育休中は共働きとして働くための準備期間。第二子育休中には地域コミュニティの活動も!

学んだことの一つは、「今までと同じように時間をかけて働くという概念は捨てること」。

ラシク・インタビューvol.71

IT企業勤務 大道 あゆみさん

「働いている時にはできないことを、育休中にやってみる」。育休復帰後の働き方を見据え、新しい視点で育休を過ごす人が増えてきています。今回は、第一子復帰時の経験を踏まえ、第二子の育休をビジネス的側面・地域的な活動の双方向で精力的に活動している方の例をご紹介。今後は、「仕事・私生活・地域活動」3つの方向を存分に満喫していきたいと語る大道さんに、仕事のこと、育休のこと、そして夫婦のことを伺いました。

第一子の育休復帰後に部署異動を志願

子どもがいてもチャレンジできる!ことを伝えたい

LAXIC編集部:第一子の育休復帰後に部署異動を志願されたそうですね。育休復帰で働き方が変わることに加え、仕事の内容も変わり大変なことも多かったのでは?

大道さん(以下、敬称略。大道):出産前はカスタマーサービスの仕事をしていたのですが、その部署が地方拠点へ移管を進めていたこと、合わせて部下が成長してきていたこともあり、育休復帰から1年後に、マーケティングリサーチの職種に応募・異動しました。

子どもがいてもチャレンジしたいと思ったこと、チャレンジすることが後輩のその後の働き方にも繋がると考えたことが異動を決めた理由です。とはいえ、慣れるまでは大変で、最初の2〜3ヶ月は、新しい業務スキルを習得することや、子育てをしながら勉強する時間の捻出に苦労し、異動は失敗だったのでは?と思うことさえありました。

会社自体が子どもを持つ人材への配慮が風土としてあり、やりたいという意思を大切にしてくれるため、上司や同僚の協力があってこそ乗り切れました。チームメンバーとのコミュニケーションは、会社の復職ワークショップで教えてもらったことや、育休中に受けたマドレボニータのワーキングマザーサミットで得たことも支えになりました。

編集部:会社の復職ワークショップはどのようなものだったのでしょうか。

大道:育休から復職する際に全員が参加するワークショップなのですが、制度の説明に加え、先輩ママたちからのアドバイスがあったんです。そこで、先輩ママが「育休復帰する際に大切な2つのこと」を教えてくれました。

編集部:その2つ、どんなことだったのでしょうか。

大道:まず一つ目が「今までと同じように時間をかけて働くという概念は捨てること」。

「子育てという時間的制約を持つ前とは同じようには働けないので、人の助けを得て成果を出すということを、自分自身が自覚することが一番重要で一番難しい」ということです。それを前提として、チームメンバーとコミュニケーションしていくことの大切さを教えてくれたんです。

もう一つは、「制約を持っているのは子育てをしている人だけではない」ということ。

子育ては人に伝えやすい制約だけれど、介護などを含め、人に言いづらい制約を抱えている人もいる。だからこそ、声高に自分の制約を語りすぎてはいけない。ということでした。

編集部:育休復帰する上で、ものすごく大切なコアな部分を最初に教えてもらったわけですね。きっとその先輩も、色々悩み・経験をした上で見出したコツなんでしょうね。

大道:はい、会社で最初に育児をしながら仕事をしてきた方だったと思います。

編集部:大道さんは、第一子の出産後に、通勤時間が80分かかる場所に引越しをされたそうですね。その理由はなんだったのですか?

大道:義父母の家の近くに引っ越したのですが、一番の理由は子どもを愛してくれる人がより多く側にいることが、彼らの幸せに繋がると思ったからです。私も夫も、幼少期に祖父母から教わったことや、多くの時間を共に過ごしたことが心に残っていて、子どもたちもそんな環境で育てられたらと思っていました。

幸運にも選べる環境があったので、夫に相談をして引越しをしたんです。夫の通勤時間は片道90分かかるので、大きな決断でもありました。

結果的に、私と夫が仕事で忙しい時期や、第二子が生まれて生活が落ち着くまでの時期は特に、義父母と過ごすことが上の子の精神的な安定にもつながっていると思います。今では働きながら子育てをするためのチームとして欠かせない存在です。

編集部:実際の勤務時間はどのくらいですか?

