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イライラピリピリ..."不機嫌妻" はもうやめたい! 三砂ちづる先生の駆け込み相談室

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ラシク・インタビューvol.80
津田塾大学 学芸学部 国際関係学科 教授 三砂 ちづるさん

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年始に「あえて『妻』という存在について考えてみる」という記事を書き、多くの方に共感していただけました。その記事を書くにあたって、忙しく余裕のない自分を省みるきっかけをくれたのが、津田塾大学教授の三砂ちづる先生の著書『不機嫌な夫婦』(朝日新書)でした。

'04年に出版された『オニババ化した女たち』は覚えている方も多いと思いますが(賛否両論、数々の論争を巻き起こしました)、その "オニババのその後" として続編に位置付けられている本でした。

耳に痛い話も本当にたくさんあるのですが、母子保健研究者として長い目で人類を見ている先生だからこその、心揺さぶられるポイントがたくさん。そして世の中の風潮や自分の至らなさをバッサバッサと切ってくれる爽快感。最後にはあたたかくやさしい言葉で、女性としてのあり方を示してくれたのですが...。

またいつもの調子で忙しさにかまける自分がいる。そこで自身も津田塾出身というラシク編集長宮﨑と一緒に三砂先生に人生相談。最近、不機嫌な妻なんですけど、どうしたらいいですか?

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"今"の自分がどういう状態であるのかが大切 身体的に精神的に"良い状態"でないなら自分を変えるべき


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郷路拓也撮影

三砂ちづる先生(以下敬称略):仕事もして子育てもして、みんなえらいと思いますよ。夫もいて子どももいて、いい人生じゃないですか。

編集部:そうなのですが、外で働いて子育ても家事も、となると毎日バタンキューで余裕がなく、夫に対してもなかなか優しくなれない...。まさに不機嫌な夫婦状態だな、と思うことがあります。

三砂:仕事だとか家事だと育児だとか、何をやっているかではなく「自分が今どういう状態であるのか」というのが大事です。仕事も会社も子育ても、回っているけど自分が精神的に、肉体的に良い状態でないのなら、自分が変わるしかない。

子どもに「早くしなさい」ばかり言っているとか、夫と夜一緒にいる時間がないとか、忙しくて朝ごはんがまともに作れないとか...、それぞれ自分の中で譲れないラインがあると思います。それに気づいて、ラインを踏み越えないよう、自分の生活を立てることに意識的にならないといけないと思います。

この前白梅学園学長の汐見稔幸先生が日本は政策的に間違っているよね...という話をなさっていました。EUでは20年前に男性にも短時間労働を導入し、イギリスでは保育所の内容を充実させたそうですが、日本はどちらもできていないのに、女性を労働力として使うという方向だけ推進している。

だから、お母さんがカツカツでイライラして、子どもは楽しく暮らせないという状況が出てきているのではないでしょうか。保育現場の人は感じていることですが、非常に子どもに負担がかかっている状況ですね。

編集部:女性も男性もいっぱいいっぱいで、子どもたちの変化を見る力もなく、ないがしろにしがちだな、と子どもが小学校に通い出して特に感じています。

三砂:仕事は忙しいかもしれないけど、子どもが小さい時期なんて、あっという間に終わってしまうのよ。とにかく、自分の状態をどうすれば一番よくできるのかに対してあまり妥協しないで欲しいなと思います。

罪悪感・取り越し苦労・自己憐憫、これが魔の正体!自分に何ができて何ができないかを判断し、信頼して


編集部:子どもが生まれてから、これまで以上に先々のことばかりを気にしてしまいます。今、幼い子どもを預けてでも続けておかなければ、この先仕事が続けられないとか、子どもに対しても今を犠牲にして受験勉強しておかなければ...とか。取り越し苦労してしまいます

三砂:判断がうまくできていないのでしょうね。アメリカの神学者であるニーバーの祈り、というのがありますよね。「神よ、変えられることのできないことはそのまま受け入れられる平静さを、変えることのできることはそれを変える勇気を。

