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卵子凍結を考えている方に知っておいてもらいたいこと 前半①~社会適応の卵子凍結に対する考え方~

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先日、国内初「社会適応の卵子凍結による出産」について新聞報道されたのはご存知でしょうか? 卵子凍結とは、不妊治療施設で体外受精の際に一般的に行われている受精卵凍結とは異なり、パートナーがまだおらず精子と受精させて受精卵として凍結できない場合に、卵子のみを凍結する方法です。卵子凍結で出産した例は以前よりありましたが、今までは「医学適応」が対象でした。

医学適応:

若年性の悪性腫瘍の場合など、抗がん剤使用や放射線療法などの治療によって、将来生殖機能が損なわれることを懸念しての救済措置

社会適応:

病気ではなく、健康な女性が仕事を優先にしたいなどの事情で晩婚・晩産=加齢による卵子の老化を懸念しての将来のバックアップ目的

◆社会適応の未受精卵凍結に対する考え方


日本産科婦人科学会⇒「推奨しない」

日本産科婦人科学会(以下、日産婦)は、2014年4月に、医学的適応による卵子凍結については肯定的な見解を示しましたが、社会的適応については、卵子のみの凍結は技術がまだ確立しておらず、出産の確率も低く、また、社会適応での卵子凍結が浸透すると妊娠の機会を先送りし、高齢出産のリスクが増える可能性などから、2015年6月に推奨しないとしています

日本生殖医学会⇒「40歳以上は推奨しない」

日本生殖医学会では、2013年8月、社会適応での未受精卵凍結のガイドラインを発表しました。

内容は、40歳以上での凍結や45歳以上での凍結卵子の使用は推奨しないとしながらも、「加齢等の要因により性腺機能の低下をきたす可能性を懸念する場合には、未受精卵子あるいは卵巣組織(以下「未受精卵子等」という)を凍結保存することができる。」としています。

どちらも最近報告された方針ですが、医学適応で行う場合は日産婦への報告が必要なのに対し、社会適応の場合は必要なく、ガイドラインが出る前からいくつかの施設で行われていた可能性があります。

そんな中、2015年2月に、千葉県の浦安市が順天堂大学と協力し、20~34歳の女性を対象に、社会適応の卵子凍結の費用に対し、一部負担する旨発表しました。

◆卵子凍結が推奨されない理由


施設や医療者によって色々な考え方がありますが、私が気になる点は、日産婦は推奨しないとはっきり提示しており、「凍結することができる」としている生殖医学会のガイドラインに関しても、HP上には「また、母児の合併症やさまざまなリスクを考慮すると、妊娠・分娩には適切な年齢が存在するのであり、本ガイドラインは、未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存とそれによる妊娠・分娩時期の先送りを推奨するものでもない。」とされているのに関わらず、推奨するような報道や行政の動きが垣間見えることです。

【卵子凍結をお考えの方に知っておいてもらいたいこと】

  • 現段階では凍結卵子を使用して出産できるのは数%であること
  • 卵子凍結を行うその過程で、健康への被害が出る可能性があること
  • 卵子凍結をした場合は体外受精・顕微授精になるためパートナーの理解が必要であること
  • 高齢出産のリスクが高まるというが、どのようなリスクか理解しておくこと


ここまでお読み頂いて、皆様はどうお考えでしょうか?「時代やライフスタイルは変わっても、変わらない私たちの妊孕力。婦人科のかかりつけ医をもとう!」でもお伝えしていますが、妊娠適齢期は18-30歳であり、生殖補助医療※による30歳の生産率は、21.8%です。凍結卵子では、確実にこれより下がります。

今回、私が一番皆様にお伝えしたいのは、上記のポイントを知っておいてもらいたいこと、そして、凍結した卵子があるから大丈夫とは決して考えないで頂きたい、という点です。「手持ちカードが増えた」「最後の切り札」ではなく、「お守り代わり」と思って頂ければよいかも知れません。

もし将来子供が欲しいとお考えの方は、やはり適齢期に出産できるようなライフプランが必要です。リスクもあり出産率の低い卵子凍結技術で妊娠を先延ばしにしようというプランは、なかなか厳しいのではないでしょうか。行政の政策としても、卵子凍結への補助金よりも、保育園をつくることや、育休をとりやすい環境づくりに力を入れてもらいたいと思っています。

卵子凍結の方法、過程については、次回(後半②)でお話しさせて頂きます。

脚注:
※生殖補助医療(ART)とは、卵巣から卵子を採取して体外で精子と受精させ、受精した受精卵を移植する「体外受精」といわれる方法をはじめとする、近年進歩した新たな不妊治療法(参考:日本生殖医学会HPより)

Lealtaライター:荒木 依理(不妊症看護認定看護師・生殖医療コーディネーター)

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