「スピーディ」な意思決定は間違い!?

「意思決定はスピードが最も重要!」という言葉はよく耳にしますね。しかし私は『スピード妄信』は大いなる勘違いだと考えています。

第4回【スタンフォード流、インテリジェントエイヤ!で日本企業とビジネスマンを強くする!】

「意思決定はスピードが最も重要!」という言葉はよく耳にしますね。

しかし私は『スピード妄信』は大いなる勘違いだと考えています。

『スピード第一/スピード妄信』は、もともとは日本企業の意思決定スピードが遅すぎてチャンスを逃している、あるいは危険回避行動が遅すぎる、という問題認識が背景にあります。

しかし遅すぎるのが悪いからと言って、とにかく早ければ/速ければいい、ということには決してなりません。

「意思決定はスピード!」で良いのか?!

重要な課題への取り組みは、<『今取りうる(複数の)選択肢の価値が下がる恐れが無いキリギリの時間内=デッドライン(締切期限)』の中で意思決定する、という意味での早さ/速ささえ確保したら、そこから先は『意思決定の質』こそが重要>なのです。

結論をはじめに言ってしまいましたが、まず「スピーディな意思決定こそが良い」場合と「仕方がないから、スピーディな意思決定をする方がまだましな、残念な」場合について説明しましょう。

「スピーディな意思決定こそが良い」場合

私は「スピード妄信」は大いなる勘違いだと考えているのですが、「スピードこそ大事」という考え方が有効な場合も実際にはあります。

それは、一つ一つの影響度はそれほど大きくはないが、そうした問題が多発する、オペレーショナルマネジメントの場面です。

オペレーショナルマネジメントにおいては、PDCAサイクルの考え方が強調されますし、確かにそこではPDCAにしっかり取り組むことが有効です。

PDCA(Plan/Do/Check/Action):

・とりあえずの計画を立て(Plan)

・直ちに実行に移し(Do)

・結果をチェックして(Check)

・そのフィードバックをもとに直ちに次の軌道修正のアクションにつなげる(Action)

しかし、PDCAはオペレーショナルマネジメントの場面では極めて有効なものの、これを戦略的マネジメントの場面に適用するのは、全く筋違いというか大変危険なのです。 どういうことかと言うと;

オペレーショナルマネジメントの場面では、以下の3つの条件全てが満たされていることを前提に、取り組みがなされています。

・すぐに(短い期間で:数日、数週間、せいぜい数か月で)結果が出る

・一回のPDCAサイクルを回すのに必要な経営資源量が(会社/組織全体の持つ経営資源全体に比して十分に)小さい

・うまく行かなかった場合でも、その悲惨さが大したことはない

ところが、戦略的マネジメントで取り上げる課題は、3つの条件のうち、少なくともどれか一つは満たされていないのです(⇒だからこそ「戦略的」なのです!) 。

にもかかわらず、この本質を理解せずに、戦略的マネジメントとりわけその中核である意思決定に「スピード第一」で取り組むのが、非常に危険なことはお分かり頂けると思います。

「仕方がないから、スピーディな意思決定をする方がまだましな、残念な」場合

ではPDCAが成り立つための3条件のどれかが成立しない、戦略的意思決定の場面ではどうしたらいのか。

答えは簡単です。意思決定の質を高める努力をすべきなのです。

残念ながら多くの日本企業にみられるのは、意思決定の質を高める能力が低いために、

・「いくら時間をかけても、どうせ意思決定の質を高められない。現に、いつもダラダラと会議に時間をかけているだけで、意思決定の質は上がらない。時間の無駄だ。」

・「どうせ意思決定の質を高められないなら、質を高めることを諦め、スピードアップ=時間短縮し、直ちに実行して軌道修正した方が良い」という短絡的思考につながり、

・結果として「スピード第一/妄信」に繋がっているのです。

誠に残念な状況です。

これはまさにPDCAの考え方を、「仕方なく、残念な形で使っている」ということです。

重要な課題への取り組みは「スピードよりも質」で!

しかし、意思決定の質を高めることは十分に可能ですし、質を高める能力を身につけることもできるのです。

もちろん、「スピードよりも質」とは言っても、最低限守らなければならない「スピード」を満たした上でのことです。

意思決定の期限=許されるデッドラインを見極め、その範囲内で意思決定の質を高める努力を最大限に行うということです。

「許されるデッドライン」というのは、「今俎上に挙げられる複数の選択肢の価値が、大きく下がってしまわない、ぎりぎりの時点まで」という定義です。

そのデッドライン内で意思決定の質を高める際の能力、すなわち『意思決定の質を高める能力』=『意思決定力』を修得可能にするのが、ディシジョンマネジメントすなわち熟断思考なのです。

そう考えて、私は、熟断思考をベースとして、日本の企業やビジネスマンの「意思決定力」を高めるお手伝いをすることを自らのミッションと考え、それをエデュサルティング(Education + Consulting = Edusulting)という形で提供しているのです。

以上、今回の4回目のブログでは、「戦略的マネジメントの課題については、スピードよりも質が大事!」というメッセージをお伝えしました。

次回の5回目は、「『スローガン経営とチアリーディング』の限界と弊害」と題して、なぜ戦略的マネジメントにおいて意思決定の質が大事か、それをおろそかにしていることで如何に日本企業が事業価値創造のチャンスを失っているかについて、私の問題意識を皆さんにお伝えしたいと思います。

なお、これまでの記事と次回以降のテーマは以下の通りです。

第4回:「スピーディ」な意思決定は間違い!?(←本稿)

第5回:「スローガン経営とチアリーディング」の限界と弊害

第6回:「英断」を期待するのではなく、「意思決定の質」を上げよう! 誰にでもできる6つのコツ

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