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そもそも、お祓いってなんだろう? 千数百年、変わらぬ形で受け継がれてきた大祓詞

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「祓い(はらい)」という言葉を聞いて、皆さんはなにを思い出しますか? 多くの方は、男性の25・42・61歳、女性の19・33・37・61歳の厄年に神社で受けるお祓いを頭に浮かべるのではないでしょうか。でも、お祓いを受けたことのある人でも、そもそもなにを願い、なにを祓ってもらったのか、おぼろげにしか分かっていないかも知れません。

今回は、年2回の特別なお祓いであげられる大祓詞(おおはらえことば)にふれ、いにしえの人々の願いに思いをはせてみましょう。

■大祓で、悪いものをデトックス


大祓詞は、毎年6月30日と12月31日に行われる大祓という神事であげられるものです。6月の大祓では、罪や死、悪い行いといったものに接して生じた心身の汚れを祓うのと同時に、大晦日の大祓までの無病息災を祈願します。参拝者は、神社からもらった人の形に切った紙「形代(かたしろ)」に自分の名前・年齢・住所などを書き、頭・胸・腕など自分の気になる部分にこすりつけ、三度息をふきかけることで心身の汚れを形代に移し、自分の身代わりとして神社におさめます。

神社におさめられた形代は、お焚き上げしたり、海や川に流したりします。形代を神社におさめた参拝者は、「水無月の夏越の祓ひする人は千歳(ちとせ)の命延ぶと云ふなり」という無病息災を祈る古歌を唱えながら、∞(無限大)のマークを書くように左まわり・右まわり・左まわりと茅の輪を三度くぐり抜けてから神前に進み、大祓式へ。

一方、大晦日の大祓は、新たな年を迎えるために心身を清めるものです。どちらも地方や神社によって多少の違いはありますが、これが代表的なあり方といえるでしょう。

■7世紀、半年先の命も不安な時代


「大祓詞は、天智天皇(在位668~671年)から文武天皇(在位697~707年)の時代に、天皇の命令で中臣氏が作った祝詞で、『中臣祓(なかとみのはらえ)』とも呼ばれています。当時は平均寿命が51歳ぐらいで、多くの人々が疫病で命を落としており、その原因は、体に付着した罪や心の汚れだと思われていました。ですから、次の半年を平穏に過ごせるよう願いを込め、半年に1回、大祓の神事をするようになったのです」

と、昨年の『向源』で大祓詞のワークショップを担当した芝大神宮の宮司・勝田博之さん。現代のように医学や衛生観念が発達していなかった時代では、いったんけがをしたり疫病にかかったりしてしまうと命に関わる問題になりがちでした。ですから人々は、現代よりずっと切実な思いで神々に向かって手を合わせていたに違いありません。

■神話の世界にタイムスリップ


「高天原(たかまノはら)爾(に) 神(かむ)留(づまり)坐(ま)須(す)...(高天の原に鎮座していらっしゃる...)」という言葉から始まる大祓詞は、千数百年の間、ほぼ原型のままで受け継がれてきました。漢字約800字で構成されており、言霊を重視し、忌むべき言葉は避け、全体的に音や韻を重視した美しい言葉が散りばめられています。

ちなみに「高天原爾...」の部分で使われている「爾」や「坐」や「須」って、なんでこんな風に書くのかと不思議に思いませんか? このような言葉は万葉がなといって、漢字の意味は関係なく発音だけ借りて書き表す方法で、万葉集でよく使われた方法なので、そう呼ばれるようになりました。たとえば「花」なら、「波奈」と書くこともあったのです。

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現在、私たちが使っているかな文字は8~9世紀ごろに成立しましたが、それまで日本人は日本語を表す文字をもっていなかったため、このような方法で歌などを書き残したのです。2016年の『向源』では、「漫画で楽しむ日本の神話~火の鳥ヤマト編~」のワークショップで、絵馬に万葉がなで願い事を書くという体験もできます。

さて、すっかり脱線してしまいましたが、大祓詞に話を戻しましょう。

大祓詞の前半部分は、皇室の先祖である男女二柱(ふたはしら)の皇祖神が神々を集めて相談して、天照大神(あまてらすおおみかみ)の子孫である瓊々杵尊(ににぎのみこと)に豊葦原水穂国(とよあしはらのみずほのくに)を天皇(すめらみこと)として統治するよう委任することにした、という場面から始まります。

乱暴なことをする神々を追い払い、男女二柱の皇祖神は、瓊々杵尊を天から地上へと降ろし、そして瓊々杵尊は大倭日高見(おおやまとひだかみ)の国、すなわち日本を統治するようになります。でも、どんなに気をつけても、人々は日々の暮らしで知らないうちに罪を犯したり心身の汚れを蓄積させてしまったりします。そのため皇祖神が、罪を犯してしまったらとなえるようにと太祝詞(ふとのりと)をさずけてくれた、という経緯が書かれています。

後半部分では、太祝詞を読み上げる声を神々が聞き届けてくれ、人々の罪を引き受け、消し去ってくれる様子が詳しく記されています。ちなみに太祝詞というのは、とてもパワーの強い言霊であるがゆえに口伝えのみで受け継がれ、秘密にされるうちに、後世になるにつれてその内容に諸説出てきてしまって、はっきりとしたことは分かっていないそうです。

■静謐の中で心と対話する豊かな時間


『向源』のワークショップでは、祝詞を実際に書写します。難しそうと思う人もいるかも知れませんが、和紙に文字が薄く印刷されている上から筆ペンでなぞればいいので心配無用です。大きい漢字と漢字の間には、現代の日本語の助詞にあたる文字が小さく書かれていて、使い慣れない筆ペンできれいに書こうとするとかなり集中しなければいけないため、会場には水を打ったような静けさが訪れます。

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参加者は約30人で、30~50代女性がほとんど。それぞれの人が、紙に一文字ずつ丁寧に書きながら、神様と対話をしているのかも知れません。書写をした後のすがすがしさをみなさん感じるところでしょう。

今年の『向源』では、大祓詞とはまた違った、神田明神で正式参拝する時にあげられる祝詞を書写します。雑念から解放された心澄み切るひとときを体験したい人は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

(寺社イベント研究家 福田祥子)


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