大道:基本的な勤務時間は9時〜4時ですね。朝は、ご飯の準備などを含め、夫が担当します。なので、残業ができない代わりに、朝早く出て仕事をすることもあります。私の通勤時間は80分。うち、60分は電車の中なので、仕事に関する情報収集や読書をしていることが多いです。通勤時間も仕事の一部と捉えています。

第二子育休のテーマは、「思考力を高める学び」と「地域社会に貢献する活動」をすること

地域イベントの様子

編集部:第二子の育休中は、マドレボニータ・育休プチMBA・ママボノ・ワーキングママ大学などたくさんの活動をされたそうですね。育休前から、色々やろうと考えていたのでしょうか?

大道:第二子育休前に、2つテーマを持っていました。まず一つが、復帰後に組織に貢献できるように思考力を高める学びをすること。そして、もう一つが子どもを生み、育てさせていただいている地域社会に貢献することです。

編集部:育休プチMBAやママボノなど、ビジネス的側面からの活動を取り入れていたのは、第一子復帰時の経験からなのでしょうか。

大道:はい、第一子の時は復職でいきなりビジネスの中に戻っていったので、自分がスローになっているなという苦しみが3ヶ月くらい続いたのです。2人目の復帰の際はそうならないようにという気持ちもありました。

育休プチMBAは運営スタッフとしても携わったのですが、組織に貢献できるような思考力を高める学びという意味では、とても勉強になりましたね。ママボノも含め、お互いを支え合えるワーキングマザーの緩やかなコミュニティを作れたという意味でも、とても貴重だったと思います。

編集部:「地域社会に貢献する活動」としては、育休中に家族で楽しめる活動を地元でスタートしたそうですね。

大道:実は私、美大を卒業しているんですね。在学中は映像制作をしていました。卒業後はCM制作の仕事をするなど、映像に携わっていたのですが、今は違う仕事をしています。仕事も充実していますが、プライベートの領域で美術に関わることをやりたいなあという気持ちが湧いてきて。

学生時代から子どもと美術制作をすることが好きで、子ども向けの美術イベントにもスタッフとして参加していたんですよ。自分の子どもが美術制作を一緒に楽しめるようになり、親子でもの作りすることの楽しさを、地元の皆さんにも味わってもらいたい!と思ったんです。

そんな時、住んでいる地域のシェアスペースで、一緒に活動する人たちと知り合うことができ、産後3ヶ月で最初のイベントを開催しました。

大切にしているのは、主催者や参加者の家族も楽しいと思えること。大切な家族時間である土日に開催するので、我が家の夫も子どもも一緒に参加して楽しいと感じることができる内容にしています。今では夫自身も楽しんでくれていて、一緒に企画を考えることもあります。子育て以外のことを話せるという点でもとても貴重ですね。

編集部:大道さんは育休を存分に満喫されていて、やり残したことはなさそうですね。

大道:実はあと二つ、やりたいと思っていることがあるんです。マネジメントのスキルを高めたいと思い、年末からはじめているコーチングの勉強をすること、そしてもう一つ、自分の美術作品を作りたいなあと思っているんです。でも、土日に第一子の予定で出かけることも多いので、平日の2日は家でゆっくりする時間を設けています。このくらいが、赤ちゃんも体調を崩さずに活動できる良いバランスですね。

