BLOG

ミツバチの羽音の広がり

「607も、いいねがついたよ!」

2017年12月06日 16時05分 JST | 更新 2017年12月06日 16時05分 JST

南米チリのパタゴニア地方、アンデス山脈の麓で暮らす私たちの日常のストーリーを綴っています。今回は、その12回目です。

「シンプル・ライフ・ダイアリー」8月7日の日記より。

今朝は、ワクワクして目が覚めた。ポールが薪ストーブに火をつけている間、私は、コーヒーを淹れた。猫たちのためにドアを開けたら、キティーとタビーが、突進して部屋に入って来た。と思うと、二匹とも、床に座り、私たちを興味深げに見上げている。まるで、私たちの興奮が伝わったかのようだった。

「わお!見てごらんよ」ポールが、コンピューターをオンにし、オーガニック協会のハニー・プロジェクトのページを開いて、声を上げた。

「607も、いいねがついたよ!」

「本当?すごい!」

フェイスブックのページに、パタゴニアでオーガニック・ハニーを作るプロジェクトが政府からの資金援助を受けられるように応援してほしいと投稿をしたのは、2日前だった。その時、オークビレッジ稲本正さんの投稿を見つけた。稲本さんは、40年間、飛騨の高山で木を植え、広葉樹林を再生している。日本で何度か、お会いしたことがあり、ポールの講演会を主催していただいたこともある。その稲本さんが、日本のミツバチを救うため、8月8日に、森から採取したハチミツの販売を開始するということだった。

Paul Coleman

「果物や野菜がピンチです! 日本蜜蜂ミツバチは、主に森にいます。森を元気にする為には、西洋ミツバチと同様、日本蜜蜂の分蜂を促す必要があります。そして、皆さんが日本蜜蜂の蜜を買って頂く必要があります」と、稲本さんは、書いていた。なんという、偶然だろう!私は早速、稲本さんに、コメントを書いた。

「私たちも有機農業協会に入って、コミュニティーレベルで、オーガニック・ハニーを作るため、政府からの資金援助のプログラムに申請しているところです。シンクロにびっくりしました。ぜひ、応援していただけたら、嬉しいです」

すると、稲本さんは、すぐに返信してくれた。

「同じように『木を植えた』ポールと木乃実! 同じように 蜜蜂ミツバチの 分峰 を手伝うプロジェクトをほぼ同時に始めたなんて!地球の裏側にいても、お互い 通じ合えるんだね」

それだけでなく、私たちのプロジェクトのページをシェアし、友達に電話をしたり、メールをしたりして、広げてくれたのだった。

私は、稲本さんの言葉に励まされて、木を植えて歩く旅に参加してくれた友達や、一緒に植林ツアーに行った友達などに、個人メールで応援をお願いした。すると、彼らもすぐに、「いいね!」をクリックして、プロジェクトのページをシェアしてくれた。こんなに素晴らしい友人たちがたくさんいることが嬉しかったし、本当にありがたかった。

たくさんの人が、ページにコメントも投稿してくれた。チリのバルデビアで養蜂をやっているヒメナさんは、こんなコメントをくれた。

「地球のエコシステムを守るためのイニシアチブなら、どんなものでも、大歓迎です。ミツバチと私たち人間が相互に恩恵を受けるプロジェクトは、特に。もし、養蜂のことで、疑問に思うことがあったら、何でも、訊いて下さい。お手伝いします」

地域の人だけでなく、チリ全土からも、たくさんの人が、プロジェクトを応援してくれているのは、本当に素晴らしいことだった。みんな、ミツバチの数が減少していることに危機感を抱いていて、特に、野菜や果物を育てている生産者が多いチリでは、食糧生産のためにミツバチの数を増やすことは必要不可欠だということを理解しているようだった。

朝食の後、「いいね!」の数が、見る見るうちに、増えていくので、私もポールも、嬉しくなって、「養蜂をやるとしたら、なるべく自然に近い方法でやりたい。ミツバチにストレスがかからない方法がいいよね」と、ネットでリサーチをし始めた。

