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朝鮮総連結成61年、彼らは在日同胞のために何をしたか

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==北朝鮮政権への長い長い片思い

在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)は、1955年5月25日に結成し、今年で61年となる。「在日同胞の権益と自由の擁護」が設立目的であると明示しているこの団体が、過去60年間、果たして在日同胞のために何をしてきたかお聞きしたい。振り返ってみれば、朝鮮総連は本当に在日同胞のための団体なのかと疑問をいだいてしまう。総連は、一貫して北朝鮮政権の肝心なパートナーであり、バックグラウンドだったからだ。

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【在日本朝鮮人総聯合会中央本部ビル】

朝鮮総連は、一時期50万人以上の会員を持つほど日本社会で少なからぬ影響力を及ぼしていた。1980年代までは金日成と金正日の財布を分厚くする頼もしい外貨窓口であり、日本と西洋諸国の最先端技術を北朝鮮に伝える中枢基地でもあった。金日成や金正日が自らの誕生日を記念して朝鮮総連に教育援助費と奨学金を送ることもあったが、実は総連組織を通じて北朝鮮に入る裏金がはるかに多いことは、北朝鮮住民も朝鮮総連も知っていた。結局、朝鮮総連からもらったお金で恩着せがましくふるまうにすぎなかったのだ。

==「主席ファンド」の財源:朝鮮総連と「チェポ」

北朝鮮に住んでいた時、「在日朝鮮人帰国事業」などで日本から帰国した人が周りにかなりいた。彼らを称する言葉として、最初は「在日同胞」を略した「在胞」(朝鮮語発音では「ジェポ」)という言葉が使われたが、彼らを見下す意味でわざと強く発音し「チェポ」という言葉が広く使われるようになった。「チェポ」の運命は、日本にいる家族次第だった。家族の誰かが日本で総連活動をし、北朝鮮に上納するお金が多いほど、より良い待遇を受けて出世もでき、平壌に住むこともできた。

余裕のある総連組織員は、北朝鮮に送られた家族のことを考えて精一杯送金をした。そのため、北朝鮮住民たちは日本から来た同胞を、政治的には「日本の資本主義社会から来た出身成分の悪い人」と無視しながらも、仕送りで豊かな生活をする同胞もいたので経済的には憧れの対象にしていた。私の知り合いのある「チェポ」女性は、当時なら公開処刑になる規模の詐欺事件で逮捕されたが、祖父と夫の祖母が朝鮮総連幹部だという理由ですぐに釈放された。

一方、上納額が少ない「チェポ」は、賤民扱いをされたり、北朝鮮の生活に慣れない場合は政治犯収容所に連れていかれたりすることも多々あった。北朝鮮に送られた家族が思った以上に立ち後れた環境で苦労して、上納金不足で当局から差別を受けることを見過ごすわけにはいかないので、日本に残った家族は北朝鮮に対する忠誠度にかかわらずお金を送るしかなかっただろう。

家族を「人質」に捕られた在日同胞らは、北朝鮮の重要な資金源であったし、朝鮮総連からの公式な送金も相当額が金日成と金正日個人の金庫に入った。北朝鮮住民たちは、そのお金を「主席ファンド」と呼び、ほとんどが金父子の贅沢と核開発に費やされるだろうと思っていた。

==日本科学技術を移植する中核:朝鮮総連と人民大学習堂

「チェポ」のもう一つの用途は、科学技術分野だった。3月20日の共同通信(韓国語版)の報道によれば、北朝鮮当局が在日朝鮮人社会を通じて日本の先端技術を獲得するよう指示を出したことが明らかになった(関連記事)。朝鮮総連議長の次男が家宅捜索を受けた時、「先端技術に関する専門知識のある在日朝鮮人技術者と接触すること」と指令が書かれた文書(関連記事)が見つかったのだ。

その文書の内容を見ると、ターゲットにする日本の企業を名指しで指定するほか、その企業を退職した在日朝鮮技術者と接触して調査するにあたって「在日本朝鮮人科学技術協会(科協)」を活用すると、方法まで詳しく触れている。最近、この「科協」所属の核技術科学者が日本の国立大学である京都大学・原子炉実験所の准教授という事実が明らかになり話題となった。

朝鮮総連と「チェポ」が連携して日本の先端技術を北朝鮮に移植することに大きく寄与したことは、私の経験と合せて考えても十分可能性があり、その歴史もかなり長いとみられる。私は、1991年に平壌の「人民大学習堂」で3ヶ月間教育を受けたことがある。そこで見せてくれた国際科学技術の最新動向に関する資料は、ほとんどが日本に関するものか日本から送られてきた海外資料だった。

