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母乳育児の悩みに"理系"を取り入れたら解消!?  大人気ブロガーの素顔は...... 研究者であり二児のママ

2017年07月09日 11時09分 JST

ラシク・インタビューvol.84

「ちょっと理系な育児」著者 牧野 すみれさん

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昨年放映されたNHKスペシャル「ママたちが非常事態!? 〜最新科学で迫るニッポンの子育て〜」など、最新科学を駆使してヒトや家族が抱える問題に迫る試みが、何かと話題です。

個人的なところでも "育児"の様々な問題解決に理系的視点を持ち、自ら実践したワーママがいました。今回ご紹介する『ちょっと理系な育児』の著者、牧野すみれさんです。

きっかけは第一子の出産後、「母乳育児ってこんなにも難しいの?」と困惑したのがはじまり。

私も母乳育児で困った経験は多々ありますが、疑問に思ったことをネットで調べると書いてあることはマチマチ。人に聞いても世代や病院によっても考え方が違い、結局どれを信じて良いものやら......

同じような状況下ですみれさんはWHO(世界保健機関)の母乳育児に関するガイドラインに出会われました。100ページにもわたる英文の論文PDFを読み込み全翻訳。

その内容を自分の母乳育児に実践してみると、最も効果的な方法であると体験して分かると共に、不要な悩みや労力を減らすこともできたそう。

その経験からWHOに翻訳公開の許可を申請して2013年『ちょっと理系な育児』というブログを開設したところ、1ヶ月のアクセス数が50万PVを超える大ヒット。

この度、その中から"母乳育児編"が一冊の本にまとまりこちらも話題沸騰中。そこですみれさんに「ちょっと理系な育児」についてお話を伺いました。

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授乳や寝かしつけなど、重要なスキルは出産するまで未知の領域

そこで出会ったWHOのガイドラインは"物語"のように面白かった

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今回ご本人にはイラストで登場頂いております

編集部:育児を初めて体験した時「本質はどこにあるのか?」という疑問を抱いた、とありますが、実際にはどんなことで疑問を?

牧野すみれさん(以下、敬称略。牧野):育児に関する突っ込みどころ満載の説は山ほどあるので、語り出すと長くなりそうですが...... 出産直後に出会った大きな壁は、やっぱり母乳育児でした

『辛くても頻回授乳するのが一番』という説をはじめとして「母乳育児ってこんなにしんどいものなの?」と驚きました

編集部:私も最初の子の時、お互い軌道に乗るまでがトラブル続きで大変でした。乳頭が切れようが乳腺炎で詰まろうが、出産並み(それ以上かも)の痛みにも堪えながらも授乳した記憶があります。

すみれ:本当に大変ですよね。でも実際は、母乳育児がしんどい本当の理由は『効率よく哺乳できる姿勢がとれていない』などいろんな原因があって、それを改善すればウソみたいに快適になることも多いのです。

「そんな大切なこと、妊娠中に教えてよ!」という感じですよね。沐浴の時のガーゼの掛け方なんてどうにでもなるのに! と

編集部:母親教室で確かにありましたね。首の洗い方とかガーゼとか(笑)

すみれ:沐浴やオムツ替えなど、比較的簡単な育児スキルは何度も教えてもらう機会があるのに、授乳や寝かしつけなどの重要なスキルは、出産するまで存在すら知る機会がないという。

みんな「母乳が出さえすれば自然と授乳は上手くいくし、赤ちゃんはお腹がいっぱいになれば、勝手に寝る」と信じていているのです。

編集部:そこですみれさんはWHOの母乳育児に関するガイドラインに出会われて、全翻訳されたとありますが...... 初めての育児をしながら、そこまですみれさんを突き動かした原動力は何だったのですか?

