう入場無料の上映会は、通常はこの条件に合致するでしょう。もちろん、テレビ放送の録画を上映すれば複製権の侵害になりますし、ネットで配信すれば公衆送信権の侵害になりますが、条文をストレートに解釈すれば合法的に入手したDVDを上映するのは問題ないように読めます。

「アナ雪」の場合には、DVDが発売された現在もロングランで劇場公開が続いており無料上映会をやられてしまうと影響が大きいので、配給元やディズニーは困るのでしょうが、それは配給元やディズニーの都合であって著作権法の解釈とは関係ありません。

DVDによる非営利・入場無料・無報酬の上映会について、一般社団法人日本映像ソフト協会のFAQでは次のように書かれています。

著作権法には(1)営利を目的とせず、(2)観衆から料金を受けず、(3)実演家等に報酬を支払わない、場合には公に上映することができるとする規定があります。そのため、市販のDVDビデオを使って上映会を行うことは許されるとする見解があります。

(中略)

レンタル店用のDVDビデオは、家庭内視聴を目的とする個人のお客様への貸与の許諾があるに留まりますので、レンタル店がその許諾の範囲を越えて上映会のために貸与すると頒布権を侵害してしまうことになります。

同様に、市販のDVDビデオも、著作権者が家庭内で視聴する個人のお客様に販売することを許諾していることを考えると、公の上映を目的とするお客様に市販のDVDビデオを販売することは、頒布権という著作権法上の権利(著作権法第26条第2条第1項第19号)を侵害することになるのではないかという問題があります。

さすがに断定はできず「頒布権の侵害になるのではないかという問題があります」といった奥歯にかなり大きなものが挟まった言い方になっていますが、いずれにせよ、この文脈で頒布権を侵害し得るのはレンタル店あるいは販売店であって、利用者(この場合は自治体)ではないですね。結果的に著作権侵害行為を生み出す可能性があるので上映はやめていただきたいという「お願いスタンス」ということでしょうか?利用者とレンタル店の間における契約違反という話はあるかもしれません(著作権侵害の話ではないですが)。

日本映像ソフト協会のFAQは、最後は「権利制限の一般規定(フェアユース・フェアディーリング)を持つアメリカやイギリスでも権利制限の対象とはなりがたい利用だと言えます」等と、他国の状況を持ち出した論点ずらし、で締めています。

あとは、一般消費者向けDVDをプレイすると最初に「このDVDは個人的使用向けに販売されたものであり、一切の上映行為を禁じます」といったような文面が流れますが、あれが契約として有効かという論点もあるかと思います。

ということで、現時点の日本では非営利・入場無料・無報酬のDVD上映会を権利者が禁止できる確固たる根拠はないように思えます。もちろん、「お願いレベル」で依頼して、それに応じることは当事者の勝手ではありますが。

(2014年8月27日「栗原潔のIT弁理士日記」より転載)