3.11東北イニシアチブ:高齢者のポテンシャルを信じよう!――「仮設住宅」を舞台とした高齢者たちのチャレンジ(1)

現在、被災地の「仮設住宅」は高齢化と貧困による"限界集落"化していってます。日本全体を見渡しても65歳以上の「高齢者」が半数以上の"限界集落"は、すでに1万か所を超えています。そうした集落での大きな課題が、「高齢者」の"見守り"です。

■ 仮設の現状ー 高齢化と貧困による"限界集落"化

3.11東北大震災から3年が経過した現在においても、10万人以上の被災者が「仮設住宅」での生活を強いられています。高台移転や災害公営住宅の建設の遅れにより、国は入居期間を4年間に延長するなど仮設暮らしは更なる長期化が予想されます。

「ここではやることがない」。「何もしていないから生活が堕落する」。近所にも顔見知りの人はほとんどなく、孤立する仮設の高齢者の多くが明日が見えないストレスを抱えています。「高齢者」の孤独死が相次いだ阪神大震災の教訓から、国は「仮設住宅」が所在する地区への介護施設の誘致などの支援策を打ち出しているが、現実には「仮設住宅」の多くは、せいぜい小さな集会所が設置されている程度で、それすらも利用したことのない住民も少なくありません。

現在、被災地の「仮設住宅」は高齢化と貧困による"限界集落"化していってます。日本全体を見渡しても65歳以上の「高齢者」が半数以上の"限界集落"は、すでに1万か所を超えています。そうした集落での大きな課題が、「高齢者」の"見守り"です。国や行政の見回り活動だけでは限界があり、同居による共同生活など様々なアプローチを試行していますが、今後はこうした集落のコミュニティを維持するためには、「高齢者」どうしが支え合う新たな仕組みを構築していく必要があります。

大雪で車立ち往生 避難の飯舘村民、仮設から命のおにぎり

大雪で多くの車が立ち往生した福島市の国道4号で16日、沿道の仮設住宅に暮らす福島県飯舘村民がおにぎりを炊き出し、飲まず食わずのドライバーたちに次々と差し入れた。持病のため運転席で意識を失いかけていた男性は19日、取材に「命を救われた思いだった」と証言。東京電力福島第1原発事故に伴う避難が続く村の人たちは「国内外から支援を受けた恩返しです」と振り返った。飯舘村は福島第1原発から北西に約40キロ。放射線量が高い地域が多く、村民約6600人のほとんどが村の外で避難生活を続けている。

高橋宏一郎|共同通信福島支局長

47NEWS 2014年2月20日 06時10分

■ 日本のソールフードおにぎり、世界に誇る「 食と農と電」。

フィンランドのヘルシンキの街角で、のんびりゆったりとした交流を描いた名画「かもめ食堂」では、「おにぎり」は日本のソウルフードと紹介しています。日本のコンビニやスーパーは海外進出に積極的で、おにぎりも海外支店で同様に販売しています。

食文化としての「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録され、伝統的な職人技によるすし文化とともに、海外でも評価の高い国産米と炊飯器=ライスクッカーなどのメイドインジャパンのジェネリック家電との連携、また、高齢者を主体とした日本のソウルフードであるおにぎりをや伝統家庭料理や食堂コミュニティモデルを世界に発信していきます。海外における疲弊地区で日本の「食と農と電」が大活躍する日も近いのではないでしょうか。

■ やりがい・いきがい、そして 社会貢献。高齢者は莫大な社会資源です。

「見守り活動」は、声かけだけでなく、交流会やその他の活動とも関係しています。訪問で登録に応じない人でも、自分から出かけるサロン会や交流会には参加するという場合もあります。交流会に新しく参加した人とのコミュニケーションを一つの関係づくりの機会として重要です。

自分自身に照らし合わせてみても、男性は概して社交性に乏しく、閉鎖的でプライドも高いように思えます。その反面、遊び心や社会に対する貢献意識は女性や現役世代よりも強い傾向にあります。「一人暮らしの男性」が地域から孤立しやすい傾向にあるとも言えますが、社会的な活動は目的や活動内容が明確であり、人づきあい、近所づきあいが得意でない人でも気軽に参加できると考えられます。

また、統計的にも60歳以上の場合、社会活動・ボランティア活動に「積極的に参加したい」人の割合は、女性より男性の方が活動への参加意欲が高い。このため、男性高齢者に対しては、社会貢献や社会のスキームの変革というような「大きなモチベーション」を実際の活動に結び付ける視点が重要になってきます。

■「東北の復興なくして、日本の再生はない。」今一度、この言葉の持つ意味を問い直すべき。

地震や津波により、家族を失い、家を失い、職を失った被災者の喪失と悲哀は誰しもが想像に難くありません。それでも自分たちの町や村を再建してほしいという故人の意思を受け止め、自分が生き残った意味と常に対峙しながら、必死に地域の再建に取り込むことが「復興」です。

「仮設住宅」に住む人の世帯年収は200万円に達していないケースも多く見受けられ、年収100万円以下などの生活に困窮している方も多いと言われています。「被災」と「貧困」との関係は明白です。「貧困」のため長期の仮設入居が余儀なくされているわけです。

しかしながら被災地の「貧困」に関する世間の関心はものすごく薄いと感じます。また、一般的にも、日本は「高齢者」の「貧困率」がずば抜けて高く「仮設住宅」の状況が決して特殊な問題ではなく日本全体の問題でもあるということが読み取れます。