そしてこの二つの違いを見定める賢さをわたしにお与えください」と。今の自分に何が変えられて、何が変えられないのかを冷静に考えて。

あと「取り越し苦労」「罪悪感」「自己憐憫」。これが魔の正体だと思いますよ。

編集部:おっしゃる通りです。

三砂:取り越し苦労だと思うならやめないと。この3つは夫や子どもか会社とかではなく、自分が闘わなければならないことでしょう。受験のこと自体は悪いとは思っていません。ハラの座った教育ママを何人も見て来ましたけど、そういう人たちって本当に子どものことがよく見えています。

早熟で、そういうことができる子はやれば良い。でも自分の子どもが見えていないのに、周りが行っているからといって闇雲に塾に入れたり、というので良いのでしょうか。 向いていないのに無理やりやらせると子どもは辛いですよね。

常に自分の斜め上あたりで自分自身を観察する目を持つこと。「私これで良いのだろうか」「楽しく暮らせているだろうか」その目線で考えて「私、今まずいな」と思ったらやめたほうがいい。

それは人それぞれ違うけれど、今の自分の能力を過大評価しない。先ほども言いましたが自分の譲れないラインみたいなのを持ち、そこだけはキープできるようにしたら良いのではないですか?

ストーリーを作るのはいつも自分 "今"の自分がよくないと、過去のことも悪くなる


編集部:先生は自身の子育て期を海外で過ごされたとか。その時お仕事は?

三砂:研究職でしたから子どもを産んだ時は、仕事をゼロにはしない、という程度で細々と続けてはいました。1人はブラジルで生まれもう一人はイギリスで生まれました。子育てをしたのはブラジルが長かったですね。

ブラジル時代は気楽で楽しかった。そういうと「あなたは恵まれていた」って思う人がいるかもしれませんし、実際恵まれていましたが、逆に自分の考えようによっては、ひどいストーリーにすることもできるのです。

日本人が誰もいない異国で子どもを育てて、最初は言葉も通じないし、夫はわかってくれないところもあるし、近しい家族もいない、あんな苦労もこんな苦労も...って。

いつでもストーリーを作るのは自分なのです。そして、そのストーリー自体は書き換えられるものです。自分の"今"の状態が良ければ「あの時いろいろあったけど、あれがあったからこそ今の自分があるのだ」と思える。

つまり今が良いと、過去は書き換えられていく。でも今の自分が良くないと、過去のことも悪くなるのです。あのことがあったから今の自分がよくない。夫が、母が、子どもが...って人のせいにする。

私自身は、ラッキーだったと思いますけど、自分がラッキーだったって思ってきた結果に過ぎないのかもしれない。

家庭に "業績主義" は持ち込まない 公的な場の考え方を持ち込むと生活は楽しくなくなる


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鈴木俊介撮影

編集部:学生時代、津田塾で学んでいた頃は女性学って嫌だったんです。それは私が当時、女性だからといって不利だったことなんてないと思っていたからなのですが。出産してから初めて、仕事の側面で男性と同じように進んでいくのは難しいなと感じたところがあります。でも、女性と男性という異なる性でありながら、日々、平等感にかられすぎているな、という気もします

三砂:公的な領域ではもちろん男女平等は重要な話ですが、私的な部分は同じ論理ではうまくいかないところもあるでしょう。どれだけやったから、それなりに評価して欲しいとか、これだけやったから手柄になる、という評価主義や業績主義では家庭の中は動かないのです。「私これだけやったから、あなたこれだけやって」では上手くいきません。まずその発想を変えてもらいたい。家で子どもにあたるとか、夫に対して優しくできないっていうのは「私だって大変なのよ」って開き直っているだけではないのでしょうか。家の仕事は誰かが引き受けるしかなくて、絶対全員平等に配分、ということになりえません。

編集部:また女性は子どもを生む前は、男性に対して「やってあげていた」りするのに、子どもができた瞬間に「サポートして欲しい」「なぜ協力してくれないのか?」という風にマインドがコロッと変わってしまうところもあると思います。

三砂:子どもに愛情が行くのはわかります。妻の愛情の対象が増え、夫がさみしい、というのならわかる。それを役割分担みたいに考えすぎると、本当につまらない。

特に子育てに関しては、人類がここまで生き残って来たのは乳児を母親がちゃんと育てて来たから。女の人は本当は分かっているのだけど、これだけ「家事の分担」「家事の平等」って言葉が出ているので踊らされているのでは?

