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特許の問題でSTAP細胞作成のコツを公表できないということがあり得るのか

2014年04月21日 21時34分 JST | 更新 2014年06月21日 18時12分 JST

小保方さんの「4月9日に開かれた記者会見に関する補充説明」において以下のような記載がありました(参照記事)。

現在開発中の効率の良いSTAP細胞作製の酸処理溶液のレシピや実験手順につきましては、所属機関の知的財産であることや特許等の事情もあり、現時点では私個人からすべてを公表できないことをご理解いただきたく存じます。(強調は栗原)

特許等の事情により、コツを公表できないということがありえるのでしょうか?

大前提としてSTAP細胞の作成法に関する特許出願(国際出願)は既に行なわれており、出願内容も公開されています(参考過去エントリー)。そこに記載されているよりも、より効率の良い新たな方法があるということなんでしょうか?

ノウハウに当たる部分を隠して特許出願するのは(本来的には好ましくないですが)よく行なわれています。ただ、今回の話は効率が良いとか悪いとかの話ではなく、できるかできないかの話なので、ちゃんと実施できる方法を開示していないということは、論文としても特許出願としても問題です。なお、特許出願書類にもNature論文と同様の不適切な画像流用がされていることが指摘されています(参照記事)。

以下の2段落は一般論になります。

コツに相当する部分が特許の対象になるのであれば、発明者自身の公開によっても新規性が否定されますので、出願前には公表しないことが通常です。発明者(正確には特許を受ける権利を持つ人)自身が公開した場合、公開の時から半年以内に出願すれば、その公開を理由に特許性が否定されることはないという救済規定があります(米国では1年以内に出願すれば大丈夫です)が、欧州や中国ではこのようなルールは原則的にありませんので、発表の前に出願することが重要であることは確かです。

このような場合に有効に使える制度に米国の仮出願制度があります。仮出願は1年以内に通常の出願を行なうことを前提として出願であり、通常の特許出願と比較して書式上の要件が簡略化されています。学術論文をそのまま出願することも可能ですし、日本語で出願することも可能です。先に仮出願して出願日を確保しておけば後は自分で公表しようが、独立して発明した第三者が公表しようが、出願しようが、先に出願した方が優先します。学術機関ではよく使われていると聞いています。

フジテレビのとくダネ!で笠井アナがこの件に関する解説で「論文の前に特許を取っておくのが普通」というような解説をしていましたが、正確には「特許を出願しておく」ですね。

と言いつつ、小保方さんの発明は職務発明として理研が出願人となるよう職務規程で定まっていると思いますので、この状況では仮出願にしろ本出願にしろ、特許出願なんでやってられないということはあるでしょう。

まあもちろん、もしSTAP細胞が小保方さんの脳内でしか完成していない(あるいはマーカーの発現をもってSTAP細胞の完成とするという俺様定義を採用している)のだとすると、特許出願も何もあったものではないですが。

(2014年4月16日「栗原潔のIT弁理士日記」より転載)

小保方晴子氏の記者会見画像集(2014年4月9日・大阪)