そして、何よりも重要なのは「復興」と「貧困」、そして「高齢者問題」は切り分けて考えるべき問題ではないのです。被災者の自立によるコミュニティとその地域需要に支えられた持続可能な仕事場の創出にこそ、「復興」の本質があります。そして、それは被災地の抱える様々な矛盾のひとつひとつに対して、まさに多層に入り組んだ「方程式」を丁寧に解きほぐしていく闘いでもあるのです。

残念ながら現在までの国や行政の取り組みは、「復興」が未来都市のイメージに焦点化され、美しいスローガンやフレーズは様々に登場するが、とりわけ本格的な「復興」 までの中長期の【仮設都市】の構築に対しての視点が欠落していると言わざるを得ません。

また、

●自治体の職員不足、

●労働者と建設資材不足

●用地不足

●住民の合意不足

などと、「復興」が進まない理由をいろいろ説明されますが、この段階であれこれ「不足」を並べ立てもしかたがありません。今までのように問題の解決を国や行政の既存の仕組みに任せているだけでは進まない、一人一人が動くしかありません。

今後は市民が様々な課題に対してドラスティックな発想で直接解決しなければならない段階に差し掛かっていると言えます。そして、知恵と経験の豊富な「高齢者」はその主役を担わなければなりません。「高齢者」が現存する資源やシステムを活用し、地域需に支えられた持続可能な仕事場と伝統的コミュニティを創出するために、会議や図面に頼らない手作りの「復興」を一気に進めていく以外に選択肢はありません。

「高齢者」の扱いが社会によって異なる原因は 主に2つあります。違いが生じるのは「高齢者」がどの位有用かということとその社会の価値観によります。

まず、「高齢者」の有用性とは 役に立つ作業に従事できるということです。 伝統的社会で高齢者が役立つのは食料生産ができる場合です。また、「高齢者が孫の面倒を見られれば 社会とって有用です。 孫の親にあたる―子供達の世代が孫のために自由に狩りや食料採集に行けるからです。

「高齢者」の価値は他にもあります。道具や武器かごや壷・織物を作製できることです。実際、最も上手なのは 高齢者であることが多いのです。 伝統的社会ではたいてい「高齢者」がリーダーであり 政治や医療、 宗教や、 歌と踊りに関する知識を 最も豊富に持っています。 最後に、 伝統的社会の高齢者は 識字率の高い現代社会に生きる私達には思いもよらない、とても重要な役割を担っています。

現代社会では情報源といえば 本やインターネットです。 対照的に文字を持たない伝統的社会では「高齢者」が情報を蓄積しています。そして社会全体の存続は彼らの知識にかかっているのです。長く生きた人しか 経験したことがないような まれな事態によって 社会に危機が訪れる時です。

伝統的社会ではこういった場面で「高齢者」が役立ちます。伝統的社会は 私達の生活に比べて 物質的には貧しくても 社会的にはずっと豊かです。 彼らの子供は 私達の子供よりも 自信にあふれ 独立心が強く 高い社会的スキルを備えています。


TED

ジャレド・ダイアモンド:よりよく老いる社会とは?

「高齢化問題」は先進国をはじめ世界が抱える共通のビッグイシューです。日本は課題先進国のトップランナーを走り、世界中がその解決を注目しています。総花的な政策設定ではなく、この問題を徹底的にフォーカスすることにより、医療・年金などの社会保障問題だけに留まらず、財政・雇用等の諸問題を包括的に解決することができます。

しかし、その実現においては、スキームの問題だけではなく、ひとりひとりの生活における「個の逆転」が必要です。強力で不可逆的なパラダイム・シフトがない限り、劇的にものの考え方や価値観が変わることは困難で、多少のきっかけや動機だけでは、人はそう変われるものではありません。そういう意味では、その実現可能性や持続可能性に一番近いのが東北の被災地であるということが言えます。

東北の役割は、震災や原発において多くの苦難を背負ったチャレンジド地域としての歴史的使命感を持って、少子高齢化をはじめ年金医療などの社会福祉や財政再建問題の解決の先進国モデルとして、国際社会にアプローチを行い、日本が経済だけではなくHECP(人権・環境・コミュニティ・公共)によるミニチュア地球都市モデルを、国際的貢献を展開していくことが、国家戦略的として日本のプレゼンスを高めていくためにも極めて重要になってきます。そして、そのことが結果的に「震災復興」や「脱原発」のリアリティーを呼び起こすことにもつながってきます。

震災発生から3年が経過した現在、、一向に進まない「復興」の現実。今こそ正念場です。 自戒を込めて、日本国民ひとりひとりが「発言と行動の一致」、そして「行動と責任の一致」という古典的価値を最も大切にするべき段階に来ていると言えるのではないでしょうか。

3.11東北イニシアチブのキーワードとしては、フリー・オープン・パブリックであること、国や行政を通さなくてもできること、コストがかからないこと、一人でもできること、会議や図面を必要としないこと、対立や衝突を生まないこと、地理的概念に関わらず支援やつながりが可能なこと、理念があり誇りや将来に希望が持てること、社会のパラダイムシフトにつながること、 アートでオシャレなこと、 そして、「高齢者」や「チャレンジド」たちが主役であることです。

高齢者が主体となって、3.11東北イニシアチブを展開していくために、仮設グループカフェ【ホームエレクトロニクス・カフェ】構想を提案します。

(2014年3月2日「re-CONSCIOUS」より転載)

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