家でやっていることをリストにして数えたらダメですよ、そういうことやっていると毎日楽しくなくなっちゃう。

女の人にもっと本当の意味で強くなってほしい。ハラを据えて、自分がいないとこの家は回らないのだから、誰の仕事でもないものは自分で引き受ける。手伝ってくれる人がいたらラッキーと思うくらいでないと、何もかも嫌になりませんか?

人生なんて自分の想像も及ばないことばかり だからこそ今目の前にあることを丁寧に、大切に

編集部:それにしても先生は何故女子大へ?

三砂:私の前に女子大の"扉"が開いたのです(笑) その前は厚生労働省の研究所にいたのですが、同僚に助産婦さんがいて。その方がある日「あなたはもっと若い女性のいるところに行くべきです」とここの応募要項を持って来たのです。

国際協力の現場で津田塾卒生の素晴らしい方々に出会っていたので良い印象は持っていました。それに、私を見て書いたかのような応募条件だったのでこれは、私のためのポストだなあ、なんてぼんやり思ったくらいでした。

編集部:すごい、ドンピシャのポジションだったわけですね。

三砂:でもね、人生ってそういうものだと思うのですよ。こじ開けるのでなくて、向こうがふっと扉を開く、そして開いたところに行けばいい

先の人生など自分の想像も及ばない。だから、そういうことで思い悩んでも仕方ない。今、目の前にあることを大切にして、丁寧にやっていくことしか先につながることはない

だから、目の前にいる夫のことを大切にできないということはとても深刻な問題で、私になんか聞いていないで自分で真剣に考えるべきですよ。

あと、やっぱり何か自分より大きな存在のものがあって、自分は生かされている、という考え方ができるかどうかってことですよね。

「お天道様がみているから」って言うぐらいなので、そういう考え方を昔の日本人はしていたはず。人間が続いて来たことを信じるということと同様に、大きな流れの中で自分は生かされていることに気がつく、ということも大切なのではないですか

斜め上からみることと繋がるのですけど、私の悩みなんて大したことじゃないってなりますよ。大変ですけど、そういう目を忘れないことで自分も楽になるのではないでしょうか。

編集部:今日は本当にありがとうございました!

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「自分の "今" 状態が良くないのであれば考え直すべき」

自分に足りなかったのは、今の自分を客観的に見る力。情報や周囲に流され、将来を気にするあまり...自分や大切な家族の"今"の状態を見えていなかったと反省。耳の痛いお話もありましたが、こんな風に真っ向から叱られることも最近なかったので、余計に心に染み入りました。取り越し苦労が魔の正体、本当ですね...(苦笑)

三砂先生は疫学を研究しながら国際協力活動に携わり、ご自身も2人のお子さんを幼少期に海外で産み育てた経験や、「生の原基」としての女性のあり様を研究されてきた上で、今の女性たちへ警鐘を鳴らしていらっしゃいます。

自分が良い状態を保てるよう、そして今という時間を大切に。心が弱った時にまた今日のお話を思い出したいと思います。

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【三砂 ちづるさん プロフィール】
母性保健を専門とする疫学者、作家。津田塾大学教授。山口県生まれ、兵庫県西宮市で育つ。約15年間イギリス、ブラジルで疫学研究を続けながら国際協力活動に携わる。帰国後、国立公衆衛生院(現・国立保健医療科学院)疫学部に勤務。2004年4月、津田塾大学国際関係学科に教授として就任。近著に『死にゆく人のかたわらで ガンの夫を家で看取った二年二ヶ月』(幻冬社)、『女たちが、何か、おかしい おせっかい宣言』(ミシマ社)など多数。 HP:

文・インタビュー:インタビュー(宮﨑晴美)・文(飯田りえ)

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