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【平壌人民大学習堂】

人民大学習堂は、1982年に開館する当時、10万部以上の科学技術関連の資料を寄贈してもらった。コンピューターや半導体装備、動画資料も入ってきたが、大半が日本のもので、当時「チェポ」が司書や教授または職員として大挙採用された。人民大学習堂内の外国語講習所と科学技術雑誌の翻訳機関も、日本から来た「チェポ」が中心になって運営された。日本の進んだ科学技術を追いかけることが北朝鮮当局の目標だったため、大学を卒業して専門知識を保有し、日本語も堪能な在日同胞はとてもすばらしい財源だった。

北朝鮮が本格的なミサイル開発に着手したのは1980年代であるが、当時北朝鮮の理工学系列の大学で、第1外国語は英語、第2外国語は従来のロシア語から日本語に変更して公式に義務づけるくらいだった。

当局がこのほど日本の科学技術を学ぶことを奨励することもあって、北朝鮮では「メイド・イン・ジャパン」のブームも巻き起こっていた。北朝鮮住民にとっては、ビデオや雑誌を通じて接する日本の飛躍的な科学技術の発展は、羨望の対象だった。周りの人々が日本の商品やファッション、文化を「本産製」(「本」が「日本」を意味する)と呼んで、羨ましがって真似をしていたことが記憶に残っている。

たとえば、「SEIKO」の時計をはじめとして、日本製の「アディダス」ジャージや化粧品、シャンプー、タバコ、洋服などは北朝鮮住民の間で身分と財力を象徴する品物となっていた。

==今回もやはり片思いで終わった第7回党大会?

振り返ってみれば、朝鮮総連の役割は、「北朝鮮の独裁政権へ資金提供」「日本技術の持ち出しによる北朝鮮経済への寄与」そして「北朝鮮がアプローチできない西洋諸国への橋渡し」とまとめられる。当初の設立目的だった「在日同胞の権益保護」は縁遠く、事実上、北朝鮮政権の維持のための忠実な道具になってきた。

それでは、そんな朝鮮総連に対して北朝鮮は何をしてあげたか気になる。必要な資金や労働力は「分配」したが、果たしてその成果は「分配」したか。

5月はじめに開かれた第7回党大会の際に、北朝鮮当局は「70日戦闘」と叫んで北朝鮮住民だけではなく海外の同胞にいわば「忠誠資金」を求めた。党大会に合せて朝鮮総連は、主要幹部の在入国禁止措置などの制約にもかかわらずに代表団を北朝鮮に送った。北朝鮮関係者が海外から北朝鮮に入るときに巨額の現金を持ち込むことは暗黙の事実なので、今回の総連代表団も同じであったと推測している。このように党大会を輝かすために物心両面から支援したところ、朝鮮総連と在日同胞が北朝鮮から得たものは何なのか。

自由アジア放送(RFA)によれば、北朝鮮当局は党大会に出席した高位幹部らにはプレゼントとして最高レベルの最新液晶テレビや冷蔵庫、化粧品など豪華贅沢品を支給したが、「70日戦闘」で実際に苦労をした一般住民には歯ブラシと歯磨き粉、お酒一本だけで、しかも有償で支給したそうだ。朝鮮総連もこの一般住民とあまり変わりのない扱いをされたのではないか。成果は全て金正恩と特権階層が独占するパーティーのひきたて役にすぎなかったと、私は断言できる。

==弊害は日本社会にまで

朝鮮総連の北朝鮮への片思いは、組織の主体であるべき在日同胞に空虚感を与えるだけでなく、日本社会にも持続的な情報リークのような被害をもたらす。特に、リークされた核技術は、北の核兵器開発に転用される可能性があるとみられるため、日本や国際社会の不安が高まっている。さらに、朝鮮総連は組織員に対して反日教育を繰り返すことで日本国民との反目をあおり、北朝鮮の核保有をあらわに支持する発言をして社会の雰囲気を損なう。

世界のいかなる海外同胞コミュニティーを見ても、このような組織はない。それぞれの国で自分たちの権利を守るため同胞同士で団結し、故郷の文化を継承して覚え、心理的に頼り合うための活動が中心になる。朝鮮総連のように一方的に本国から指令を受けて一方的に忠誠する組織は、純粋な同胞団体と言えない。

結成61年を迎え、朝鮮総連が自ら標榜する設立目的を顧みることを切に願う。もちろん、既に「結成61周年を迎え、祖国の北朝鮮に対するさらなる忠誠を誓う」という声が聞こえるような気がして、期待はとても低いが。

イ・エラン 韓国・自由統一文化院 院長、1997年脱北

※このブログ記事は、イ・エランさんが韓国語で作成した原稿を日本語に訳したものです。日本語表現の誤りや不自然な表現などがある可能性があります。ご了承ください。読者の皆様のコメントはいつでも歓迎です※