すみれ:原動力は好奇心でしょうか。とにかく内容が面白かったのです。次々と予想外の展開を見せる物語を読んでいるような感覚だったなぁと思います。

とはいえ、最初から「これを全部翻訳するぞ!」と決めていたわけではなく、最初にガイドラインを見つけた時は、全文を読むどころか、ちょっと自分が知りたい情報だけ調べて、すぐにさよならするつもりでした。

ですが、軽くのぞいただけで、聞いたことのないような話がぞろぞろ出てくるので、気がつくと全文翻訳することに。最初から100ページ完走を目指していたら、量の多さに、途中で挫折していたかもしれません。

編集部:英語の論文が100ページと聞いただけで思考停止になってしまいますが...... これまでも語学力的に読み込める人はいたかもしれません。でもそれをほかの悩めるママたちに向けてアウトプットし、共有したことが本当に素晴らしいです。

すみれ:自分だけ読んで終わりにせずに、わざわざWHOに許可を取って翻訳公開しようと思ったのは、自分と同じようにこの価値を理解し、必要としている人がきっと日本のどこかにいるだろう、と確信できたからです。

編集部:それが50万PVと言う結果になったのですね。

すみれ:私じゃなくても、もっと適した人はたくさんいると思いますが、当事者である母親たちで、必要な情報を共有して常識を塗り替えていく、ボトムアップ方式でいくのが近道かな、と。

ヒトの成長や健康に関わる重要なテーマにもかかわらず

母乳育児に対して、正しい知識を得る機会がいない現状

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編集部:そして『ちょっと理系な育児』ブログを始められました。開設当初はどういう反応でしたか?

すみれ:最初はどちらかというと、驚きと新鮮味を持って注目されたようです。今でもそうですが、例えば育児に関してネット検索すると、ソースを示さずに、あちこちから情報をコピペして、それらしく語っているサイトが大量にヒットしますよね。

編集部:昨年、医療情報サイトでもそのような手法が横行していて大問題になりました。

すみれ:そんな中でこのブログには情報源が示されていて、しかも常識と違う切り口だった。しかもWHOという、誰もが知っているところから出ている情報です。

読者であるお母さん本人の迷いが吹っ切れただけでなく「パートナーや実母・義母など周囲への説明も自信を持ってしやすくなった」という声が多かったです。

編集部:確かに、育児中って家族の声ともすり合わせしなくてはならない。世代ごとの流行りもあって、そのギャップを埋めるのも大変でした。そこに自信を持って紹介できるソースがWHOというのは心強いです!

すみれ:育児に関する流行や迷信は果てしないですよね。しかも母乳育児で言うと、ヒトの成長や健康に影響がある重要なテーマにもかかわらず、医療系・保育系の学校などで基本のカリキュラムに組まれてすらいないのです。

だから、ヒトの健康に関わる専門職の方であっても、普通に暮らしていたら正しい情報を得る機会がないので、迷信や流行を頼りにせざるを得ないのかもしれません。

編集部:ブログの書き込みなどを見ていても、医療従事者の方々からも多数共感の声が寄せられていましたね。こういった迷信や流行に振り回されているのは日本だけなのでしょうか?

すみれ:もちろん日本以外の国々にも、様々な迷信や流行はあって、時代と共に移り変わってるようです。新しい知識が浸透するスピードは国家機関のフットワークの軽さも重要で、必要と判断したらパパッと新しい制度やガイドラインを作る国もあります

でも、日本の母乳育児に関しては、30-40年くらい前に世界的に流行した迷信が、いまだに幅をきかせているのが現状です。

編集部:私にとってブログの内容は少し難しい時もありましたが、今回の書籍化によってイラストや解説が加えられて、よりわかりやすくなりました。それに「添い乳」の仕方なんて教えてくれている本、見たことありません。裏表紙の「努力、忍耐よサラバ!」もいいですね(笑)

すみれ:そう言っていただけると嬉しいです。

個人への制約がない方が、より会社に貢献できる!

労働力不足時代へ向けて、新しい働き方とは

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編集部:ご自身も企業で働きながら子育てもして、それに執筆活動もあります。とてもお忙しいと思うのですが、ワーママとして、働き方について思うところはありますか?

すみれ:今、女性も外で働くよう促す風潮がありますが、なぜ女性が外で働きにくいかというと、やはり長時間労働を含めた『社員への制約の多さ』が悪因だと思っています。労働環境にフレキシビリティがないと、出産や介護や病気など、よくあるちょっとしたプライベートの変化でも、仕事が大きなネックになるわけで。

そこでなぜ女性ばかり仕事を辞めるのかというテーマも重要ですが、今は横に置くとして、日本企業は「労働時間は長い方が安心だ」という雰囲気が強くないですか?