すると、ポールが、「サン・ハイブ」(太陽の巣)というのを見つけた。これは、一般に使われている木製の巣箱ではなく、草で編んだバスケットを使っていて、三角錐を逆さまにしたような形になっている。ドイツの彫刻家が、なるべく、ミツバチにストレスがかからないように、自然の中でミツバチが作る巣をまねして作ったのが始まりだ。従来の木製の巣箱に比べて、生産されるハチミツの量は少ないけれども、「サン・ハイブ」で暮らすミツバチは、自然の状態に近いので、ミツバチが幸せに暮らせる。その上、見た目に美しいのが、気に入った。

「ラフンタの人なら、このバスケット編めるよね。民芸品として売っているバスケットと、そんなに違わない。蜂蜜を作って売るだけじゃなく、サン・ハイブも作って売れたら、地元の人の収入源がさらに増えるよね」ポールは、夢を膨らませ、私も、ミツバチたちと一緒に暮らしているところを想像して、嬉しくなった。早速、サン・ハイブを使って養蜂をしている人のビデオを見てみる。すると、オーナーが、ミツバチを刺激しないように、とても、ゆっくりと身体を動かし、デリケートに蜂の世話をしていた。

「ミツバチの世話をするのは、ポールの仕事だね」私は、言った。

「ポールの方が、私よりデリケートだもん。私がやったら、巣ごと、落として、蜂に刺されそう」

「うん、たしかに」ポールは、笑った。

「ところで、面白い記事を見つけたよ」ポールが、イギリスのガーディアン紙のページを開いた。

「イギリスの大学でミツバチが好きな花はどれかを研究した結果、3つ、ミツバチが特に好きな花が見つかったんだって。どの花だと思う?」

「ボリッジ?」

ミツバチが、紫の花や青い花が好きなことは、ここ何年か、観察して気づいていた。パーマカルチャーの本にも、ミツバチはボリッジが大好きだと書いてあった。

「うん、ボリッジも、その一つ。あとは、ラベンダー。でも、ミツバチが、一番好きなのは、マージョラムなんだって!」

「ええ!」

これには、私も、驚いた。ボリッジも、ラベンダーも、マージョラムも、庭にたくさん生えている。特に、マージョラムは、雑草のように増えるので、毎年、株分けして、庭のあちこちに植えてあった。もちろん、ミツバチが大好きな花だとは、全く、知らずに植えていたのだけれど、まるで、知らず知らずのうちに、ミツバチのために、準備をしてきたかのようだった。

Paul Coleman

このニュースに、すっかり気を良くして、ミツバチが好きな花をもっと増やそうと思い立ち、ランチ後、庭へ出て、作業をした。まずは、ボリッジの苗を6本、グリーンハウスから、外の花壇に移し、その隣りに、ラベンダーを2本、挿し木した。それから、マージョラムの大きな株を2つ、掘り起こし、13個に株分けして、畑のあちこちに植えた。

ガーディアンの記事には、ミツバチだけでなく、ホバーフライも、マージョラムが大好きだと書いてあった。ホバーフライは、アブラムシを食べてくれる。今年の夏は、アブラムシが大発生して、ブロッコリーやキャベツやカリフラワーの花が食べられてしまった。マージョラムの近くに、ブロッコリーやキャベツやカリフラワーを植えれば、マージョラムを目掛けてホバーフライがやってきて、ついでに、アブラムシを食べてくれるだろうし、畑のエコシステムもバランスが取れるだろう。

植え替えの作業を終わった時には、日がとっぷりと暮れていた。家に戻って、ハニー・プロジェクトのページをチェックすると、「イイネ!」は、760に増えていた!

すごい!ミツバチの羽音のように、どんどん、ポジティブな動きが広がっている。きっと、ミツバチは私たちのことを好きなのに、違いない!

菊池木乃実の記事を読む