時代やライフスタイルは変わっても、変わらない私たちの妊孕力。婦人科のかかりつけ医をもとう!

メディアでは芸能人の高齢での出産報告など耳にしますが、本来女性の妊娠適齢年齢は 18-30歳であると言われています。

「妊孕力(にんようりょく)」という言葉をご存じでしょうか?

これは、女性の生殖能力(妊娠する力)と考えてもらってよいと思います。メディアでは芸能人の高齢での出産報告など耳にしますが、本来女性の妊娠適齢年齢は 18-30歳であると言われています。

私は現在不妊治療専門のクリニックに所属しておりますが、40代の患者様も多く、病院に来たら必ず妊娠できると思っている方もいらっしゃいます。確かに生殖医療技術はここ数十年で劇的な発展を遂げている分野ですが、日本産科婦人科学会が毎年発表する生殖補助医療(ART)※ の最新データ(2012)によると、30歳での総治療あたりの生産率は21.8%に対し、40歳では 8.1%と半分以下になります。

また、流産率に関しては、30歳が15.4%のところ、40歳では35.4%と倍以上になります(図1) 。体外受精・顕微授精といわれる高度生殖医療を利用して妊娠できても、年齢を経るとその3分の1が流産という結果なのです。

◆ライフスタイルの変化

現代の日本は医療技術も進歩し、世界一の長寿大国となりました。昔とライフスタイルは変わって大学に行く女子が増えたり、女性の社会進出が当たり前となり、結婚の年齢やスタイルも多様化しています。しかし、決して卵子の寿命が延びているわけではなく、生物としての妊孕力は昔と変わらないのです。

現場では、仕事のために晩婚になった、あるいは 20代で結婚したのでなんとなくできると思っていた、夫婦で計画立てて避妊をし、いざ作ろうと思ったらできなかったという声を聞くことが多いです。これらが不妊という状況を作り、少子化を加速させているのではないでしょうか。

晩婚化が当たり前になり、独身や子供のいない夫婦に囲まれ、まだまだ自分の問題ではないと安心してはいないでしょうか。しかしそういった実態は、誰からも教わっていないことかもしれません。

私たちは、性教育といえば、避妊や性感染症の予防程度の知識しか教わっていないような気がしませんか?「不妊」「妊孕力」という言葉は聞いたことないのではないでしょうか。

◆「不妊」の原因要素

最近ではよく聞くようになった「卵子の老化」という言葉が表すように、妊孕性に関わる最大要因が年齢であることはもちろんですが、妊娠までに子宮内膜症子宮筋腫となり妊娠希望の時に妊娠しにくい、あるいは、感染対策をせず性交を持っていたために感染症による卵管炎などに伴う不妊、望まない妊娠で堕胎手術を繰り返し適切な処置を受けなかった場合も不妊の原因となる場合があります。

◆ライフプランの選択

いずれにしても、私たちが教育された若年齢での望まない妊娠を避けるための避妊という考え方は重要ですが、卵子の質は年齢で確実に低下することを頭に入れ、普段から自分の身体について自己管理を忘れずにライフプランを立てることが重要です。

今、いちばん大切なのは、大学や会社、転職を選ぶ前に、年齢が進むと確実に妊孕力は落ちるのだと知ってから人生プランの選択をすること。妊娠前に自分の体について知って日々自己管理をし、妊娠希望の際には同時に妊娠の準備ができていることです。

◆妊娠の準備のために

まずは気軽に婦人科の扉をたたき、自分の身体を見つめなおしてはいかがでしょうか。なかなかお子様ができない方、もう高齢だからとあきらめているとお考えであっても、ぜひ一度受診してみてください。その原因がわかったらすぐに治療や対策を立てることが可能な場合もあります。

施設によっては、相談室やカウンセリングも併設しており、人生の選択として子供のいない人生を選ぶとしても、今の状態を知ることで、これから健康に過ごしていくにあたって何かできることが見つかるかもしれません。

私たちに、皆様の未来の幸せのお手伝いをさせて頂ければ幸いです。

脚注:

※生殖補助医療(ART)とは、卵巣から卵子を採取して体外で精子と受精させ、受精した受精卵を移植する「体外受精」といわれる方法をはじめとする、近年進歩した新たな不妊治療法(参考:日本生殖医学会HPより)

Lealta(レアルタ)/ライター:荒木 依理(不妊症看護認定看護師・生殖医療コーディネーター)

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