編集部:本当に多いです。プレミアムフライデーも全く浸透しない(苦笑)

すみれ:私は、個人のパフォーマンスを落とす一番の悪因は《余裕のなさ》だと思っています。余裕とは、時間・体力・気力・お金など、様々な要素があります。

私の職場では、勤務時間内に、ルーティンワークと別に、自主的に趣味的な試みをする社員が3割くらいいまして。その中から業務効率の改善を含めた、大小さまざまな成果が出ています。社員一人当たりの生産性を考えると、5〜6年前と比べても10倍くらいになっています。育休復帰するたびに、本当に笑ってしまうほど。

ITを含めた技術革新はめざましく、「一つ新しいシステムを導入することで得られる成果」に比べると「個人が働く時間を延ばすことで増える成果」なんて、本当に微々たるものだと感じます。

24時間働いたとしても、個人の成果を10倍にすることは不可能です。一方で、社員に余裕があれば組織全体の成果を10倍にしてしまうようなアイデアが生まれることがある現象は、面白いなと思います。

今は、昔ながらのマッチョなやり方を変えられない組織と、「今までの常識や苦労はなんだったんだろう!」と笑っちゃうようなことが次々起きている組織と、二極化しているのでしょうね。

個人的には、仕事の効率を考えると「フルタイム定時帰り」ですら長すぎる!と感じます

編集部:今、副業解禁の波が来ていますが、すみれさんもこういった執筆活動などの副業が可能な環境は、本業にも良い影響を与えたりしますか?

すみれ:やっぱり、副業だけでなく、社員への制約は少ないほど、より長く働きやすくなりますよね

これから労働人口が減っていく中で、副業はもちろん、転職・休職・独立・中途入社・経歴にブランクがある人の正社員雇用・一度退職して再び同じ会社に入社する出戻りなど、フレキシブルに歓迎していかないと、優秀な人材は集まらないどころか、実力や、やる気のある良い人材も流出していくばかりじゃないかなと思います。

編集部:最後に、今後もっと深く掘り下げてみたい分野はありますか?

すみれ:興味があるのは、子どものしつけや教育、母親の心理学などです。

「子どものしつけはこうすべき。なぜならそうすべきだから」みたいな、目的に対する手段が合理的じゃなかったり、非効率的に感じたりすることが山ほどあるからです。

今回の書籍もそうですが、母親に必死に頑張らせるのではなく、「最小の労力で自信を持って前に進むための基礎知識」みたいなのをまとめたいような...... でも大変そうだからやめておいた方がいいような...... そんな気持ちです。

編集部:自信を持って、というのがポイントですね。お忙しい中、今日はありがとうございました!

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手探りでスタートした母乳育児。半信半疑で進めるだけでなく、きちんとエビデンスを求めてWHOのガイドラインを読み進められ(しかも物語のように!)、実践して来られたすみれさん。働き方のところでも言及されていましたが、常に『問題の本質』を考え、捉えていらっしゃるのだなぁと。

機会があればぜひ、母親の心理学も紐解いて欲しいです。そして「母乳育児の決定版」とも言える、今回の書籍。仕事と母乳育児を両立させる具体的なの進め方などの解説もあり、働くママとしての目線があるのも嬉しい限りです。

妊娠中の方はもちろん、これから職場復帰を予定されている育休ママにもオススメします!

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【牧野 すみれさん プロフィール】

おてんばな第一子と、おもちみたいな第二子の二児の母。東京大学工学系研究科化学生命工学専攻を卒業し、現在は民間企業にてがんなどの疾患をターゲットにした研究に従事。おとぎ話・アート・音楽・宇宙物理学など、自分の想像力を超えた世界に触れるとワクワクして脳から何か出る。いつも理論的・合理的でありたいと思っているものの、長女には「コドモみたい」とよく言われる。ブログ『ちょっと理系な育児(rikei-ikuji.com)』を2013年より運営。5月に『ちょっと理系な育児 母乳育児編』(発行/京阪神エルマガジン社)を出版したばかり。

HP:『ちょっと理系な育児 母乳育児篇 』(単行本)

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文・インタビュー:飯田 りえ

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