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時代に逆行する曽野綾子氏のコラム 多様な民族を受け入れる姿勢こそが日本に必要

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SANKEI
The Huffington Post
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作家の曽野綾子氏が2月11日付の産経新聞に寄せた「労働力と移民」についてのコラムが内外で大きな反発を招いている。あの悪名高かった南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)を容認し、賛美しているかのように受け取れる発言をしたからだ。

コラムの中で、曽野氏は、若い世代の人口比率が減る日本で、介護の分野などの労働力不足を補うためには、移民の受け入れは避けられないと述べた。そして、そのためには、資格や語学力といった受け入れ条件の緩和を提案した。

ここまでのところは良かった。

しかし、問題はその後。

「もう20〜30年も前に南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった」

■ 人類の先達の努力を無にするもの

こうした人種ごとの居住を是認するような発言は、アメリカのキング牧師や南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領ら人類の先達の努力を無にするものだ。

「I Have a Dream」(私には夢がある)のスピーチで知られるキング牧師は、人種の隔離(segregation)政策撤廃に命を賭け、差別撤廃を定めた公民権法や投票権法を勝ち取った(キング牧師は1968年に暗殺された)。アメリカでは当時、特に南部では、多くの黒人はゲットーと呼ばれる貧民街に居住。バスやレストランの中でもFor whites only(白人専用)との標識の下、立ち入り禁止にされた。

南アフリカではマンデラ氏が27年間の獄中生活を送りながらも、アパルトヘイトの撤廃に向けて闘争、人種間の融和に人生を捧げた。そして、半世紀近く続いたアパルトヘイトは1994年に終止符が打たれた。結果として、キング牧師もマンデラ元大統領も、差別撤廃の人類への功績が認められ、ノーベル平和賞を受賞した。

曽野氏の今回の発言は、そうした人種差別撤廃の長年の世界の努力に背き、時代錯誤と感じるのは私だけだろうか。

■ 知識人は排外主義の助長を防ぐ努力を

今、多くの先進国では、少子高齢化に伴い、好むと好まざるにかかわらず、外国人労働者や移民を受け入れざるを得ない状況になっている。そして、それに反抗するかのように、排外主義の動きも広まっている。ヨーロッパでも、若年層を中心として、経済の停滞と閉塞感から各国で極右勢力の台頭や移民排斥の動きが強まっている。お隣の韓国では、インターネット上で過激な団体が目立ってきているという。

こうした中、数々の著書を執筆し、首相の長年のブレーンとも目される曽野氏のような知識人が本来、世に問うべきことは、多種多様な文化や習慣を受け入れ、共存共栄を目指す「ダイバーシティ」ではなかったか。日本に定住するひとり一人が暮らしやすい社会を実現するため、日本人こそがその閉鎖性を打ち破り、自ら変わる必要がある。曽野氏の主張は、それに逆行するものではなかったか。

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