パタゴニアの冬を暖かく過ごすために作ったのは、土に埋もれた家だった

今日は、朝から大粒の雨が降っている。

7月12日(水)の日記から

今日は、朝から大粒の雨が降っている。

起きてすぐ、ドアを開けたら、猫が2匹、同時に家の中に駆け込んできた。猫たちは、早起きなので、朝の5時頃に外へ出ていく。そして、私たちが起きる頃を見計らって、ドアの外に待機し、開けると同時に家の中に入ってくる。キティーは、梯子を登って、屋根裏にある猫用のベッドに直行。タビーは、薪ストーブの前に座って、「早くストーブ、つけてくれ。寒いんだから」と言わんばかりに私を見上げる。

キティーが、この家に来た時、彼女はまだ小さかった。私たちは、当時、2キロ離れた村に家を借りて住んでいて、毎日、この家を作るために通っていたので、キティーは、たった一匹で夜を過ごしていた。そのせいなのか、彼女は半分、野生のようで、サバイバル精神旺盛。勇敢で、犬が来ると、立ち向かって行く。

一方、キティーの息子のタビーは、この家のソファーベッドで生まれて育った全くのボンボン。ポールは、「カウチポテト」と呼んでいる。タビーは、ストーブが大好きで、寒さと雨が嫌い。キティーに比べたら弱虫で、犬が来ると、逃げてしまう。案の定、薪ストーブをつけると、タビーは、ストーブの前にある椅子に座り、しばらく炎を見つめていたと思ったら、丸まって熟睡してしまった。

今年の冬は、特に雨が多い。日記を遡ってみたら、4月の後半から今日までの3か月間で、晴れた日は、10日だけだった。こんなに雨が続くと、アースバック(土嚢)で家を作って本当によかったと思う。

たとえば、今朝の外気温は、3度だった。それに比べて、室内の気温は、暖房なしで14度。薪ストーブをつけたら、すぐに20度まで上がった。

外に比べて室内がずっと暖かいのは、家の壁をアースバックで作ったおかげと、家の周囲に何十トンも盛り土をして、芝のブロックを積んだおかげだ。アースバックは、薪ストーブの熱を昼間に吸収して、夜間、室内に放出してくれるし、家の周りに持った土の山と芝のブロックは、分厚い断熱材として働いてくれる。さらに、アースバックの家は、呼吸するので、家の中は、常に湿度が一定(20%~30%)に保たれ、湿度が高い冬でも、家の中にカビが生えることがない。

村の人は、我が家が半分、土に埋もれているので、じめじめと湿っていて、寒いのではないかと思っている人が多い。でも、実際には、家の中に入った途端、「うわー、暖かい!」と驚くのだ。

部屋が暖かくなったところで、キッチンから続いているグリーンハウスへ朝食用の野菜を採りに行った。私たちが住んでいる地域は、夏以外は、ほとんど雨が降っている。だから、雨に濡れずに野菜を採りに行けるようにと、キッチンとグリーンハウスをつなげて作った。

今は、ナスタチウム、ロケット、スイスチャード、白菜、小松菜、フェンネル、ディルなどが育っている。朝食用にナスタチウム、ロケット、スイスチャードを摘んで、それを刻み、ショウガとオーツ麦を加え、最後に卵を落として、おかゆ風のオートミールを作った。寒い冬の朝には、体が温まるので、気に入っている。

雨が土砂降りになったので、今日は、野外での仕事は、なし。ポールは、パソコンのDC充電器を修理し、その間、私は、サワークラウトを作ったり、昨日、仕込んでおいたサワードウ・ブレッドを焼いたり、カリフラワー・スープを作ったりと、一日中、料理をしていた。サワークラウトは、キャベツと海の塩だけで作る、とても、シンプルなレシピ。1週間後ぐらいには、食べられるはずだ。

夜になると、どんどん、雨が強くなり、風も吹き始めた。

土に囲まれているので、パタゴニアの強風を感じないところも、この家の良いところだ。大地に守られているという安心感がある。

おそらく、山は、吹雪いているだろう。