仕事・私生活・地域活動、3つとも存分に堪能していきたい

大道さんと二人の息子さん

編集部:第二子の育休復帰後は、週に2日残業ができるような仕組みを考えているとか。旦那さまも主体的に家事・育児に取り組まれていますね。

大道:週2回、子どもたちには保育園帰りに実家で過ごしてもらい、実家に夫がお迎えに行くという形を取ろうと話し合っています。

子どもができてから、「私は今後も働き続けたいと思っているし、夫ともいいパートナーでありたい」と伝え続けたんです。お互い半分半分で、協力しつつやっていこうというスタンスです。もし、夫に何かあったとしたら休んでもらって、私が支えたいとも思いますしね。思い返せば、最初は夫婦ともに子育て1年生で、子どもを持ちながら働く良いペースがすぐにできるようになるわけではないんですよね。

ただ諦めずに自分はどうありたいか、私たちはどんなパートナーでありたいかを伝えながら、一緒に考え続けることも大切だと思います。ペースを掴むまでは、どうしたら忙しい夫も楽しみながら家事・育児を主体的にできるか、ということを考えていました。

具体的には、どうしても育休をとっている私の方が知識や経験が先に増えがちになるので、一緒に子育ての本を読んだり、子育てイベントにいったりして、共通の知識を増やして、他の家庭の方法を参考にもしながら、自分たちのペースを作ってきました。

編集部:地域活動は復職しても続けていく予定ですか?

大道:はい、マイペースに続けていこうと思っています。仕事は仕事で、会社が好きですし、変化も組織で働くことも楽しいんです。また、家族を養うための収入は自分でも得ていきたいと思っています。

一方で、地域活動の方はボランティアだからこそ、より楽しいことに集中できるという側面もある。マーケティングリサーチャーとして働く自分にとって、様々な生活者視点に触れることができるという意味でも参考になることは多くあります。

また、夫にパパ友ができたり、子どもが家や学校以外の多様性の中で育つことができたりと、生活に豊かさをもたらしてくれます。だからこそ、仕事・私生活・地域活動の3つを満喫しながら、シナジー効果を生み出していきたいと思うんです。

編集部:育休を存分に満喫した大道さんが、これから育休を迎える人にアドバイスするとしたらどんなことでしょうか?

大道:育休ってビジネスキャリアではブランクですが、共働きで働くための準備期間でもあるんですよね。私も選べることなら、もう少し短い育休で復職したかった。でも、子どもの出産時期や保育園の入園時期は選ぶことが難しいので、有効に使おうと切り替えました。

職場の方や地域社会に支えられての休みなので、職場に貢献するための学びを深めたり、夫婦で分担を話し合って試したり、地域の人たちと交流したりしながら、楽しんで過ごして欲しいですね。

どのように子どもを育てるかをパートナーと考えるのにも良い時間だと思います。

5年前の上の子の育休時にはなかった、育休プチMBA、ワーキングママ大学、ママボノなど、赤ちゃん連れで学んだり、復職準備をしながら社会貢献できる環境が今はあります。

こうした活動では他業種のママたちと出会うことができるので、会社や自分の強み弱みを知り、今後のキャリアを改めて描くヒントにも出会えます。ぜひ、これからの長いライフキャリアのために、育休を活用していただけたらと思います。

第二子の育休をかなり戦略的に企画し・過ごしている大道さん。もしかしたらそれは第二子だからこそのゆとりもあるのかもしれませんが、育休を「共働きで働くための準備期間」と捉え、スムーズな復帰のための学びや夫婦の話し合いに費やすことはとても効果的だなと感じています。育休の過ごし方は人それぞれ。子どもと存分に触れ合い、仕事のことは忘れる!というのも素敵な過ごし方だと思います。ぜひ、あなたなりの過ごし方を見つけてみてください。

【大道 あゆみさん プロフィール】

映像、写真作家。家族イベントユニット「Sprouty(スプラ)」代表。多摩美術大学 映像コース卒業。

映像制作会社にてCM/TV番組/映画などの映像制作業務に従事後、現在IT企業にてマーケティング業務に従事。2児の母。 HP:crea marcha

文・インタビュー:宮﨑 晴美

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ワーママを、楽しく。LAXIC

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