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誰にも言えない本音も安心して聴いてもらえる よろず相談所に込められた僧侶たちの想い

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kohgen

■「布施」ってお金のこと?


みなさんは、「傾聴」という言葉の意味を知っていますか? 

読んで字のごとく、「相手の言葉に耳を傾ける」という意味で、仏教関係ではよく聞く言葉です。そもそも私が「傾聴ボランティア」の存在を知ったのは、僧侶による各種イベントの取材を始めた頃でした。

最初は、ボランティアとはいいつつも、実際は相談者に仏教の教えを説いて布教するのが目的なのだろうという、うがった見方をしていました。

しかし、相談者と僧侶が話をしている様子をずっと観察していても、相談者が楽しそうに笑っていたり、深刻な表情で思いの丈を切々と話し続けたりしているだけで、僧侶が説教をしている様子はまったくありませんし、ましてや檀家にしようと勧誘をしている様子もありません。しかも、聞くところによると無料だというではないですか。

これはどうしたことだろうと驚いて、ある僧侶にその理由を聞いてみました。すると、「傾聴ボランティアは、自分の時間を相手に差し出して話を聴く『布施』なんですよ」という言葉が返ってきました。

そのとき初めて、布施というのは、なにもお葬式などの仏事で僧侶に渡すお金、いわゆるお布施のことだけを指すのではなく、相手に自分のものを差し出すこと全般を指すのだと知りました。

■僧侶たちの熱い想い


以前、筆者はある老人ホームでの傾聴ボランティアを取材したことがあります。

各テーブルをお年寄り3人と僧侶1人が囲み、ある人は家族のこと、ある人は第二次世界大戦後間もない頃のことなど、みなとりとめのない話をしています。僧侶は、それぞれの話を時に真剣に、時に微笑みながら、否定も肯定もせずに、心をこめて聴きます。

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すると、話し始めたときは表情が乏しかったお年寄りたちの顔が、みるまに明るくなり、キラキラと輝いてきました。

そのとき私は、人間というものは、こんなにも自分の話を聴いてくれる人を求め、話を聴いてもらうことに喜びを感じるのだと、人間の本質を垣間見た思いがしました。

そして、「布施」というのは誰かに何かを「与えてやる」のではなく、布施した相手の喜ぶ顔を見ることが自分の喜びにもなり、自然と「させていただく」という気持ちが芽生える素敵な行為なのだと、心震えるほど感動したのです。

また、複数の僧侶から異口同音に聞かれたのが、仏教の在り方に関する次のような言葉でした。

「人々が安心して関われる宗教でありたい」

「宗教としての役割を果たしたい」

彼らの言葉の背景には、ここ十数年のスピリチュアルブームがあります。

悩みや不安を解消するために占いにはまっていたり、自分を高めるために自己啓発セミナーに通いつめたり、ストレスにさらされた心を癒やすためにパワースポット巡りをしたりする人も、少なくありません。

これらの現象に共通しているのは、物質的には満たされているのに解消されない渇望感、将来への漠然とした不安、目に見えない世界への憧れのようなものでしょう。スピリチュアルブームというだけに、ブームはいつか去るのかと思いきや、今ではスピリチュアルはすっかり世間に定着してしまいました。

かつては、心や魂、生き死にに関する哲学的な疑問には、宗教が答えを用意していました。しかし、現在の伝統的な仏教は、人々がそういった疑問を気軽にぶつけられるほど、身近な存在でしょうか? 

今やお寺は、コンビニより多いといわれていますが、自分の家が檀家となっているお寺の僧侶以外と話をする機会はほとんどないですし、地元を離れて暮らしている人にとって僧侶と接する機会は、お葬式以外では皆無というのが現実でしょう。

「それでは仏教は、身近な宗教とは言えない」

そんな危機感をもった僧侶たちが、老人ホームだけではなく、お寺で運営しているおしゃれなカフェ、「向源」のような仏教関係のイベントなど、さまざまなチャンネルを使い、一般の人が安心して宗教と関わることのできる「場」の一つとして、傾聴ボランティアを支えているのです。

■そうだ! お坊さんと話そう


「向源」でも、「お坊さんと話そう」というブースで僧侶と話ができます。

こちらでは、相手の言葉に真摯に耳を傾ける傾聴の姿勢は保ちつつ、プラスアルファで、仏教についての質問に答えたり、お悩み相談を受けて一緒に解決策を考えてくれたり、面白いところで「お坊さんはいつも何を食べているの?」なんて素朴な疑問にも答えてくれたりします。

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言ってみれば、ここは僧侶による「よろず相談所」でしょうか。

「1時間でも待ってくださる姿を見ると、話したいと強く願う何かがあるのだなと感じます。僧侶たちはみな、相談者のお話に真剣に耳を傾け、性急に答えを出そうとするのではなく、まず一番に相手の気持ちに寄り添い、一緒に悩み、知恵をしぼります。僧侶をみなさんの相談相手の一人に加えていただけると、とても嬉しいですね」

と、昨年、このコーナーの運営管理をしていた高山一正さん。

待合スペースが満席なのを見て、僧侶との語らいをこんなにも多くの人が求めているのかと驚きました。

相談者は、若いカップルや子連れの若い母親、熟年夫婦など。楽しそうに話していることもあれば、年配女性が一人、沈んだ表情で話している様子も見かけられました。

このコーナーには、天台宗、浄土真宗、日蓮宗、曹洞宗、臨済宗、浄土宗、真言宗と、主要な宗派の僧侶が参加しています。

「みなさんからの相談には、経験の深い者と浅い者とが、2人1組になって対応させていただくこともあります。それは、私たち僧侶にとっても、この機会が貴重な研鑽の場であるととらえているからなのです」

相談者の中には、とりとめのない話をし続け、最後のほうでやっと悩みを口にする人もいるといいます。

自分の心の中にあるもやもやをすべて口に出したことで、初めて自分自身の心としっかりと向き合い、悩みの核心に気づくことができたに違いありません。

僧侶と話をしてみたい、悩みを打ち明けたい。そんな人は、まずは「向源」に訪れてみると良いでしょう。

かつてのお寺は、本堂に行けば、住職さんと気軽に話をすることができ、時には人生に関わる相談をすることもあったといいます。また、千数百年もの長い間、お寺は様々な催しや学問など、文化の中心でもありました。

今、僧侶たちが人々に開かれたお寺を作ろうと試行錯誤しているのは、もしかしたらあるべき姿に戻ろうという時代の揺り戻し、いわばお寺のルネサンスなのかも知れません。

(寺社イベント研究家・福田祥子)

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